小型犬の定義
私たちは、普段から小・中・大型犬という体のサイズに基づいた分類を使いますが、実は明確な分類基準はありません。しかし一般的には、体重が10kg未満の犬種を小型犬、25kg未満の犬種を中型犬、25kg以上の犬種を大型犬と言うことが多いので、今回もそれに準じます。
品種は同じ犬種同士を交配させるので遺伝的な多様性が狭められ、特定の疾患を好発しやすい犬種が存在していることは、よく知られています。小型犬の場合はそれに加えて、体が小さいことにも注意すべき点が出て来ます。
近年は室内飼いが当たり前となって来ており、小型犬の飼育頭数が増加傾向にあることから、小型犬に多く発症しやすい代表的な病気を選び、注意点等について整理しました。
小型犬に多い病気5つ
1. 膝蓋骨脱臼
特に注意を要する犬種
チワワ、トイプードル、パピヨン、ヨークシャーテリア
症状
高い場所からの落下、足の強打などにより、関節を保護する膝の靭帯がダメージを受け、膝蓋骨がずれるという疾患です。軽症時は犬自身が足を伸ばして脱臼を治しますが、繰り返すこともあります。また、重症化すると脱臼した足を浮かせて歩くようになります。
治療・予防・対策等
症状や犬の状態等によりますが、手術による整復を行います。
小型犬は骨が細く弱いので、床を滑らないようにし、ソファなどの高い所で自由に遊ばせないように注意しましょう。
2. 僧帽弁閉鎖不全症
特に注意を要する犬種
キャバリア、マルチーズ
症状
左心房と左心室を仕切っている僧帽弁に加齢による粘液腫様変性が起きることで、正しい動作を制御できなくなる疾患です。乾いたような咳、あまり動かなくなる、疲れやすくなる、肺水腫により呼吸困難になるという症状を引き起こし、徐々に進行していく疾患です。
治療・予防・対策等
内科的治療が一般的ですが、症状の進行を抑え、緩和することが目的の治療となります。
最近は、国内でも小型犬の心臓手術を実施できる設備を有し、僧帽弁の再建技術を持つ獣医師のいる病院も出て来ましたが、まだ数も少なく手術費も高額だという状況です。
3. 水頭症
特に注意を要する犬種
チワワ、ポメラニアン、パグ、ヨークシャーテリア
症状
頭蓋内に脳脊髄液が異常に溜まってしまう疾患です。その結果、頭部拡大、前額部が突き出るといった外観になります。圧迫される脳の部位により生じる症状はさまざまです。ぼんやりする、元気がない、学習能力が低い、性格の変化などが見られた場合は動物病院で診てもらいましょう。
治療・予防・対策等
小型犬や短頭種に好発するため、遺伝的な素因があると考えられています。後天性水頭症の原因は不明です。
小型犬の場合、水頭症を思わせる脳室拡大が認められても、臨床的な症状が出ずに正常な行動をとる犬もいるため、明確な治療基準がないのが現状です。
4. レッグ・ペルテス
特に注意を要する犬種
ミニチュアピンシャー、ミニチュアシュナウザー、ウエストハイランドホワイトテリア
症状
小型犬の、若齢時(成長期)の発症が多く、後ろ足の股関節の血液循環が原因で関節内の骨の変形や壊死が起こる疾患です。なぜこのような病態が起こるかは不明とされています。足を上げたまま歩くようになったり、突然足を引きずりながら歩くようになったりという症状が見られます。
予防・対策等
ほとんどの場合、外科的治療となります。
放置すると筋肉の萎縮や足の骨の変形により歩行障害が残りますので、歩き方の変化に気付いたらすぐに動物病院に連れていきましょう。
5. 乳歯遺残
特に注意を要する犬種
ポメラニアン、トイプードル、ミニチュアダックスフンド、チワワ
症状
通常は5〜10ヵ月で乳歯は全て生え変わりますが、抜けきらずに残ったままとなるのが乳歯遺残です。小型犬は元々小さい口の中に歯がびっしりと生えるのですが、乳歯が残っていることで永久歯が生えてこなかったり歯並びが悪くなったりして、噛み合わせが悪い、歯周病の要因となるなどの悪影響を及ぼします。
予防・対策等
歯が抜け変わる時期はこまめに口の中をチェックし、抜けない乳歯がある場合は動物病院で抜いてもらいましょう。
まとめ
近年人気の小型犬ですが、特に小型犬に多い病気を正しく把握することで、愛犬の健康で快適な暮らしをよりよくサポートすることができます。
遺伝的な特性による病気は予防法がない場合が多いので、定期的な健診といった一般的な健康管理と合わせて特定の疾患も意識しながら、愛犬や飼い主さんの負担を軽減しましょう。