犬が自傷行為をしてしまう理由3選 原因からひも解く対処法を解説

犬が自傷行為をしてしまう理由3選 原因からひも解く対処法を解説

犬が体の同じ部位をずっと舐め続けて脱毛した、自分の尻尾をしつこく追い回し、挙句の果てに食いちぎってしまった。そんな様子を見たことのある飼い主さんはおられませんか。体を舐めるのも尻尾を追いかけて遊ぶのも、正常な行動の範囲内です。しかし、日常生活に支障をきたすような事態になるまで繰り返す場合は異常だと考え、適切な対処を行うべきです。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

正常な行動も常軌を逸すると問題行動となります

体を舐める犬

手足やしっぽなどを舐めるのは、犬にとって正常な行動です。「セルフグルーミング」といって、自分で自分の体を清潔に維持したり、ちょっとした不安や興奮を自ら落ち着かせるために行う行為です。

しかし、同じ場所を継続的に舐め続けることでその場所が脱毛してしまったり、皮膚を傷つけて炎症を起こしてしまったりするのは、もはや正常な行動とは言えません。

犬の場合、日常生活に支障をきたすほど同じ行動を繰り返すことを「強迫神経症」と言います。同じ場所をずっと舐め続けたり、尻尾を追いかけ回して咬みつき、くいちぎってしまったりという自傷行為は、強迫神経症の症状の一つだと言えます。

犬の強迫神経症の症状には、自傷行為の他にも同じ場所を行ったり来たりする、理由もなく吠え続ける、光を追いかけ続ける、何かの表面を延々と舐め続けるなどの症状が知られています。

犬の自傷行為の理由3選とその対処法

1.裏に病気が潜んでいる場合

治療を受ける犬

犬の自傷行為は、痛みやかゆみ、違和感を伴う皮膚疾患や、脳、脊椎などの神経系疾患、感染症や目の疾患による視野の悪化などが原因となっていることも少なくありません。

自傷行為を問題行動として行動診療科のある動物病院に相談した場合も、獣医師は必ずカウンセリングの後に検査を行い、裏に病気が潜んでいないかどうかを確認するはずです。また過去にケガをした箇所に対して、舐めることが癖になってしまっているケースもあります。

愛犬が自傷行為を続けてしまう場合、まずは動物病院に行き、自傷した箇所の治療を受けてください。そして、獣医師に状況を相談し、カウンセリングとともに検査を行い、裏に病気が潜んでいないかどうかを調べてもらいましょう。

検査の結果、病気が見つかればそれをしっかりと治療します。もしも病気が隠れていなければ、ストレス面での原因を探っていきましょう。

2.不安や恐怖などのストレスが続くことが原因となる場合

怖がる犬

強迫神経症を引き起こす原因となるストレスには、さまざまなものが考えられます。長い期間狭いケージに閉じ込められていた、ケージではないけれどもずっと庭に繋がれっぱなしだったという場合も、自傷行為を発現させる十分な原因になり得ます。

他にも、長時間独りきりで留守番をしていた、飼い主さんとのスキンシップが不足している、散歩に連れて行ってもらえず、運動や外的な刺激が不足している、さらには飼い主さんの仕事や学校の都合で生活サイクルが変わったり環境が変わったり、新しい家族が増えたりして、そのストレスがずっと継続しているといった事が原因かもしれません。

自傷箇所の治療を受けながら、獣医師と相談して愛犬の自傷行為の原因となっているストレッサーが何かを突き止めましょう。そして、それを改善することと、多少のストレスにも負けない愛犬と飼い主さんの固い信頼の絆を構築することが、最も大切な治療法兼予防法です。

犬と薬

症状によっては、必要に応じて向精神薬、漢方薬やサプリメントなどを使用する場合もあります。しかし、これらの薬は愛犬の不安感や恐怖感を緩和させる効果があるだけで、根治させられる訳ではありません。

薬と並行して気にしている自傷箇所への関心を和らげるような、別の新しい刺激を与えることで、愛犬の行動を修正していきながら、ストレッサーを取り除き、飼い主さんと愛犬の絆を深めることで根治を目指していきましょう。

なお、自傷行為があまりにも激しくて、例えば尾の先が壊死してしまいそうな場合は、手術により断尾を行う場合もあります。

3.遺伝的要因や痴呆が原因の場合

診察台の上のドーベルマン

ドーベルマンの脇吸い、ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーの体舐め、ジャーマンシェパードのしっぽ追いなどは、遺伝的要因が関与していると考えられています。

また、老化によって脳内が変性したことで痴呆症が発症し、それが原因で問題行動が発現する場合もあります。

こういった場合も、上手に行動修正が行えるように獣医師に相談しましょう。痴呆症の場合も、若い頃のようには遊べなくても、ボールやニオイに反応を見せるなどのレベルで良いので、なるべく一緒に遊んで刺激を与えるようにすることをおすすめします。

また、サプリメントやフードで痴呆症の緩和が期待できるものもありますので、獣医師に相談してみましょう。

まとめ

散歩中のアイコンタクト

愛犬は、人間の都合による生活環境を受け入れたり、慣れてきた生活の変化を強いられたりすることで、飼い主さんが気づかない些細な変化に対しても、ストレスを感じているかもしれません。

愛犬が問題行動を発現させる前に、できるだけ環境を改善してあげられるようにしてあげたいものです。犬の生活環境を整え、改善できるのは飼い主さんだけなのですから。

そして、愛犬の立場に立ちつつ、お互いに依存し合うことのない適度な距離感で、良好な関係を築いていきましょう。

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