犬と人との関係
2015年に日本の研究グループによって、犬と人は種の壁をこえて愛情という絆を結べることが判明しました。それは、「アイコンタクト」を中心に、「話し掛け」「触れ合い」により母親と赤ん坊が親子の絆を結ぶ過程と非常によく似た工程を経て結ばれます。
犬と共通の祖先種を持つオオカミ、それも幼少期から人と一緒に生活しているオオカミとその飼い主との間でも同様の実験をしましたが、人とオオカミの間にはこの絆を結ぶことができませんでした。そもそも、オオカミは普段生活を共にしている飼い主の顔を直接見ないことも分かりました。
このように、犬は進化の過程で異種であるにもかかわらず人と母子関係のような絆を結ぶ能力を獲得した数少ない動物なのですが、犬にも好きな人、苦手な人がいるのは否めない現実です。犬と良い関係を結ぶために気をつけるべきことについて、整理しました。
好きな人と接する時の犬の様子
人同士のコミュニケーションと同様に、犬と人との間にも相性があります。基本的には、犬は一緒に居て楽しいとか嬉しい、安心できるといった気持ちにさせてくれる人を好み、一緒にいたがります。
少し具体化すると、良いことをすると笑顔と優しい言葉で心の底から褒めてくれる、ダメなことをしても注意はされても怖いことや痛いことはしない、きちんとご飯をくれる、一緒に散歩に行ったり遊んだりしてくれるといったような人とは、犬も一緒にいたいと思ってくれます。
そして犬は、好きな人に対してはリラックスした表情で自分から近寄ってきたり撫でてもらおうとしたり、一緒に遊ぼうとしたり、お腹などの敵に襲われたくないような場所も見せたり触らせたりしてくれます。そして、常に飼い主さんとアイコンタクトを取ろうとします。
苦手な人と接する時の犬の様子
犬は一般的に、一緒にいると怖くなったり緊張したりして、落ち着けない人とは一緒にいたいとは思いません。
少し具体化すると、褒めてくれずに無視ばかりする人、大声で乱暴な口調の人、行動が乱暴な人、きちんとご飯をくれない人、一緒に散歩したり遊んだりしてくれない人、突然何をするか分からない人とは、一緒にいることを嫌がります。
苦手な人と一緒にいるときの犬は、鼻を何度も舐める、下を向いたりそっぽを向いたり視線を逸らしたりする、体を震わせる、呼吸が荒くなる等の行動を見せることが多いです。何より、視線を逸らしてしまうので、絆を結びたくてもアイコンタクトをとることすらできないのです。
犬と良い関係を築くために気をつけること
1.穏やかな話し方
聴覚が優れている犬に恐怖心や不安感を抱かせないようにするためには、話し方に気を使うと効果があります。声の高さは中くらいよりやや高めが良いようですが、音程を変えるのは難しいので、大声を出さないように気をつけましょう。
そして、穏やかで優しい語り口を心がけましょう。犬は、飼い主さんの声の調子やイントネーションなどできちんと理解できますので、注意する時も大きい声で叱りつける必要はありません。恐怖心を煽るだけなので控えましょう。
2.落ち着いた態度
犬は、予測できない行動をされると恐怖や不安を覚えます。犬に近づくときには静かにゆっくりと近づき、体を触る前に優しく声をかけてください。常に落ち着いた態度で犬に接することが、愛犬を怖がらせないコツです。
小さなお子さんが犬と仲良くなりたいのに逃げられてしまうのは、突然抱きつくなどの予測不能な行動が原因かもしれません。大人でも、仲良くなりたい気持ちが先走り、いきなり撫でると犬から嫌がられてしまうことがあるので気をつけましょう。
3.犬の立場を考えること
人とのコミュニケーションでも、常に「自分が、自分が」という方は敬遠されがちだと思います。犬も同じで、「仲良くなりたい」気持ちが先走ったり、自分の言いたいことやしたいことしか考えない飼い主さんは、犬から苦手だと思われてしまいがちです。
自分が愛犬の立場だったらどう思うか、されて嬉しいこと、嫌なことを考えて行動できる人が、犬からも一緒にいたいと思ってもらえるでしょう。犬と人ではモノの感じ方が異なる部分もありますので、犬の習性を正しく理解し、愛犬の立場で考えてあげられるようになりましょう。
まとめ
一緒に暮らしている愛犬は、人と犬という種の違いはありますが同じ家族です。しかも、犬は基本的にはいつまでも巣立つことがなく、飼い主さんにとっては永遠に我が子と同じ存在です。
終生愛犬と一緒に幸せに暮らしていくためには、飼い主さんの気持ちだけではなく、愛犬も飼い主さんと一緒にいたいと思えることが重要です。そのためにも、ぜひ愛犬と良い関係を築き、愛情という絆で結ばれるように努力してください。