1.狂犬病予防法
狂犬病予防法は1950年(昭和25年に公布され、1953年(昭和28年)に施行された法律です。その後何度か施工令や施工規則を含め何度か改正されています。過去に日本では狂犬病の感染により多くの人や犬が亡くなりました。感染を撲滅するための処置として定められた法律です。
定められた当時の主な施行内容は「犬の登録」「狂犬病の予防注射」「野良犬等の抑留」の徹底であり、これによって日本ではわずか7年という短期間での狂犬病の撲滅が実現されたのです。
狂犬病に感染すると人も犬もほぼ100%の確率で死亡するとされています。日本では撲滅された狂犬病ですが、世界的に見ると撲滅された地域はごくわずかで、今でも推定数万人の人が狂犬病によって亡くなっていますし、特に野生動物とペットが接触する機会のある地域では今なお切実な問題です。全ての哺乳類が感染する可能性があり、人だけではなく動物も国境をまたいで盛んに往来する現在、犬の飼い主は狂犬病と狂犬病予防法に関する正しい知識を持つことは重要であり、犬を飼う前に知っておくべき知識です。
この法律によって犬の飼い主に義務付けられていること
【犬の登録】
犬を飼い始めたら、お住まいの自治体に届け出ましょう。生後90日から30日以内に届け出ることになっています。多くの場合、犬を飼い始めて初めて行う狂犬病ワクチンを接種した際に動物病院で説明があり、動物病院が代行してくれます。
【予防注射】
1年に1回、愛犬に狂犬病の予防注射を受けさせましょう。通常、4月1日から6月30日までに接種することになっています。令和3年度は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止にかかわるやむを得ない事情がある場合には、6月30日を過ぎて令和3年12月31日までに接種した場合には法定期間に接種したとみなされることとなっています。
【鑑札と注射済票の装着】
愛犬の首輪やハーネス等に鑑札と注射済票を装着しましょう。
《参考》
厚生労働省 狂犬病についてのページ
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
2. 動物の愛護及び管理に関する法律
一般的には「動物虐待の禁止」や「動物取扱業者の規制」が目的であるとして広く認知されているようですが、この法律には「飼い主としての責任の徹底」なども盛り込まれています。略称は動物愛護管理法です。動物愛護法と呼ばれることもあります。略称の方が馴染みがあるかもしれませんが、ぜひ正しく覚えてほしいと思います。この法律には業者に関わるルールや行政の在り方などについても含まれている中、一般飼い主については以下のようなことが書かれています。
- 飼育する動物の習性等を正しく理解すること
- 最期のときまで責任を持ってお世話をすること
- 近隣に対し、糞尿や鳴き声などによって危害や迷惑をかけないこと
- むやみに繁殖させないようにすること
- 動物による感染症について正しい知識を持つこと
- 所有者(飼い主)を明確にすること(自治体への登録やマイクロチップの装着など)
《参考》
環境省 動物の愛護と管理についてのページ
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/index.html
3.犬の飼育に必要な生涯費用
一般社団法人ペットフード協会による調査によると、アンケート調査や犬の平均寿命から算出した犬1頭にかかる生涯費用は200万円ほどであるとされています。(https://petfood.or.jp/data/index.html)
この費用には一生涯にかかる食費・医療費(病気の際の治療費の他、健康でも狂犬病の予防注射、混合ワクチンの接種、フィラリア症の予防薬などが必要となります)・管理費(首輪・ハーネス・リードなど)等が含まれています。ケガや病気をすればより高額な費用が必要となります。
毎月かかる費用は犬種や個体によって異なります。しかし、最低限持つ必要があるグッズや健康でも必ず必要な狂犬病の予防注射や混合ワクチンの接種、フィラリア症の予防薬の投与など、どんな犬を飼うにしてもかかる費用があります。それらの費用は大抵、犬が大きければ大きくなります。またこれらの最低限必要な費用の他に、ドッグランに連れて行ったりペットホテルに預けたり洋服を着せたければ、さらに費用はかかります。フードにこだわりがあれば食費も増えることでしょう。
最低限かかる生涯費用はある程度の予測ができますし、何の病気もなく動物病院に行くのは予防医療を受ける時だけで済む、という犬もあまりいないでしょう。犬を飼う場合には、自分自身の経済状況と合わせて「生涯、犬の飼い主としての責任を果たすことができるか」ということを考えることが不可欠となります。
4.介助や介護が必要になるということ
犬はわずか1年で成犬になります。子犬である期間は数か月ほどしかありません。7歳を過ぎればシニア犬です。10歳を過ぎる頃からは老化によって体の機能が低下し始めます。体調を崩しやすくなりますし、病気にもかかりやすくなります。付きっきりの介助が必要になることがあります。
予防医療の徹底やフードの質が向上したことなどによって犬も長生きする時代です。寝たきりの犬の介護が必要になる可能性も少なからずあります。高齢の犬には認知症などによって徘徊や夜鳴きなどがみられることがよくあります。
犬の介助や介護には飼い主としての精神力と経済力が必要です。体重が20kgを超える犬であれば飼い主の体力も必要です。
犬もいつまでも元気に走り回っているわけではありません。加齢とともに起こる体の変化、老犬の病気に関する知識、介助や介護に関する知識を事前に得ておくことで犬の飼い主に相応しいかどうか判断することができます。愛犬の将来の幸せのためにも必要なことです。
まとめ
犬の飼い主が知っておくことには、しつけや病気についての知識以外に次のようなものがあります。
- 狂犬病予防法
- 動物の愛護及び管理に関する法律
- 犬の飼育に必要な生涯費用
- 介助や介護が必要になるということ
知らずにいると愛犬と自分を不幸にします。愛犬を失ってしまうこともあります。ぜひ犬を飼う前に知ってほしいです。犬を飼ってから得ても遅くない知識です。ぜひ一緒に学びましょう。