「うちの犬は人間で言えば○○歳」を検証する
ご存知のように犬の年齢は、人間よりもずっと早いスピードで進んで行きます。そのため、イメージや理解をし易くするために「人間に換算すると○○歳くらいに当たる」という説明がよく見られます。
この犬の年齢を人間に換算する論拠や計算方法については、過去に多くの研究が行われ発表されていますが、イギリス屈指の犬保護団体ドッグズトラストのリサーチマネージャーでもあるノッティンガム大学の動物学者が、犬の年齢についての過去の様々な研究を検証して発表しました。
身体の年齢、認知や行動の年齢
検証の結果、犬の年齢に関する過去の研究のほとんどは、○歳〜○歳は成年期、老年期といった分類を身体の健康や運動能力に基づいて行なっていました。
身体の状態に基づく分類は犬種や犬のサイズによってかなり大きな幅があります。研究者は全ての犬に一貫するものとして、犬の認知や行動をベースにした分類が必要ではないかと考え、犬の行動における発達と老化の兆候に関する研究出版物を検証しました。
複数の研究を総合して検証した結果、行動や認知の発達の面では1歳の犬はまだ幼さの残る思春期に当たり、身体面での年齢と同じく人間で言えば15歳程度になります。2歳で思春期は終わり完全に大人になったと言えます。7歳でシニア期、12歳で高齢期に分類できると結論付けました。
研究者は犬の認知と行動面での年齢を6つに分類することを提案しています。
子犬期 0〜6ヶ月
思春期 6〜12ヶ月
若年成犬期 12〜24ヶ月
成犬期 2〜6歳
シニア期 7〜11歳
高齢期 12歳以上
シニア以降の研究目的などで、さらに詳細な分類が必要な場合は7〜9歳をシニア前期、10〜11歳をシニア後期、12〜14歳を高齢期、15歳以上を超高齢期と見なすことができるとしています。
平均寿命の短い犬種ではどう考える?
一般に大型犬は小型犬に比べて平均寿命が短いことが知られています。グレートデーンやマスティフなどの超大型犬種ではその傾向はさらに強く、上記の高齢期に達する犬はほとんどいません。
心臓や関節などの健康年齢を把握するためには、従来の「超大型犬種は5歳でシニアと見なす」という方法も役に立ちます。しかし、例えば7歳で死亡したグレートデーンの認知や行動上の年齢は、高齢期のそれではない可能性に注意しなくてはなりません。
短命の犬種が認知や行動の面で他の犬種よりも早く老化しているという証拠はありません。
超大型犬種の寿命の短さは、選択育種によって犬種を作り上げていく段階で定着してしまったと考えられています。短命の超大型犬種は早く老化するのではなく、若い時期に死を迎えるのだと認識することは、今後これらの犬種の、遺伝上のバグを修正するための研究において非常に重要です。
将来の研究のためだけでなく、5〜6歳という他の犬種であれば最盛期とも言える時期にある超大型犬種を平均余命を基準にして高齢期と呼んで扱うことは、犬の福祉を損なうことにもつながります。
まとめ
犬の年齢を人間に換算して考える時、認知や行動面での年齢を基準にすることで従来とは違う分類を提案した研究結果をご紹介しました。
この研究で提案された分類は、犬の行動および認知研究、獣医行動医学においてたいへん有効だと考えられます。また一般の飼い主に、加齢に伴う犬の行動の変化を知らせる教育プログラムなどを作る際にも役立つと思われます。
このような分類を知っておくと犬の年齢の節目の目安にもなりますので、認知の問題などが出てきた時の早期発見にもつながる可能性があります。
《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2021.643085/full#B50