犬がヒートショックを起こしやすい状況
人間と犬のヒートショックの違い
気温の大きな変化が血圧の急激な変化を引き起こし、それによって心臓や血管に大きな負担がかかるという、ヒートショックが起きるメカニズムそのものは人間も犬も変わりありません。けれど、ヒートショックが起きるタイミングは、犬と人では大きく状況が異なります。
人間の場合、最もヒートショックが起きるのは浴室やトイレ、洗面所など暖かい場所から室温が急激に低くなる形で温度差がある場所です。それに対して、犬が最もヒートショックを起こしやすいタイミングは、寒い外から暖かい室内へ帰ってきて、自分のベッドなどで一息ついたときです。
犬と人間とではトイレの仕方や入浴の有無などの生活習慣が違うことと、犬には心筋梗塞のような虚血性心疾患と呼ばれる心臓の疾患がほとんど見られないために、このような違いが起きます。
心筋梗塞は虚血性心疾患で、心臓に十分血がいきわたっていない状態で、犬がヒートショックによって起こす心疾患は、うっ血性心不全です。虚血性心疾患とは逆に、心臓が弱って十分な量の血液を送れず、心臓の中に血がたまってしまうことを言います。いずれにせよ、心臓がダメージを受けていることに変わりありません。
ですから「犬は人間用のトイレには行かないから大丈夫」とか「犬は人間の浴室には入らないからヒートショックの心配はない」と油断してはいけません。人間と犬とでは、ヒートショックによって起こる症状は違うこと、ヒートショックが起きるタイミングも違うということをしっかりと覚えておきましょう。
ヒートショックが起きやすい犬の特徴
- シニア期の犬
- 心臓や呼吸器に疾患を持っている犬
- 病中病後の犬
犬がヒートショックを起こしているときの症状
- 下痢、嘔吐
- 呼吸異常
- 脈拍、心拍数の異常
犬がヒートショックを起こしているとき対処法3つ
ヒートショックを起こしているときの応急処置は不可能?
飼い主さんが獣看護師さんや獣医さんなら、適切に心臓マッサージなどを行えるでしょうが、獣医学に関して全く知識も経験もない人間が冷静にそういった治療行為を確実に行うのはとても難しいことです。
もし、愛犬がヒートショックを起こしたら、愛犬を不安にさせないように落ち着いて行動し、まず動物病院に連絡し状況を説明してください。その後は指示に従い、できる限り早く獣医さんの診察を受けてください。
最大の対処法その1:ヒートショックが起きないようにする
犬にとっては、外気と室内の温度差が大きければ大きいほど心臓への負担が大きくなり、ヒートショックが起きるリスクも高くなります。ですので、できれば散歩に出る際、部屋の暖房を切り、室温を下げていきましょう。
もし、ほかの家族が家の中にいて室内の温度を下げられないのであれば、散歩から帰ってきた後、玄関など外気温に近い場所でしばらく心臓の動きをクールダウンさせます。
また、寒さを感じると心臓が大きく強く動こうとするので、心臓の負担を軽減するよう、コートやダウンジャケットなどの防寒着を着せて寒さをしのぐのも効果的です。
それから、太陽光を浴びれば、交感神経が刺激されて、体の代謝もよくなります。ですから、気温も高く、できれば早朝や深夜の散歩よりも、愛犬の体にかかる負担を軽くするためにも、少しでも気温が高く太陽が出ている日中に散歩に行くようにしましょう。
最大の対処法その2:普段から、愛犬の体調に気を配る
歯茎の色、呼吸音、心拍音数、心臓が拍動するリズムなど普段、元気に穏やかに過ごしているときの状態を把握しておきましょう。例えば、歯茎の色や舌がきれいなピンク色をしていたら、血行の状態がよく、貧血などが原因で体調を崩していれば、歯茎が白っぽくなっていたり、紫色になっていたりするなどの変化に気づけば、愛犬の体調の異変に早く対応することができます。
最大の対処法その3:ヒートショックが起きやすいタイミングを知っておく
散歩の前後、シャンプーの後などが要注意です。
まとめ
人間は、言葉や表情に出して体の不調を訴えることができます。けれども、犬は言葉で自分の不調を私たち飼い主に訴えることはできません。犬のヒートショックの一番恐ろしいのは、飼い主さんの気が付かない間に昼寝をしているようにひっそりと亡くなっているケースが多いことです。
年老いて、少しずつ食欲もなくなり、高齢で弱って、静かに旅立つのを見送るのではあれば、飼い主さんも心の準備ができるでしょう。
けれども、直前まで元気に一緒に散歩を楽しんでいたのに、その日のうちに愛犬が冷たくなっていた…など、あまりにも哀しすぎます。飼い主さんの気配りで愛犬の命を守れるのなら、しっかりとヒートショックの予防をし、愛犬の健康状態に常に気を配るように心がけましょう。