犬は匂いを辿る時、その先に誰がいるか認識している【研究結果】

犬は匂いを辿る時、その先に誰がいるか認識している【研究結果】

犬が匂いを追跡して行く時、その先にいる匂いの主が誰なのかを認識して予想しているという研究結果をご紹介します。当たり前のようでいて犬の認知能力を知るために大切なことだそうです。

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犬の嗅覚は周囲の環境への理解と関連しているか?

空港で働く探査犬

犬の嗅覚が優れていることは今さら言うまでもありませんね。警察や医療をはじめとして様々な分野でその嗅覚が活用されており、嗅覚そのものに関する研究もたくさん行われています。

しかし意外なことに、犬が自分の周囲の人や環境に対してどのくらい理解しているかという「認知」と嗅覚がどのように関連しているのかは、まだ良く分かっていないのだそうです。これまでの犬の認知との関連では視覚や聴覚の研究に限定されていたからです。

例えば警察犬が嗅覚を使って仕事をする時は特定の匂いに対して特定の反応をするように訓練されており、犬自身が「今追跡している匂いは行方不明になった人のものだ」と認識しているわけではありません。しかし訓練された行動ではなく犬が自主的に嗅覚を使う場合は、嗅いでいる匂いが誰のもので、匂いを辿って行くとその人がいると認識しているのでしょうか?

この度ドイツのマックスプランク研究所の人類史科学の研究者が犬の嗅覚と認知の関連を探る実験を行い、その結果が発表されました。

飼い主の匂いに対する犬の認識と反応を確認する実験

飼い主の手を嗅いでいるラブラドール

実験に参加したのは54頭の家庭犬とその飼い主2人です。飼い主は多くの場合夫婦での参加でしたが、中には親子、飼い主と友人という組み合わせもありました。何れにしても2人の人間の両方が犬と親密な関係にあることがポイントです。

実験はマックスプランク研究所のワンフロアで行われました。そのフロアには実験の出発点と到着点である2つの小部屋の他に互いに行き来できるドアでつながった3つの部屋があり、犬たちは実験を始める前にフロアを自由に歩き回って探索を済ませていました。

出発点の部屋には犬と実験者が居て待機しています。犬が待機している間に、飼い主の1人Aが犬に気づかれないよう廊下からフロアにある他の部屋を経由し到着点の部屋に入った後、そのまま廊下に出て退出します。もう1人の飼い主Bが別の最短距離の入り口から到着点の部屋に入り待機します。飼い主は2人とも実験前に建物に入ることは許されていません。

その後犬は実験員といっしょに出発点の部屋を出て到着点の部屋まで歩いて行きます。犬と実験員は飼い主Aが歩いたコースを辿ることになります。そして到着点の部屋には飼い主Bが待っています。

到着点の部屋で犬が見せた反応が示しているものは?

興奮した様子で見上げるボクサー

出発点の部屋から到着点の部屋まで犬が歩いたコースは、普段使用しているままの状態で他の人間や犬の匂いを消すための特別な清掃などはしていませんでした。犬は飼い主Aの匂いの他に様々な匂いがするコースを歩いて到着点の部屋まで行ったことを意味します。

到着点で飼い主Bが居るのを見た犬は、あらかじめ観察されていた飼い主に会った時の興奮度合いよりも強いレベルの興奮を示しました。言い換えれば、予想外の人が待っていて驚いて興奮しているようでした。

これは犬が様々な匂いの中から飼い主Aの匂いを認識しており、匂いの先にはAが待っていると予想していたことを示しています。

この実験は犬のような嗅覚の鋭い動物が、嗅覚を通して世界をどのように知覚しているかを知ることの最初の一歩になります。嗅覚と認知の関連は、犬種ごとの違い、嗅覚と他の感覚との使い分けなど、さらに多くの疑問へとつながり今後さらに研究が進められることが期待されます。

まとめ

飼い主の脚を嗅ぐビーグル

犬は匂いの軌跡からその先にいるであろう人を予想しており、実際に対面した人が予想と違っていた場合に驚いた反応を示したという実験の結果をご紹介しました。

犬の嗅覚の素晴らしさとそれを利用する研究についてはたくさん見聞きしますが、犬が嗅覚から何を知ったり感じたりしているのかについての研究がようやく始まりました。

犬の福祉をより的確なものにするためには、犬が何を認知しているのかを知ることは必須事項です。今後の犬の嗅覚と認知の研究を楽しみに待ちたいと思います。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-021-82952-4

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