犬が「遊んでくれている」と思う条件とは?
飼い主さんが笑顔で楽しそうにみえること
最近の研究によって、犬は人間の喜怒哀楽を人間の表情から察することができたり、人間の体から発するニオイによって、人間の興奮度を感知したりする能力があることがわかっています。
そのうえ、飼い主さんが楽しんで出す汗のニオイと恐怖を感じて出すニオイを嗅ぎ分け、その違いによって飼い主さんや飼い主さん以外の人とのコミュニケーションの取り方に違いが生じることも実験によって明らかになりました。
つまり、飼い主さんが楽しい気分でいると、愛犬も楽しくなり、飼い主さんが緊張したり怖い思いをしたりしていると、愛犬も緊張し、犬の性格によっては飼い主さんの緊張を解そうと寄り添ったり、逆に飼い主さんが感じる以上に恐怖を感じて、飼い主さんにべったりくっついてきたりするのです。
言葉では「駄目よ!」と言っていても、飼い主さんが笑顔で楽しそうに笑っていたらそれだけで犬は「飼い主さんは何か楽しいことをしている」と思いますし、そんな状態で汗をかき、その汗のニオイを犬が嗅いだとしても、緊張を感じているようなニオイは一切、感じられないでしょう。犬が「遊んでもらっている」と勘違いするのは無理もありません。
飼い主さんの声に優しさが感じられていて、緊張感がないこと
表情やニオイで人間の意思を察知できるのなら、人間の声音から感情を読み取ることは、とても容易なことのはずです。基本的に、愛犬に何か躾をしたり、トレーニングをしたりする際はできるだけ短く明確な言葉で行い、叱るときは恐怖を感じない程度に、などいくつかのコツがあります。
もし、何かしつけを行う必要があるにも関わらず、犬が「今、飼い主さんと遊んでいる」と思うようであれば、それは叱る強さがあいまいなのか、あるいは弱すぎるということです。例を言うと「ダメよう、そんなことしちゃ…。メっよ。」など、赤ちゃんに話すような声で優しく叱っても、全く犬には意味がありません。
NGな行動をしているのに、愛犬を叱らないこと
飼い主さんが「止めさせたい」と思っていることを犬がしているなら、毅然と叱り、しっかり制止しなければいけません。犬のしつけやトレーニングは叱るばかりでは効果は薄く、「できなかったこと」を責めるのではなく、「できたこと」を褒め、犬が楽しい、嬉しいと感じることの経験値を増やすことが最も効果的と言われています。
けれども、必要に応じて本気で怒っている様子を見せ、「飼い主さんに叱られる」という経験をさせてこそ、褒められることの価値が上がります。要は、言葉でコミュニケーションが取れない分、言葉や態度で「遊び」か「トレーニング」か「制止」かを犬が理解できるように、メリハリをつけることが肝心、ということです。
犬が「遊んでくれている」と勘違いする飼い主の行動3つ
- 足を拭こうとしているのにスキンシップと勘違いされる
- 捕まえようとしているのに「追いかけっこ」と勘違いされる
- 「ダメ!」と叱っているのに喜んでいる
それぞれの対処法
足を拭こうとしているのにスキンシップと勘違いされるときの対処法
まず、「マテ」を覚えているのなら、「まて」をさせて愛犬の動きを止めます。足を拭いた後は、長い間「マテ」ができていたことを心からほめて、必要ならご褒美としておやつを与えます。
捕まえようとしているのに「追いかけっこ」と勘違いされるときの対処法
本気で遊ぶ気がないのなら、まず「まて」と毅然と声をかけ、愛犬の動きを止めます。そして、「コイ」あるいは「おいで」の指示に従えるのであれば、愛犬を呼び寄せ、その指示に従ったことを十分に褒めます。
「ダメ!」と叱っているのに喜んでいるときの対処法
人間の感情を察知する能力に長けている犬が、本気で飼い主さんが叱っているのか、自分と遊んでいるのかを理解できないはずはありません。もし、飼い主さんが「ダメ」と言って叱っているのに、喜んで飛びついてきたり愛犬に「遊んでくれている」と勘違いされたりしているのなら、飼い主さんの行動や態度を改善する必要があると言えそうです。
まず、飼い主さん自身の表情や態度が愛犬の目にどんなふうに映っているかを想像してみましょう。本当に「ダメ!」「ノー!」と愛犬を叱るとき、毅然とした態度を見せていますか?
叱るときは毅然と厳しく、低い声で短く「ダメ!」と愛犬の動きを制します。そして、その指示に愛犬が従ったら、優しく「よくできたね」と褒めてあげましょう。そうして犬に対する態度にメリハリをつければ、犬は自分がどうするべきかを理解しやすくなります。
犬が遊んでくれていると勘違いすることで起こる問題点
飼い主さんの指示に従わない
利口な犬なら意図的に飼い主さんの意思を無視するようになりますし、天真爛漫なタイプならいつまでも飼い主さんの意図を察知することができず、指示どおりに行動することができません。いずれも場合も、飼い主さんの指示に従わなくなります。
常に自分の感情で行動の優先順位を決めるようになる
人にとって「NG行動」であっても、犬がそれを理解できなければ犬自身「悪いことをしている」ということを自覚できません。
愛犬の安全や健康を守ることができなくなる
愛犬の行動を「まて」や「おいで」のコマンドを使って完全に制御できなければ、外で逸走してしまったときに呼び戻せませんし、車から降りるときなどに飛び出そうとしても、咄嗟に制止できません。また、愛犬の体をくまなく触れることができなければ、愛犬の体に怪我や疾病などの異常があっても、すぐに気づくことができません。
ですから、愛犬を愛しく大切に思うのであれば、飼い主さんに遊んでもらっているのかトレーニングか、叱責されているのかを犬が明確に判断できるように、普段から飼い主さん自身が犬が混乱しないようにメリハリのついた態度で、犬に接する必要があります。
まとめ
私たち人間も「遊び」が大好きです。子供のころのように心が自由になり、自分の好きなことだけをして時間を過ごしていると心が充実し、ストレスが解消されます。犬にとっても「遊び」はストレスの解消にもなり、好きな人と好きなことに没頭できるため、何よりも楽しい時間のはずです。
そう思えば、せっかく遊びに夢中になっていて楽しんでいるのに、急に厳しく接するのは愛犬の楽しい時間に水を差すようで気が引けるようにも思えます。
けれども、本当に愛犬から信頼され、深い愛情を得るためには、絶対にメリハリが必要です。してはいけないこと、飼い主さんの指示には絶対に従うことをないがしろにしてしまうことは、飼い主さんの責任放棄とも言えます。
愛犬と心から楽しく遊ぶためにも、愛犬から深くゆるぎない信頼関係を築くことが大切です。もしも、飼い主さんのしつけを愛犬が遊びと勘違いしているようなことが度々あるのなら、愛犬への接し方に問題があると考え、改善が必要な行動をしていないかを考えてみましょう。