ロボット盲導犬の最新のプロトタイプ
AIBOなどのペットタイプのロボット犬とは違う実用のための犬型ロボットを、メディアなどで目にする機会も増えてきました。ペッパー君と犬型ロボットSpotがソフトバンクホークスの応援に登場したのも記憶に新しいところです。
先ごろSpotのような犬型ロボットを盲導犬として使用するための試作品構築と研究結果が発表されました。ロボット盲導犬を構築しているのは、カリフォルニア大学バークレー校で機械工学の研究チームです。
今回発表されたロボット盲導犬の試作品は、マサチューセッツ工科大学が開発した四足歩行ロボットを改造して作られているそうですが、従来のロボットとはどこが違うのでしょうか。
より実用的なロボット盲導犬
車輪のついたキャリーバッグのような形状、従来の視覚障害者用のロボットとの違いは、このロボット盲導犬は、障害物を知覚してユーザーを導き限られた狭いスペースにも対応できることだそうです。
ロボット盲導犬には誘導されているユーザーを知覚するための回転カメラ、位置や距離を測定するための光検知機能が装備されています。
ロボットには犬に着けるようなリードが装備されており、障害物などのために停止する必要がある時にはロボットがリードを緩め、歩き出しても安全な状態になるとリードをピンと張ってユーザーに知らせます。研究者はこのリードシステムをガイド杖のような位置づけと考えているといいます。
車輪ではなく四足を採用することで小型化と軽量化が可能になり、狭いスペースでの移動や方向転換が簡単になっているそうです。
こちらがロボット盲導犬の試行の様子です。まだ動きはゆっくりですが、研究者は実用化はそう遠い未来のことではないと述べています。
本物の犬とロボット犬を比較すると?
この発表を受けて、一般の人からの反応は賞賛と懐疑的なものの2つに分かれているようです。
ロボット盲導犬に疑問を呈する人の多くは犬好きを自称する人たちで「本物の盲導犬がもたらす心のサポート効果や絆がロボットでは得られない」というものです。確かに感情的には頷ける意見です。
研究者はもっと現実的に、一人でも多くの視覚障害者をサポートするには、本物の犬よりもロボットの方が有望であると述べています。
盲導犬は高いスキルを必要とするため、訓練に多大な時間と手間がかかります。途中で適性がないとして脱落する犬も少なくありません。そのため盲導犬の恩恵に与れる人の数は少なく、多くの視覚障害者が不便を強いられています。
ロボットは1つのアルゴリズムを開発すると、それを他のロボットにコピー&ペーストして大量に生産できます。これは本物の犬よりも利便性が高い点です。
またロボット工学の研究者や盲導犬ユーザーではない犬好きな人たちが言及していない大切なことがあります。それは『盲導犬の福祉』です。
もちろんほとんどの盲導犬ユーザーの人々は犬を大切にして強い絆を築いています。しかし大前提として排泄や食事などが大きく制限される盲導犬の生活は、犬の福祉の面から見ると理想的とは言えません。
犬の福祉を損なうことなく犬が働く場は犬に任せ、ロボットに代わることができる場面はオープンマインドで対応することが、犬にとっても人にとっても幸せな社会に繋がる可能性があるのかもしれません。
まとめ
アメリカの大学で、従来とは違う技術を使ったロボット盲導犬の試作品が構築されたというニュースをご紹介しました。
人間と共に働くロボットがしばしば犬型であることは、犬と人間の絆の強さを表しているような気がします。犬型ロボットの仕事を知ることで、改めて働く犬のことを深く考える機会を持つのも良いのではないでしょうか。