いつもと違う座り方は異常のサインかも
人にも正しい姿勢というのがあるように、犬にも正しい姿勢があります。犬の場合、お座りの正しい姿勢は、前足と後ろ足がきれいに揃っていて、体が真っ直ぐに立っている状態です。
犬も人間と同じように、リラックスしている時もあれば座る時に癖が出てしまうこともあります。しかし、正しい姿勢で座ることができない、座る時に毎回同じ方向に崩れるという場合や、今まではきちんと座っていたのに突然座り方が変わったという場合には、注意が必要です。
こんな座り方をしていたら注意しよう
横座り
片方の後ろ足を横の方に投げ出したようにして、お尻をぺたんと床につけて座るような座り方をすることがあります。人間で例えると、正座の足を横の方に崩して座る、横座りのイメージです。片足を横に投げ出しているため、体も真っ直ぐには立たずに、斜めに傾いたような姿勢になります。
いつも傾く方向が同じ(投げ出す方の足が同じ)場合は、注意が必要です。このような座り方をする場合、股関節や膝関節を痛めている可能性があるからです。
投げ足座り(赤ちゃん座り)
後ろ足を前の方にどんと投げ出したようにして座るのも、注意が必要な座り方の一つです。人間の場合、生後半年程度の赤ちゃんがよくやる座り方で、投げ座りとか投げ足座りと呼ばれている座り方に似ています。
この座り方も関節周りに異常が起きている場合が多く、膝の靭帯を傷つけてしまっている場合にもよく見られる座り方です。
座っていられない(すぐに立つ、座る動作がゆっくり)
座っている姿勢ではありませんが、すぐに立ってしまって座っていられない、または座る動作がとてもゆっくりしている場合も注意が必要です。膝や腰の関節や靭帯にトラブルがある場合にしゃがみたがらず、立った姿勢でいるほうが多くなってしまいます。
またこういう座り方をする場合は、お尻の周囲に問題を抱えていることも考えられます。肛門の周囲にある肛門嚢に分泌物が溜まって炎症を起こす肛門嚢炎や、肛門の中や周囲に細菌が入り膿が溜まってしまう肛門周囲膿瘍などが考えられます。
座り方がおかしい時に疑われる関節や靭帯の病気
前述でご紹介したような座り方をしていた場合に疑われる関節や骨、靭帯の代表的な病気や怪我をご紹介します。
膝蓋骨脱臼
後ろ足の膝のお皿がずれてしまう病気です。先天性のものと後天性のものがあり、小型犬によく見られる病気です。進行によって4つのグレードに分類され、グレードⅣまで進んでしまうと、外科手術以外に治す方法はなくなってしまいます。
座り方の異常の他には、足を上げて歩く、スキップするように歩く、足を引きずって歩く、触ると痛がるなどの症状がありますが、グレードにより症状はさまざまです。
股関節形成不全
股関節が正常に形成されなかったり変形してしまったりする病気です。先天性のものと後天性のものがあります。遺伝するといわれており先天性の場合は、早ければ生後4ヵ月齢頃から現れます。後天性の場合は、肥満や激しい運動などが原因になります。大型犬によく見られる病気です。
座り方の異常の他には、モンロー・ウォークといわれる腰を振るような歩き方やうさぎ跳びのような走り方をするのが特徴的な症状です。
関節リウマチ
免疫機能の異常が原因で起こる関節炎で、自己免疫が関与していると考えられていますが、明確な原因は分かっていません。
座り方の異常の他には、足を痛がる、足をかばいながら歩く、足を引きずって歩くなどの症状が見られます。
前十字靭帯断裂
後ろ足の腿の骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)は、その前側と後側を靭帯がしっかりと結びつけています。この内の前側の靭帯(前十字靭帯)が切れてしまう病気です。事故の他、加齢や肥満が原因となることも多いです。
座り方の異常の他には、足を上げたまま歩くなどの症状が見られ、次第に足を引きずって歩くようになり、慢性の関節炎や腫れが出ることもあります。
骨折
交通事故や高所からの落下、床での転倒などが主な原因ですが、骨の腫瘍が遠因となることもあります。また、激しい運動により疲労骨折を起こす場合もあります。
座り方の異常の他には、患部の腫れや、足を引きずって歩く、足を上げて歩く、触られるのを嫌がるなどの症状が見られます。
まとめ
犬の座り方が突然変わった、きちんと座れない、いつも同じ方向に傾いているなどの座り方に気づいたら、関節、骨、靭帯などの異常が考えられますので、動物病院で診てもらいましょう。
犬によく見られる関節の病気は、肥満が原因となるものも多く見られます。肥満は、食事と運動の管理を行うことで予防できます。関節の病気は犬にとってもつらい生活を強いられるので、飼い主さんがしっかりと予防してあげるようにしましょう。