犬の嗅覚
人は五感の内、約8割を視覚に頼っているといわれています。それに比べ、犬の五感の比率は高い方から嗅覚、聴覚、視覚、味覚、触覚の順となっており、嗅覚が4割、聴覚が3割、視覚が1割程度だといわれています。
このように、人と犬では感じ方がだいぶ異なります。特筆すべきは、犬は個別のにおいを脳でイメージのように感じているという点です。人は複数のにおいが混じっていると、個々のにおいを嗅ぎ分ける事が難しいですが、犬は複数の色のボールがたくさん集まっているように把握しているため、嗅ぎ分けられるというのです。
このように元々優れた嗅覚を持っている犬ですが、訓練によってさらに伸ばす事ができ、この嗅覚を活かして人の社会の中で仕事をしている犬もたくさんいます。
嗅覚を活かした犬の仕事
嗅覚を活かして仕事をしている犬の仕事には、下記のような種類が挙げられます。
- 麻薬探知犬:違法薬物
- 動植物検疫探知犬:検疫検査を要する肉類やフルーツ等
- 足跡追究犬:逃亡者、行方不明者等
- 爆発物探知犬:爆発物
- 放火探知犬:火災現場における放火につながる可燃物
- 癌探知犬:疾患に関係する揮発性有機化合物等
- 食品類探知犬:トリュフ、害虫被害を受けた農作物等
- 害虫危険生物探知犬:シロアリ、毒蛇等
ノーズワークとは
犬の嗅覚が優れていることを再認識していただけたと思いますが、この嗅覚を使って愛犬と飼い主さんが楽しめるドッグスポーツ「ノーズワーク」が日本でも少しずつ認知されてきています。
ノーズワークとは、複数の箱を用意して床に散らばせておき、犬に見えないように箱の中におやつを入れて、それを嗅覚で探させる遊びです。箱の向きを変えたり、おやつを隠す容器を箱以外の物に変えたりと、慣れてきたら少しずつアレンジを加えることもできます。
アメリカの保護施設で保護犬達の健康管理の一環として始まり、それが家庭犬にも広まって2006年にドッグスポーツとなりました。嗅覚が使えれば、老犬や障害を持つ犬にもできるゲームです。
日本では2015年にノーズワークファンフレンズという有志のトレーナーが設立した団体があり、国内での普及を目指して活動中です。
ノーズワークは、嗅覚が使えれば基本的にはどんな犬とでもできるのが特徴です。他にも、下記のようなメリットがあるといわれています。
犬にとってのメリット
- 心身ともに充実感を得られ、エネルギーを発散できる
- 自力で探し当てる事で達成感を得、自信を持てる
- 嗅覚をさらに向上できる
- 老犬の認知症予防効果が期待できる
- 飼い主との絆を築ける
飼い主さんにとってのメリット
- ゲーム中の愛犬の観察で今まで気づかなかった能力や思考方法に気づける
- 愛犬の小さなしぐさや心の動きに気づける
- 愛犬との絆を築ける
ルール・注意事項
飼い主が指示を出してはいけない
飼い主が犬に指示を出すとか正解に誘導することは許されません。競技スタートの合図を出す程度です。あくまでも犬が主体となって行う遊びだからこそ、犬は自信を持てるのです。
専用のおやつを使う
おやつは、常に同じもの1種類を使います。混乱を防ぐために探すにおいを統一するためです。また、ノーズワーク以外ではこのおやつを与えないようにし、家の中で勝手におやつを探して食べてしまうということを防ぎます。
フードガードは参加不可
食事中に食器に手を入れると唸ったり攻撃したりするフードガードの犬は、参加できません。おやつを使うので危険なためです。事前に改善してから参加させましょう。
ノーズワークの競技
おやつを使ったフードステージの他に、オーダー(臭気)ステージもあります。これは、1/80に薄めたアロマオイルを染み込ませた物の入った小さなケースを探すゲームです。
隠す方法も、コンテナ・サーチ(箱や入れ物を使って隠す)、インテリア・サーチ(屋内の家具等に隠す)、エクステリア・サーチ(屋外の建物等に隠す)、ヴィークル・サーチ(車のホイールなどの外装に隠す)といったものがあります。
フードステージからオーダーステージへステップアップする際には、おやつとアロマオイルを一緒に置いて、2つのにおいをペアリングさせて遊びます。そうすると犬が自らアロマオイルを探すことを覚えてくれます。
まとめ
ノーズワークは犬の得意な嗅覚を使った遊びで、犬が主体的に遊ぶためしつけ途中でも一緒に遊ぶ事ができます。また、嗅覚で探索中の愛犬をよく観察する事で、飼い主さんの愛犬への理解が一層深まります。
最初のハードルが高くないので、さまざまな飼い主さんにおすすめできるスポーツだと言えるでしょう。興味のある方は、「ノーズワーク」で検索してみてください。動画やノーズワークファンフレンズなどの情報が出てきますので、愛犬と一緒にぜひチャレンジしてみてください。