ロックダウン中の救急病院の利用率を調査
新型コロナウイルスのための対策として世界各地で都市を封鎖するロックダウンが行われました。イギリスもロックダウンを実施した国の1つです。
そのイギリスで2016年1月から2020年9月までのアルダー・ヘイ小児救急病院の利用データの調査が行われました。調査を行ったのはリバプール大学、アルダー・ヘイ小児病院、動物保護団体のドッグズトラストです。
調査の結果は、2020年3月から6月(または7月)に実施された第一次ロックダウン中の犬の咬傷事故の増加を示していました。皮肉なことに小児救急全体での利用率は減少していたそうです。
子供が犬に噛まれる事故が約3倍に!
調査対象となったアルダー・ヘイ小児病院で犬の咬傷による受診は、ロックダウン以前では月平均15例だったといいます。それが3月にロックダウンが開始されて以降の5月から7月にかけて咬傷事故の患者が増え、7月には44例というピークを迎えました。以前の月平均の約3倍という数字です。小児救急だけでなく救急科全体でも同期間の咬傷事故での受診は4倍になっていたそうです。
救急科を訪れた人口統計は、男子は7〜12歳、女子は4〜6歳が最も多く、新型コロナウイルス対策に関連した受診の増加は、男子では約78%、女子では約66%増加していました。
9月に学校が再開されると犬の咬傷事故の症例数は通常の数字に戻りました。研究者は、ロックダウンによって子供達が家で過ごす時間が長くなり、犬との関わりが増えたことが咬傷事故増加に関連していると結論づけています。
犬による子供の咬傷事故を防ぐために大切なこと
研究を先導したリバプール大学の犬の行動学者は、犬を飼うことで身体活動や社会性が増えるなど利点だけでなく、咬傷事故が身体に傷害を負わせるだけでなく、家族全体のメンタル面にも影響する可能性を指摘しています。
また犬が「耳を倒す」「顔をそらす」「その場から離れる」などの行動で、状況に対してキャパシティがいっぱいになっていることを示す兆候に、子供達が気付かないことに対しても警告しています。
研究の共著者でもあるドッグズトラストの研究者は、飼い主が検討するべきいくつかのことを提案しています。
- 犬がどんなに良い子にしていても監視なしで子供と犬を放置しない
- 犬の行動をよく観察して、状況が悪化する前に介入する
- 公共の場では常にオンリードで、必要に応じてマズルカバーを検討する
- 子供も含めて飼い主が犬の行動を読むための訓練を受ける
まとめ
イギリスのリバプールでの調査で、ロックダウン中に犬に噛まれて小児救急病院を訪れた子供が大幅に増加していたという結果が出たことをご紹介しました。
調査は数字に焦点を当てて統計しているため、飼い主や子供の心理については述べられていませんが、ロックダウン中の不安やストレスも影響しているのかもしれないですね。
このような事故を防ぐためには、複数の研究者が述べている通り、犬が発している警告を早期に見つけるよう人間が訓練を受けることが重要です。特に子供への教育は重要です。これは世界共通で認識するべきで、日本で犬を飼っている人にとっても同じです。
《参考URL》
https://bmjpaedsopen.bmj.com/content/5/1/e001040