犬と音楽に関する幾つかの研究結果
音楽好きな飼い主さんであれば、愛犬と一緒に自分の好きな音楽を楽しめたら楽しいと考えるのは当然のことでしょう。音楽が犬に与える影響に関する研究をご紹介します。
クラシックとヘビメタの効果
2012年のコロラド州立大学による研究です。犬小屋に入れた117匹の犬に音楽を聞かせて行動を観察しました。活動レベルや吠え声、身震いなどの観察です。
クラシック音楽を聞かせた場合はよく眠りリラックスしたのに対し、ヘビメタを聞かせた場合は神経質になっている証拠の身震いが増えました。
もちろん好みがあり全員が同じ反応をする訳ではありませんが、一般的には、クラシックは人に対して動揺を抑え、睡眠を促進し、気分の改善やストレス・不安を軽減する効果があり、ヘビメタは不安を増長するといわれており、今回の研究結果から、犬と人が音楽から受ける影響はとてもよく似ていることが分かりました。
音楽ジャンル別の効果
次にご紹介するのは、スコットランドのSPCA(動物虐待防止協会)とグラスゴー大学による実験です。
シェルターで保護されている犬を、「音楽を聞かせないグループ」と「クラシックを聞かせるグループ」に分け、2週間に渡り心拍数や唾液などの生理的変化、行動の変化を記録た結果、クラシックを聴いていたグループの方が、優位にストレスレベルが低下しました。
次に、クラシック、ソフトロック、モータウン、ポップス、レゲエという5つのジャンルの音楽を聞かせた結果、どのジャンルの音楽でも落ち着きましたが、特にソフトロックとレゲエの効果が大きいことが分かりました。
朗読の効果
イギリスのハートプリー大学では、クラシック、ポップス、犬のための音楽、朗読などのオーディオブックの5つを聞かせた結果、オーディオブックのグループが最も落ち着いていました。
このことから、飼い主さんによる話しかけが、愛犬を十分にリラックスさせられることが分かります。
犬の音楽の捉え方
犬は、音楽を音楽としてではなく、音として感じています。しかし、先にご紹介した研究報告を見ると、音楽には犬を落ち着かせたり不安にさせる効果があると考えられます。
もちろん、人と同様に犬にも個体毎の好みがあるでしょうし、過去の経験に基づいた感覚もあるため、必ずしも犬のために作られた音楽が犬に良い影響だけをもたらすとはいえないでしょう。
しかし、α波のように、犬に対してヒーリング効果を期待できる波長があると考えても良さそうです。また、犬を落ち着かせるには犬の心臓の鼓動が効果的だともいわれています。
そして、犬は人と共感できる動物ですので、音楽を聴いて飼い主さんがリラックスしていれば犬もリラックスし、飼い主さんが楽しんでいれば犬も楽しめるとも考えられています。
こういったことを踏まえれば、飼い主さんが愛犬と一緒に音楽を楽しむことは十分に可能だといえるでしょう。
愛犬と一緒に音楽を楽しむ際の注意点4つ
1.音量
犬は、人の4倍離れた場所の音を聞くことができることが分かっています。音の大きさは距離の二乗に反比例するため、犬は人の16倍弱い音量も識別できる聴力だという訳です。そのため、犬と一緒に音楽を楽しむ場合は、飼い主さんではなく愛犬に合わせ、小さめの音量で聴くようにしましょう。
2.愛犬の好みを把握すること
飼い主さんの好きなジャンルを優先し過ぎず、愛犬の好むジャンルを見つけてあげましょう。そのためには、音楽を聴いている時の愛犬の様子をよく観察することが大切です。先にご紹介したソフトロックやレゲエ、クラシックなどのジャンルに良い反応を示してくれるかもしれません。
3.テンポ
愛犬の好みのジャンルだけではなく、テンポについても考慮しましょう。犬の胸に耳を当てることで、心音を聞くことができます。リラックスさせたい場合は犬の心拍数に近いテンポの曲を選び、一緒に楽しみたい場合はそれよりも少し早めのテンポの曲が合うかもしれません。
4.共感できる音楽であること
犬が音楽を聴いてリラックスしたり楽しくなったりするためには、音楽だけではなく飼い主さんとの共感が大切です。一緒に音楽を聴いて、飼い主さんもリラックスしたり楽しめたりする音楽を選び、愛犬が不安になったり驚いたりするような曲は選ばないようにしましょう。
まとめ
いくつかの研究結果から、愛犬との暮らしを豊かにするための道具として、音楽を利用できそうなことが分かりました。音楽好きな飼い主さんは、ぜひ試してみてください。
普段から一緒に音楽を楽しむ習慣をつけておくと、犬を留守番させるとか、長距離ドライブに連れて行く、雷や花火の音に怯えている時などに、音楽を使って犬の気分を落ち着かせることができるようになるでしょう。