1.おやつを盗られたくない
多頭飼育していたり、十分に食事を食べられなかった経験があったり、人間がふざけて犬が喜んで食べていたおやつを取り上げてからかったり、と言った経験から「自分のものは自分だけのもの!誰にも盗られたくない!」という感情から、おやつを隠しながら食べていると考えられます。
2.おやつを食べるところを見られたくない
「本能」に近い感覚で、「何かを食べている姿を見せたくない」という心理が働いていることも考えられます。というのは、犬はかつて集団で生活し、それぞれの役割に応じて狩りをし、その労働に見合った食事を群れのリーダーから分配されて食べていました。
当然、狩りの成果に深く関わった力のある犬には多くの食事が与えられ、活躍できない役回りしか与えられない犬には、それ相当の量の食事しか食べられませんでした。十分に餌が捕食できれば、それでも空腹は満たされていたでしょうが、餌が不足してくると、当然仲間内でも力が拮抗している者同士で食事の奪い合いが起きます。
そんな習性が、犬の本能の中に未だにこびりついているため、同じような経験をした犬は、生まれた時からずっと誰とも競争をしたことがなく、十分に食事を与えられてきた犬と違って、時により強く「食べている様子に気が付かれたら、おやつを盗られる!だから、食べている様子を見られないようにしなきゃ!」と考え、隠れながら食べているのではないでしょうか?
犬がおやつを隠すことで起きる問題とは?
飼い主さんを信頼しない
飼い主さんや一緒に暮らしている家族を信頼していないのなら、ただ「おやつを隠れながら食べる」という行動以外にも、家族に対して自分の要求を通すために大声で吠えたてたり、威嚇気に入らないことがあったら牙を剥いて威嚇したりといった問題行動が現れることがあります。
胃腸、気管に負担がかかる
慌てて食べるということは、ほぼ丸のみです。豚の軟骨や牛の骨、ひづめなど固いものを慌てて飲み込んだら、喉や食道、胃に傷がつくかも知れません。あるいは、喉に詰まってむせたり、吐き戻したりしてしまうこともあります。若いうちならともかく、シニア期に差し掛かると誤嚥性肺炎の原因にもなります。
おやつを隠すために起きる問題の改善策
愛犬との信頼関係を築く
多頭飼いではなく、一匹しか飼育していないにも関わらず、おやつを隠して食べようとするのであれば、飼い主さんにも家族にも心を許していないと考えられます。
一朝一夕では改善できないかも知れませんが、散歩、食事、排せつ、躾などのトレーニングをしながら、常に優しい声をかけ、家族のだれ一人として敵はいないことや、誰も愛犬のおやつを奪わないことなどを愛犬の記憶に刻んでいきましょう。
「おかわり」を与える
おやつや食事を食べているとき、もうそろそろ食べ終わるかな…?というようなタイミングで「おかわりあげるね」と声をかけて、素早く「おかわり」「追加」を与えます。飼い主さんはおやつを取り上げることなく、むしろ「もう少し食べたいな」と思っているタイミングで「おかわり」をくれる、と犬に理解させるのです。
そうすれば、飼い主さんの目の前でおやつを食べて、食べ終わるころにもう少し「おかわり」をくれる、と犬が覚えれば、わざわざ飼い主さんから隠れるようにしておやつを食べることはなくなるでしょう。
静観する
多頭飼いをしている場合や、野良で放浪経験があったり、十分に食事が食べられなかったりした経験がある犬の場合、「自分の食べ物を奪われたくない」「好きなものを食べているときは邪魔されたくない」という感情が消えるには時間がかかります。
そんなときは、無理に対処せず、飼い主さんは「側にいるのが当たり前」のような風情で、優しく穏やかに愛犬の側に寄り添って、静観していてください。
「落ち着いて食べられる」「誰も奪いに来ない」と理解し、常に飼い主さんが側にいて犬のおやつに関心を示さないことを犬が自分で理解するまで、そっと見守りましょう。
まとめ
人間にとっては、「どうしてそんなことをするのだろう?」と不思議に思うような犬の行動には、必ず理由があります。案外、犬の気持ちになって考えると、その理由に思い当たるかも知れません。
「食べ切れなかったおやつを隠す」のではなく、「飼い主さんからもおやつを隠しながら食べる」という行動は、家族に対する不信感の表れだとすれば、ただ、おやつを隠しながら食べるだけでなく、家族に対して威圧的であったり、飼い主さんの指示を守らなかったりといった問題行動も同時に顕れていませんか?
飼い主さんが疑問や問題だと思う愛犬の不思議な行動には、愛犬の様々な心理が働いています。犬も人間も「家族」という集団の中で生きていく動物です。
全く違う環境で育った他人同士が夫婦となり、家族として一緒に暮らすためにお互いを理解しあおうと努力するのと同じで、愛犬を家族の一員として迎え入れたのなら、日頃から、愛犬の行動をよく観察し、愛犬の心の中をくみ取って、理解できるように努めましょう。