歩き方の変化に気付けるのは飼い主さんだけ
愛犬の体調の変化に真っ先に気付けるのは飼い主さんだけです。飼い主さんは愛犬の様子を日頃からよく観察し、小さな変化にもすぐに気付ける観察眼を養う必要があります。
たとえば『歩様』です。愛犬が歩く様子は、隠れている病気を見抜くための重要な情報です。日頃から愛犬の歩く様子をよく観察していれば、ちょっとした変化に気づくことができるようになります。
今回は、病気が潜んでいる可能性のある犬の危険な歩き方についてご紹介します。
病気やケガを疑える歩き方
1.足を浮かした状態で歩く
犬が足を浮かして地面につけずに歩くのは、浮かしている足が痛いからです。この場合、真っ先に疑うのは足のケガです。肉球や指の間に傷がないか、トゲが刺さっていないか、炎症を起こしていないか、ダニがついていないか、爪が折れて刺さっていないか等をすぐに確認しましょう。
怪我をしていないのに足を浮かせて歩く、足を引きずる、ふらつくといった歩き方の場合に疑える病気としては、次のようなものが考えられます。
前十字靭帯断裂
膝にある前十字靭帯が断裂して膝の関節が不安定になる病気です。事故や激しい運動などの衝撃や肥満、老化などが原因です。
膝蓋骨脱臼
後ろ足の膝蓋骨がずれてしまう病気です。膝蓋骨とは、膝のお皿の部分です。打撲や落下が原因で起こる場合と、遺伝による場合があります。
2.ふらつく
ふらつく、足を引きずる、動きが緩慢になる、ナックリングが見られる、座りにくそうである、立ちにくそうである、尾を振れないなどといった様子が見られる場合は、脊髄や脳・神経系の疾患が疑われます。ナックリングとは、肉球が着地せずに足の甲の部分が地面についてしまう歩き方です。
具体的には以下の病気の可能性が挙げられます。
- 椎間板ヘルニア
- 馬尾症候群
- 水頭症
- 脳腫瘍
椎間板ヘルニアの場合、初期の段階では抱っこされたり背中を触られることを嫌がるようになります。
また患部が頸椎の場合は、歩く時に首を動かさず、前に突っ張ったような歩き方になるという特徴があります。
脳疾患の場合は、発症箇所によりさまざまな歩様が見られます。
3.足を引きずる
足を引きずるように歩いたり、歩くのを嫌がったりする場合に疑われる病気には以下のようなものが挙げられます。
- 骨関節炎
- レッグペルテス病
- 成長板早期閉鎖
骨関節炎は関節に痛みや変形、強張りが生じる進行性の病気で、高齢犬に多く見られます。前足に発症している場合は、頭を不自然に上下に動かして歩きます。
レッグ・ペルテス病と成長板早期閉鎖は発育期の小型犬に多く見られます。
4.腰を左右に振りながら歩く
腰を左右に振りながら歩く、ウサギのように後ろ側の両足で地面を蹴るようにして走る、座る時に横座りになるといった場合に疑われる病気には、股関節形成不全があります。
股関節の窪みが浅く大腿骨の骨頭がきちんと収まらずに常に亜脱臼の状態になる病気です。遺伝性で生後6ヵ月~2歳頃までの大型犬に多く発症します。
5.壁に沿って歩き続ける
壁に沿って歩き続ける、同じ場所を旋回するような場合は、認知障害が疑われます。夜鳴きや徘徊といった症状も見られます。基本的には症状に合わせて生活環境を変えていくしかありません。
心理的な理由の場合も
たとえば愛犬が足を引きずっていたとしても、病気やケガがある訳ではなく飼い主さんの気を引きたい、構ってもらいたいからそうしているということがあります。
過去に病気やケガをしてうまく歩けなくなった時に、飼い主さんが心配してよく構ってくれた経験をした犬に見られることのある行動です。この場合は、足を触っても痛がることもなく、場合によっては引きずる足が変わることもあります。
もちろん病気の場合がほとんどですので仮病だと決めつけずに病院で検査をしてもらい、どこにも異常が見られなかった場合には、なぜそのような行動に至ったのかを考えて密なコミュニケーションを心掛けるようにしましょう。
まとめ
愛犬は自ら体の不調を教えてはくれません。しかし犬にとっても病気は早期に発見して早期に治療を開始することが大切です。愛犬の苦痛も和らぎますし、苦しむ期間も短くて済む場合があります。医療費も必要以上に高くなることを抑えられます。
その早期発見の決め手の1つが「歩様の違和感」です。おかしいなと思ったら、安易に様子を見ようとせず、なるべく早めに病院で診てもらいましょう。その際に、事前に自宅で愛犬が歩く様子を動画撮影し、受診時に獣医師に見せることができると、より正確な診断に役立ちます。