犬の短期記憶と長期記憶
そもそも記憶には、短期記憶と長期記憶の大きく分けて2種類があることをご存じでしょうか。
短期記憶とは数十秒から数分間の短期間のみ保持される記憶のこと。たとえば電話番号や会員番号など、数桁の数字の羅列を一時的に記憶する場合がこれに当たります。
一方、長期記憶とは短期記憶を何度もくり返し記憶することで定着させたもので、一度憶えると数時間から一生に渡って保持され、簡単には消えないといわれています。
この短期記憶と長期記憶の概念は、人間だけでなくわんこにもあります。よくトイレの粗相やイタズラはその場で叱らないと効果がなく、後から叱っても意味がないといわれるのは、トイレの粗相やイタズラの記憶はわんこにとっては短期記憶で、すぐに忘れてしまうからです。
今回テーマになっている「過去のこと」すなわち「思い出」は、数時間以上保持されるものですから、長期記憶に当たります。2016年にハンガリーの研究チームが発表した論文によると、わんこも飼い主さんとの思い出や過去の行動を長期記憶として保持している可能性があることがわかりました。
どのくらい?犬に残る人の顔やニオイの記憶の精度
ではこのわんこの長期記憶はどのくらいの精度があるのでしょうか?最近のものまでしか憶えていないのか、数年前まで憶えているのか。ぼんやりとした記憶なのか、はっきりしているのか。これについてはさまざまな実験で検証が進められているところです。
楽しいことと関連づけた記憶は残りやすい
わんこのしつけを行う際、上手にできたらたくさん誉めることがポイントとされるのは、「こうしたら誉められた」「こうしたらおやつをもらって嬉しかった」というように、楽しいことや嬉しいことと関連づけた記憶は定着しやすいからです。
飼い主さんとお出かけをして楽しかった記憶や、遊んでもらって嬉しかった記憶は残りやすいと考えられます。
ニオイで記憶を連想する
わんこの五感の中でも嗅覚がとびきり鋭いことは周知の事実ですよね。それだけにニオイの記憶は残りやすいと考えられています。また、ニオイに関連づけられた連想記憶も残りやすいようです。「このニオイはあのときの…」といったように、わんこはニオイを元に過去を回想しているかもしれません。
視覚情報は補助的な役割
一方でわんこの視覚はあまり良いとはいえません。嗅覚で情報を得る際の補助的役割を担っている程度です。
シニア期になってもパピー期の記憶はある
「犬は一度飼ったら一生恩を忘れない」ということわざもあります。その通り、わんこはシニア期になってもパピー期の記憶をしっかり憶えている可能性が高いと考えられます。
たとえば盲導犬がシニアになって引退した後、パピー期に育てられたパピーウォーカーの家族のもとへ引き取られる場合があります。その場合でも盲導犬はパピーウォーカーの顔を一目見ればすぐに思い出してしっぽを振るといいます。この例からも、わんこは人の顔を長期間記憶していると考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回ご紹介したように、犬にも過去のことを覚えていることができるということが科学的に証明されつつあります。愛犬にはたくさんの楽しい記憶や幸せな記憶を残してあげたいですね。