犬は人間の顔に対して愛着を感じているだろうか?【研究結果】

犬は人間の顔に対して愛着を感じているだろうか?【研究結果】

犬は周囲の人間の顔を見た時に様々な反応を示します。犬が人の顔や表情を見た時の身体変化について3つの違う方法で調査した結果が発表されました。

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犬は「人間の顔」という刺激に対してどんな反応を示す?

首を傾げている大型犬

犬と一緒に暮らしている人にとって、彼らが身近な人々の顔を見た時に色々な反応を示したり、反応の仕方がそれぞれ違うのは、ごく自然に受け止めていることです。

しかし犬はいつも世話をしてくれる飼い主、近所で会う顔見知りの人、全く知らない人の顔を見た時に具体的にどのくらい違う反応を示すのでしょうか。またその人たちの顔の表情によっても反応は違うのでしょうか?

これらのことを検証した実験の結果が、オーストリアのウィーン獣医科大学メッセーリ研究所の研究チームによって報告されました。

脳、視覚、行動の面から犬の人間の顔に対する反応を検証

怒っているような顔のチワワ

人間の顔や表情に対して犬が、脳、視覚、行動においてどのような反応を示すのかを検証するため、次のような3つの実験方法が取られました。実験に参加した犬は24頭、全員が普通の家庭犬たちでした。

1.MRIを使用して、犬に人間の顔の映像を見せた時の脳の活性を観察する

MRI(磁気共鳴装置)は医療の現場で広く使われている検査方法です。横になって大きな筒のような装置の中をゆっくりと通過する検査を経験したことがある方も多いと思います。この実験では24頭のうち、あらかじめプロのトレーナーによって装置の中でも落ち着いていられるよう訓練された20頭が参加しました。

装置の中に伏せの姿勢で静止している犬に、飼い主(主に世話をしている人)、顔見知りの人、知らない人の顔の映像を見せたときに、脳のどの部分が活性を示したかが観察されました。映像はそれぞれの人間の笑っている顔と怒った顔の両方が提示されたそうです。

2.人間の顔の映像を見せた時の犬の視線の動きを機器を使って追跡する

MRIの時と同じように、飼い主、顔見知り、知らない人それぞれの笑顔と怒った顔の映像が使われましたが、ここでは「飼い主と知らない人を並べて提示」「飼い主と顔見知りを並べて提示」の方法を取り、それぞれ犬の視線がどのように動いたか、犬の瞳孔の大きさが変化したかどうかが観察されました。

3.人間の顔の映像を流す間、犬を自由にして行動を観察する

視線の実験と同じように、飼い主と知らない人または飼い主と顔見知りの映像を並べて提示しますが、ここでは映像が流れている間犬を自由にしておき、どのような行動を示したかが観察されました。

犬は確かに飼い主の顔に愛着の感情を持っている様子

見上げて微笑む犬

実験の結果は、犬と一緒に暮らして毎日世話をしている人にとって嬉しいものでした。 MRIによる脳の観察では、犬はいつも世話をしている飼い主の映像を見た時に脳の感情と愛着に関連する領域が活性化しました。これは飼い主の表情が笑顔でも怒った顔でも同じでした。

反対に見知らぬ人の映像を見た時には視覚と運動に関連する領域が活性化しました。これは知らない人の顔への好奇心や何かあった時にすぐに動けるよう警戒していることが伺えます。顔見知りの人では両方の領域が弱めに活性化しました。 また人間の笑顔に対しては報酬に関連する領域が、怒った顔では感情の領域が活性化しました。

視線を追跡する実験では飼い主対知らない人の場合、飼い主の方に視線を向けている時間が有意に多くなっていました。好奇心よりも愛着が勝っていたようですね。

飼い主対顔見知りの場合は、両者の差が小さかったものの飼い主へ視線を向けた時間が多かったそうです。これらはMRIの観察結果と一致しています。

また犬の瞳孔のサイズでは興味深い結果が示されました。飼い主または顔見知りの人が怒っている顔を見た時、犬の瞳孔はもっと大きいサイズになったということです。

人間では一般的に好意を持っているものに対しては瞳孔が大きくなると言われています。好きな人や知っている人が怒っている顔を見た犬は、懸命に相手に対する好意を伝えようとしているのかもしれませんね。

映像を流しながら犬を自由に行動させた時の観察では、飼い主とその他の人との有意と言えるほどの差は認められませんでした。しかし犬たちが飼い主の映像に近い場所にいた時間を平均すると、顔見知りまたは知らない人の映像に近い場所にいた時間よりも長かったそうです。大きな差は認められないが、飼い主寄りであったようです。

まとめ

人間を見上げて立ち上がっている犬

人間の顔の映像を使った3種類の実験の結果、犬はいつも世話をしてくれる飼い主に対して、脳神経、視覚、行動において愛着反応を示すという報告をご紹介しました。研究者はこの実験を未だ予備的なものであるとしながらも、将来さらに深い研究をする際の大きな手がかりになったと述べています。

一般の飼い主として心に留めておきたいのは、犬は飼い主が笑っていても怒っていても顔を見ると愛着を感じるよう脳が活性化すること、けれど好きな人が怒った顔をしていると瞳孔が大きく開くほど感情が揺れ動くということです。 犬が幸せを感じるためにはどうすればいいのか、大きなヒントが隠されている研究結果ではないでしょうか。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-020-79247-5

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