薬食同源
中国に古くからある考え方に『薬食同源』というものがあります。体に良い食材を日常的に食べて健康を維持すれば特に薬などは必要としないというものです。
必ずしも食事だけが原因で病気が発症するわけではありませんが、日常的な食事が健康の基盤を作ることに役立つという考え方に異論のある人は少ないでしょう。これは、犬も同じです。
犬に与えてはいけない食材は複数ありますが、犬の食事の注意点はそれだけではありません。今回は、肥満、ライフステージ、消化器症状の3つの観点から犬の食事の注意点を整理します。
1. 肥満
適正体重から15%以上オーバーしていると肥満です。飼い犬の24〜44%が肥満だという報告もあるほど、肥満は現代の犬に多く見られます。
肥満が犬に与える主な影響
1)運動器系疾患のリスク
体の構造に対して支える体重が多過ぎ、骨や関節への負担が大きいためリスクが高まります。
2)心臓血管系疾患のリスク
肥満だと高血圧になりやすいです。高血圧は心臓や腎臓に負担をかけるためリスクが高まります。
3)呼吸困難
肥満の犬は必要以上に体が大きく酸素の要求量が多いため、特に運動後などは呼吸困難に陥ることがあります。
4)手術時のリスク
麻酔薬は脂肪組織に吸収されるためより多くの麻酔薬を必要とし、麻酔薬の代謝が悪く、厚い脂肪層が手術の邪魔をし、傷口も治りづらい等、手術のリスクが高まります。
犬が食べ過ぎてしまう原因は?
肥満の原因はとても単純で、消費するエネルギーよりも多くのエネルギー量を摂取するからです。つまり食べ過ぎです。犬が食べ過ぎてしまう主な原因には、下記の3つがあります。
1)避妊・去勢の影響
避妊・去勢をすると発情期の行動が減り消費エネルギーが減るにも関わらず、それを自覚していない犬は今まで通りの食事をするため、カロリー消費量より摂取カロリーが多くなってしまいます。
2)食事内容の影響
肥満の犬は、嗜好性にはとても敏感ですが満腹感にはとても鈍いと言われています。脂肪は嗜好性を高め、カロリーが高く、かつ効率よく利用されるので注意が必要です。
3)周囲との関係の影響
多頭飼いの犬は、他の犬に餌を取られまいとして食べ過ぎる傾向があります。食事中は干渉できないようにする配慮が必要です。また、飼い主に気に入られたくて与えられるだけ食べてしまいがちです。
特に問題なのは、3にあたる『飼い主と飼い犬との関係』です。飼い主は食べ物をあげると犬が喜ぶと思い、飼い犬は食べると飼い主が喜ぶと思うというサイクルです。心当たりがある飼い主さんは、食べ物以外でも愛犬との絆を築けるよう、今一度見直してみてください。
実はご家族が肥満や中高齢である場合、飼い犬の肥満率も高くなる傾向があります。食べ物をもらう機会が必要以上に多かったり、運動量が少なかったりするからだと考えられています。この点も、飼い主さんの自覚により改善が可能です。
2. ライフステージに即した栄養
犬のライフステージに合わせて必要な栄養素のバランスやエネルギー量が異なります。それぞれのステージに適した食事が、愛犬の健康維持にはとても重要です。
ライフステージは下記のように考え、それぞれのステージに必要な栄養バランスとエネルギー量を意識したフードを選びましょう。手作り食の場合は、特に意識する必要があります。
- 成長期:授乳期、離乳期、発育期
- 維持期:成犬
- 老齢期:老犬
- 妊娠期:初期、末期
- 哺乳期:必要なエネルギー量は授乳中の子犬の数による
3. 消化器症状
最後は消化器症状です。消化器症状とは、吐出や嘔吐、下痢のことです。いずれの場合も、原因が食事か病気かを見極めることが重要です。
吐出
吐出とは、食べた物が胃に届く前に吐き戻すことです。食べた直後や数秒後に戻し、吐いた物は未消化の状態です。健康上の問題の場合は、咽頭や食道に異物や炎症がある可能性が高いです。
嘔吐
嘔吐とは、食べた物が胃に届いた後に吐き戻すことです。食べて数分または数時間後に戻し、吐いた物は消化中の状態です。健康上の問題の場合は、消化管に障害がある可能性が高いです。
食事に問題がある場合に多いのは、大量のドライフードを食べた時や食べ物が合わない場合や食中毒です。1回の給餌量やフードの保管状態などに注意を払いましょう。
下痢
下痢は、軟便から水様便までさまざまです。食事に問題がある場合に多いのは、食べ過ぎや食中毒です。長引くと体力が落ちてしまうので、動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
愛犬の健康を維持するためには、エネルギー量と栄養バランスの双方に気を使う必要があります。また肥満予防には、エネルギー量と栄養バランスの他に、適正な運動も大切です。
愛犬の状態やライフステージに即した適正な食事を心掛け、愛犬の健康維持を図りましょう。