犬の記憶力についてはいまだ謎
犬の記憶力については、今もなお世界中でさまざまな研究が進められていますが、実際には未解明の部分が多い状態です。
ただ、だからといって「犬が人間のように他の犬のことを覚えることなんてできない」と決めつけるのは早計ですし、知らない犬には無反応だった愛犬が遠くから近づいてくる犬友達には、いち早く気づいてしっぽを振ったりと「犬が特定の相手にだけ特定の反応することがある」ことを私たちは経験的に知っていますよね。
視覚のみで判別できる?
「顔見知り」という言葉もあるように、私たち人間は多くの場合、相手の顔を記憶して顔によって相手が誰であるかを「見分け」ています。つまり視覚によって相手を判別しているということです。犬もこのように視覚で他の犬を見分けているのでしょうか。
犬の視覚的な判別力については、こんな実験があります。コンピューターの画面に人間を含むさまざまな動物の画像を次々に写していき、犬がその中から犬の画像のみを見分けることができるかというものです。実験の結果、犬はしっかりと犬の画像のみを全て選択することができたといいます。
つまり犬は視覚情報だけで相手が「犬」か「犬でない」かを判別できるということです。更に興味深いことには、この実験で使われた画像にはさまざまな犬種が混ざっていたにも関わらず、犬は犬種にとらわれることなく「犬」と判断できたそうです。
この実験はここまでですが、更に「犬」の中から「特定の犬」の画像を選択できるかを調べたら、面白い結果が得られるかもしれません。ともあれ、少なくとも犬は視覚情報だけでもある程度の判断ができるということがわかりました。
他の五感と組み合わせて記憶している?
1.犬にとって視覚情報は重要ではない
ただ一方で、犬の視覚の信頼性についてはやや疑問が残ります。ご存じの方も多いと思いますが、犬の視力は0.2から0.3程度と低く、人間でいうところの「近視」の状態です。また人間のようにさまざまな色を見分けるような色覚も備わっていないといわれています。
更に近年の研究では、人間と犬にそれぞれ「正面から見た顔」と「後ろ姿」の短い動画を見せて脳の反応状態を測定したところ、人間の脳は「正面から見た顔」の動画の方に強く反応した一方、犬の脳は大差がなかったという結果が出ているようです。つまり犬は「顔」という視覚情報をそれほど重要視していないということでしょう。
2.犬の五感で優れているのは嗅覚・聴覚
五感の中で優れているとはいえない視覚は、犬にとってあまり役立つものではないのかもしれません。代わりに犬の優れている五感といえば、嗅覚と聴覚でしょう。犬の嗅覚は人間の数千倍から1億倍、聴覚は6倍ほど優れているといわれています。
恐らく犬は相手の見た目だけでなく、匂いや声といった嗅覚情報・聴覚情報を組み合わせて記憶し、判別に利用していると考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はあくまで科学的な目線に立って、犬の記憶力について探ってみました。今後更に研究が進んで、犬の記憶力のしくみが解明されたら、私たち人間と愛犬とのより良い暮らしのためのヒントも見つかるかもしれませんね。