ヒトとイヌが見つめ合ってきた歴史
ヒトとイヌは「目線」で通じ合ってきた
人間と犬が一緒に生きるようになったのは1万5千年も前からと言われています。ヒトとイヌが信頼関係を築けるようになれたのは、この長い年月の中で良好なコミュニケーションを行えてきたためです。
犬は言葉の代わりに表情や仕草で気持ちや意思を人間に伝え、人間の指示を理解できるようになりました。そこで重要になったのは「目と目を合わせること」です。動物の世界では相手と目を見つめ合うのは「敵意」の意味を持つことが多いのですが、ヒトとイヌの場合は「愛着行動」であるというところが特徴です。
犬は自力で解決できない時に人間を見る
犬にとって人間を見つめる行為は愛着行動であると共に「要求」の意味を持つこともあります。犬は自分の力ではどうしようもないことが起こると、まるでお伺いを立てるかのように人間の方を見るということが分かっています。これは犬の亜種であるオオカミには見られない、より人間と密接に関わるようになった犬ならではの行動です。
飼い主の食事中に愛犬が見つめてくる理由
1.食事に強い興味を持っているから
犬の舌の味を感じる細胞の数は、人間の5分の1程度しかないと言われています。しかし犬の嗅覚は、匂いの種類によってはなんと人間の1億倍まで感知できると言われています。そのため犬が「おいしそう」と感じる要因は、実際の味よりも「匂い」であると考えられます。
人間の食べ物の方は油や脂肪分、調味料などが使用されており温かい食事も多いので、水分量が低いドライフードよりも香りを強く感じるでしょう。そのため飼い主さんが食卓にごはんを並べると「おいしそう!」と感じて興味津々になるため、並ぶ食事や飼い主さんの食べる姿に注目してしまうと考えられます。
2.自分も食べたいという要求
犬は野生時代の名残りによって「いつ食べられるか分からないから、食べられるうちに食べておこう」という意識が強いです。満腹感も人間よりも感じにくいため、あればあるだけ食べてしまう子も少なくありません。
ましてや人間のごはんは犬にとってとても魅力的であるため「自分も食べたい!」というアピールを込めて食事中の飼い主さんをジッと見つめることも多くあります。「ねぇ、こんなに食べたいの、気付いて!」そんな声が聞こえてきそうなほど、真剣なまなざしで見つめる子もいますね。
3.すかさず「おこぼれ」をキャッチするため
飼い主さんがポロッとこぼしてしまったものを運よく食べることができた経験がある場合、特に虎視眈々と「おこぼれ」を狙っている場合も考えられます。
わんこに真相を聞いてみないと分かりませんが「テーブルに手を出すと怒られるけど、落っこちてこないかなぁ…」と飼い主さんの箸の運びを見つめているような様子のことがあります。中には飼い主さんの肘の辺りや膝に「あご乗せ」してうるっと見つめてくるわんちゃんもいますね!
まとめ
大型犬のわんちゃん宅に遊びに行ったとき、私が出していただいたお菓子を食べていてもわんちゃんはお座りして落ち着いていたので「おりこうだなぁ」と思ったのですが、よく見るとお口から大量のよだれが滴っていたのを見てけなげさを感じたことを覚えています。
犬は嗅覚が鋭いので、私たちが食べているものが特別においしそうに感じるのでしょう。食べているものに興味を惹かれるのとともに、食べている人の方を見つめることで「ぜひ自分も食べたいです」というアピールをしていることもありますよね。
ヒトとイヌは太古の昔から見つめ合うことで心を通じ合わせてきましたので、犬が見つめる時には「好きだ」という気持ちのほかに「要求のアピール」の場合もあります。
そしてポロッとテーブルの下に落ちたものがあれば、すかざずキャッチしたいなと食事を見つめていることも考えられます。タマネギやアボカドなど犬が食べると危険性が高い食品もありますので、愛犬のつまみ食いには要注意ですね。