マウンティングって何?やめさせるべき?
マウンティングとは、飼い主さんや他の犬、家の中のクッションや家具などに抱きついて腰を振る行動をいいます。
繁殖能力がない子犬もマウンティングをするため(遊びとして、また将来の繁殖行動に向けての練習だと言われています)、犬にとっては本能による行動の一つでありごく自然な行動といえます。マウンティングをするのは去勢をしていないオスだけでなく、去勢済みのオスやメスもすることがあります。
マウンティングはやめさせるべきかどうか、結論から言うと、人や他の犬へのマウンティングはやめさせるべきでしょう。
ただし、成犬になっても遊びの中でマウンティングをすることはあります。正常な遊びの範囲内のマウンティングとは、マウンティングしている時間が短く、またする側とされる側が交替することがあり、されている側の犬が嫌がっていないものです。正常な遊びの範囲内でのマウンティングは必ずしもやめさせる必要はないでしょう。
みなさんの愛犬も、普段の生活の中でマウンティングをする子もいるのではないでしょうか?人間と一緒に暮らすのが当たり前、そして他の犬や飼い主さんと交流する機会が多い今の時代に頻繁に人や他の犬にマウンティングしていては、マナー違反となって迷惑をかける恐れもあります。
家の中でクッションやぬいぐるみにマウンティングをする場合には、あまり頻回ではなく飼い主さんも気にならないのであれば、そのままにしておいても良いケースもあるでしょう。
しかしマウンティングは、クセになるとマウンティングそのものが犬にとって「やりたいこと」になってしまってやめさせることが難しく、習慣化しやすいといわれています。さらに足や腰に負担がかかる体勢であるため、足や腰などの関節に問題がある犬では、健康上の問題からもやらせない方が良いでしょう。
マウンティングをするときの心理
まずは犬がマウンティングをするときの心理をご紹介します。実は犬がマウンティングをする理由には、さまざまなものがあると考えられています。そのシチュエーションとともにご紹介しましょう。
①自分の方が強いことを証明したい
マウンティングという言葉から連想できるように、相手に「自分の方が強い!」「力がある!」と示し、それを確認するためにしている場合もあると考えられています。
このような心理によるマウンティングの対象は、飼い主さんのこともあれば他の犬や飼い主さんのこともあります。
②繁殖目的(性的興奮)のため
去勢をしていないオスに多くみられ、発情期のメスに対してマウンティングをします。メスが受け入れた場合はそのまま交尾となります。
しかしメスが拒否した場合は、オスはその興奮が冷めやらずクッションや毛布、家具などに対してマウンティングを行うことがあります。成犬になってこのような行動をとるようになってから去勢をした場合、マウンティングすることを学習した行動として覚えてしまっているので、多くの場合去勢後も行い続けると言われています。ただし去勢をすれば、マウンティング行為はなくならなくても性的に興奮するきっかけを減らすことはできます。またメスでも、自分が発情中、または周囲に発情中のメスがいることによりマウンティングする犬もいます。
③興奮したため
興奮状態になったときに、マウンティングを行うこともあります。この場合の興奮は性的興奮ではなく、例えばドッグランで他の犬と遊んでヒートアップしたときや、友達の犬や人に会ったときに嬉しくて興奮したときなどです。
このようなときにマウンティングをする場合は、高まった興奮をどうしたら良いか分からないためと考えられています。
ただし、このタイプのマウンティングは過度の興奮によるものなので、相手が嫌がっていても続けてしまいケンカに発展する恐れもあります。他の犬に対してマウンティングを続けている場合は、すぐにやめさせましょう。
④ストレスがかかった
ストレスを感じているとき、興奮した時と同様にどうしたら良いか分からずにマウンティングをすることがあります。
例えば見知らぬ犬や人、苦手な犬や人と会ったときや動物病院での診察、飼い主さん家族内のケンカ、騒音などが犬の大きなストレスになりマウンティングを引き起こすことがあります。犬によってどんなものがどの程度ストレスと感じるかはさまざまなので、愛犬の苦手なものや嫌いなものをきちんと把握し、それが回避できるものであるならばできるだけそのような状況を発生させないことが大切です。
マウンティングをやめさせる方法
前述の通り、犬のマウンティングは相手や頻度によりやめさせるべきものです。
ではどうやって犬に「マウンティングはしてはいけないこと」と教えればよいのでしょうか。
犬のマウンティングをやめさせるポイントは、「やろうとする度に、必ずやめさせること」です。できれば、マウンティングしてしまっている時ではなく「やろうとした時にやめさせること」です。
愛犬がマウンティングをしている光景を見たときにすぐ、なおかつ冷静に、低い声で「だめ」と声をかけましょう。またマウンティングしそうな状況では、まずはその状況や犬の心理を変えられないか(その場から離れる、遊びに誘ったり完璧にできるコマンドをかけたりして犬の気をそらすなど)考え、できることをしましょう。もし状況を変えられない場合には、犬の様子をよく見ていて、犬がマウンティングしそうになったら制止します。
制止してもすぐにまたマウンティングをしようとしたり、マウンティングをやめてもすぐ再開しようとしたりするかもしれませんが、またその都度やめさせます。そうすることで、犬は「マウンティングはやってはいけないこと」と学習していきます。
このときの注意点は、「名前を呼ばないこと」と「高い声で騒がないこと」です。
マウンティングをやめさせるときだけではなく、犬に「やってはいけないこと」を伝える際に「〇〇ちゃんだめ」と名前と一緒に高い声をかけてしまうと、犬は「マウンティングをすると飼い主さんに名前を呼んでもらえる」または「名前を呼ばれると嫌なことが起こる」と学習してしまい、マウンティングがいけないことだと伝わらなかったり、飼い主さんに名前を呼ばれることを嫌なことだと認識してしまうようになる恐れがあります。
マウンティングをやめさせるのは時間がかかることが多いと思いますが、飼い主さんがタイミングを逃さず根気強く続けることが大切です。
まとめ
犬のマウンティングは、他の犬や飼い主さんとのトラブルを招きかねません。犬は本能で行動することもありますが、人間と共生している以上、飼い主さんは愛犬をきちんとしつけ、人間社会においてのマナーを守らなければなりません。
そのためには、愛犬を「きちんと観察すること」がとても大切になります。
犬のトラブルの原因は、飼い主さんが目を離しているスキに起こっていることが多いといわれています。普段から愛犬をきちんと観察することで、「普段と違う行動をしている」「なにか様子がおかしい」「ストレスを感じているな」などの異変に気付くことができ、マウンティングを含めた好ましくない行動を防止することができるでしょう。
家の中でも散歩中でも、常に愛犬を気にかけ、見守ることが大切です。
マウンティングは、社会化が不足して犬としてどう行動して良いかよく分からない犬が他の犬に遊びに誘われた時にも見られたり、ストレスによるマウンティングだとしてもそれが過度となり強迫性障害(常同行動)という病的状態になってしまうこともあるそうです。そのような場合には、トレーナーや獣医師などのプロに相談しましょう。