絶滅危惧種守るために働く「保護探知犬」の研究

絶滅危惧種守るために働く「保護探知犬」の研究

探知犬が活躍する分野は犯罪捜査、医療、農業、考古学などかつてないほど広がりを見せています。先ごろ絶滅危惧種の動植物を探知する犬たちについての研究が発表されました。

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絶滅危惧種の動植物を探し出す探知犬を知るために

地面の匂いを嗅いでいる犬

世界中で環境破壊や気候変動が深刻な問題となる中で、絶滅危惧種に指定される動植物は増え続けています。これらの動植物の絶滅を防ぐためには、まず最初にそれぞれの生物がどこに生息しているのかを正確に把握する必要があります。

大型の動物であればドローンなどを用いて上空から探し出すこともできますが、小型の哺乳類や爬虫類、植物では微小な手がかりが重要になります。

ドイツのヘルムホルツ環境研究センターの研究者は、広範囲においてこの「手がかり」を探すために活躍している探知犬についての研究結果を発表しました。

ニュージーランドを筆頭に北米やヨーロッパなど、世界各国で使役犬の活躍によって絶滅危惧種の生息地や足跡を見つけることはすでに実用化されています。

野生生物の探知犬が絶滅危惧種の保全に有効であるなら、探知犬の能力や長所短所を把握する必要があります。この研究では各追跡対象に最適な探知犬の犬種、他の追跡方法との比較などが検証されました。

探知犬の犬種、追跡する生物の種類

匂いを追跡中のダルメシアン

研究者は野生生物探知犬の使用について書かれた1220の出版物を検証しました。どの犬種がどのような種の生物を追跡し、それがどの程度機能しているかを調査することが目的です。

野生生物探知犬の使用が増えるにつれて、探知する対象や目的も変化し多様化してきました。研究者が検証したデータは合計62カ国で、動物(哺乳類、鳥類、昆虫など)408種、植物42種、真菌26種、細菌6種に関する報告が含まれていました。探知犬の犬種は国際畜犬連盟公認犬種108種、非公認犬種20種が含まれました。

研究者は「原則としてどのような犬種でも探知犬として訓練することが可能だが、犬種によってはより多くの時間や手間がかかる可能性がある」と述べています。例を挙げると以下のようなものです。

ピンシャーやシュナウザーは現代においては使役犬ではなく愛玩犬として飼育されることが多いため目的の匂いを追跡していくモチベーションが低下しています。またテリアはターゲットを発見した時に狩ってしまう傾向があるため、絶滅危惧種の追跡には不向きです。

反対に野生生物探知犬として多く活躍しているのは、猟犬として飼育されているが狩猟本能は強くない犬種です。

例えば、獲物を見つけて人間に知らせるよう訓練されているポインターやセッターはライチョウやウズラなど地上にいる鳥の追跡に多く参加しています。

レトリーバーや牧畜犬の犬種も、新しいことを学ぶのに熱心で人間と一緒に働くことに高いモチベーションを持っているため、世界中で探知犬として人気があります。

探知犬の能力と他の追跡方法との比較

自然の中に設置された観察用カメラ

探知犬はあらかじめ訓練された特定の匂いを追跡していきます。特定の匂いとは、動物のフン、植物の種子、生物そのものの匂いなどです。研究者たちは探知犬によって発見されたフンや種子などを分析して、同種の他の生物との関連や食生活などを明らかにします。

探知犬による追跡は、犬種に関係なく全体の約90%において他の方法よりも高い検出率を出しました。他の方法の方が良いパフォーマンスを示した割合は0.98%でした。

モーションセンサーや赤外線センサーを使って自動的に撮影するカメラを設置する方法と比較すると、探知犬によるブラックベア、テン、ボブキャットの検出率は3.7〜4.7倍も高くなっていました。

研究者は探知犬のパフォーマンスがあまり良くなかった場合の多くは、犬の能力ではなくトレーニングが不十分であったためだと述べています。全ての犬種は探知犬としてトレーニングが可能ですが、追跡対象の種類とタスクに最適な犬を選択すると、訓練にかける時間が短縮されパフォーマンスの効率が高くなります。

研究者はそのほかに、優れたトレーニング方法の開発、犬と追跡対象との適合性に関する知識、調査地域の地域特性や天候と犬との適合性などの要因を考慮することが、探知犬のパフォーマンス向上に重要であるとしています。

まとめ

絶滅危惧種の動植物の保全のために動植物を探知する野生生物探知犬、そのパフォーマンスを正確に評価するために過去の記録を調査分析した結果をご紹介しました。

動植物の種の絶滅は食物連鎖のバランスを崩し、その種だけでなく人間も含めた自然界全体に悪い影響を及ぼします。絶滅危惧種の保全という重大な任務を負ってくれている犬たち。人間はどこまで行っても犬に頭が上がる気がしません。

《参考URL》
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/2041-210X.13560
https://www.ufz.de/index.php?en=36336&webc_pm=11/2021

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