保険金請求から見た犬がかかりやすい病気
飼い主さんは、毎日愛犬の体調管理に気を遣われていると思います。犬がかかりやすい病気を事前に知っておくことで、ポイントを抑えた効率的で理にかなった健康管理が可能になります。
アイペット損害保険株式会社が、2020年の保険金請求のランキングを公開しています。年齢を3ステージに分け、それぞれ上位3つの病気を見てみると、下記になります。
<0歳の子犬の保険請求額上位3件>
1位:下痢、2位:外耳炎、3位:皮膚炎
<1〜6歳の犬の保険請求額上位3件>
1位:皮膚炎、2位:外耳炎、3位:胃腸炎
<7歳以上の犬の保険請求額上位3件>
1位:皮膚炎、2位:腫瘍、3位:心臓病
それぞれのステージで1または2位に登場する病気について、個別に見ていきます。
1.子犬時代に多い下痢
下痢の原因
1歳未満の子犬は、体力も免疫力も不十分なため、ウイルスや寄生虫に感染しやすく下痢になりやすいので、毎日便の状態をしっかりとチェックすることが大切です。
また、環境の変化にも弱く、家に迎えたばかりの子犬には特に注意が必要です。下痢を引き起こす病気には、腸の病気、肝臓や膵臓のトラブル、ホルモンに関連した病気等があります。
病気以外でも、異物や薬物の誤飲が原因になったり、季節の変わり目の寒暖差や気圧の変化、激しい運動をしたことでお腹の動きが激しくなって下痢をするということもあります。
下痢の予防ポイント
まずは、ワクチン接種、駆除薬などによるウイルス、寄生虫への感染予防が基本です。そのうえで、散歩の際に他の犬の便や尿、また喧嘩等による咬傷からの感染に注意しましょう。
また食事内容を頻繁に変えない、拾い食いをさせないことも、下痢の予防には有効です。
2.全年代を通して多い皮膚炎
犬に多い皮膚炎・皮膚疾患の種類
ほとんどの皮膚疾患は痒みを伴いますので、愛犬にとっても不快感が継続する病気です。
原因は大きくアレルギー性、感染性、分泌物と角化異常の3つに分けられます。複数の原因が存在している場合も多く、原因を見極めて適切な治療を行うことが大切です。
アレルギー性の皮膚炎には、ダニ、花粉、ハウスダスト等がアレルゲンとなるアトピー性皮膚炎と、特定の食物がアレルゲンとなる食物アレルギーがあります。
皮膚には常在菌が存在し、バランスが取れていると健康な状態を維持できます。しかし、皮膚糸状菌やマラセチア菌など特定の常在菌が増殖してしまうことで、感染性の皮膚炎を発症します。
皮脂や汗の分泌量に異常が生じると、表皮のライフサイクルにも異常が生じて角化異常となり、脂漏症や多汗症、そして過剰なフケといった症状が現れます。
皮膚炎の予防ポイント
予防には、外側からのスキンケアと内側からのスキンケアが大切です。
外側からのスキンケアは、シャンプーや入浴による洗浄、保湿剤等を利用して皮膚のバリア機能を維持する、服などで紫外線から皮膚を保護する、まめなブラッシングやマッサージを行って血行を促進させるといった対策が有効です。
内側からのスキンケアとしては、規則正しい生活、栄養バランスの取れた食事、住環境の衛生管理、ストレスの排除といった対策が有効です。
3.シニア期に多い腫瘍
腫瘍の発生に関与していると考えられている要因
獣医療の発展と共に犬の寿命が延び、それに伴って腫瘍を発症する犬が増えてきました。犬の死因のトップが悪性腫瘍だとも言われています。そのため、まずは加齢による免疫力の低下が関与していると考えられます。
また、除草剤や免疫抑制剤のシクロスポリンの長期投与がリンパ腫の発生に関与している可能性があると考えられています。シクロスポリンはアトピー性皮膚炎で用いられることもある有用な治療薬です。しかし、長期間投与することで免疫抑制状態が持続し発がんや感染症を発症する可能性があることは否めません。
そしてご家族の喫煙も、愛犬の悪性腫瘍を誘発する大きな要因だと考えられています。有害物質を含んだ副流煙は下の方に流れていき、床の近くにいる犬達の被毛に付着し、犬はグルーミングにより有害物質を体内に取り込んでしまいます。愛犬家の方には、禁煙をおすすめします。
腫瘍の予防ポイント
腫瘍の予防策としては、発情前の避妊・去勢手術とご家族の禁煙が挙げられます。避妊・去勢手術で予防できるのは乳腺腫瘍や精巣腫瘍、肛門周囲腺腫などの男性ホルモンが関連する腫瘍です。それ以外に直接的な予防策はあまりありません。
日々のこまめな体調管理、実際に体を触っての状態確認と、定期的な健康診断の受診による早期発見と早期治療が大切です。
まとめ
愛犬は、大切な家族の一員です。できるだけ長い期間、健康で快適に暮らしてもらうためにも、犬がかかりやすい病気を理解し、それぞれの年齢に見合った適切な栄養バランスの食事、ストレスフリーな生活、適度な運動により、愛犬の健康維持を図りましょう。