①警戒や恐怖による威嚇
犬が唸る心理として、まず考えられるのが警戒心や恐怖心による威嚇をしているということです。警戒心で威嚇するのは、見知らぬ人や嫌な思いをさせられた経験のある人が対象となりそうですが、飼い主さんが相手でも威嚇をすることがあるのです。
飼い主さん自体を警戒しているというよりは、飼い主さんに「今からされること」を予測して、それに対して唸って威嚇していると考えられます。
特に多いのは爪切りやブラッシング、歯みがきなど犬が苦手に感じているケアをするときや、病院やトリミングなど犬が怖いと感じている場所に連れていかれるのがわかったときです。唸って威嚇すれば、苦手なケアや外出を回避できると考えてそのような行動に出ているのです。
②独占欲や執着心による要求
おもちゃやおやつなど、犬が大好きなものが目の前にあるときにそれを奪われまいとして飼い主さんに対して唸ることもあります。おもちゃを取られてしまうと、遊びの時間が終わってしまうということがわかっているため、そうならないように飼い主さんが手を出した際などに唸るのです。
また、ソファやベッドなどお気に入りの場所を譲りたくないという思いから、近づいてきた飼い主さんに対して唸ることもあります。
さらには、大好きな飼い主さん自体をめぐって、他の家族に対して唸るということもあります。執着心や独占欲によって唸る場合は、そのままにしてしまうとさらに悪化してしまう可能性が高いので、しっかりとしつけを行うべきタイミングだと思います。
③楽しい・うれしい気持ちで興奮している
犬が唸るのは、威嚇や攻撃のためだと考えられがちですが、必ずしもそうとは限りません。うれしくて楽しくてテンションが高まっているときなどにも唸ることがあります。そのため、飼い主さんとおもちゃで遊んでいるときや撫でてもらっているときなどに唸ることがあるのです。
そうした興奮状態にあるときの唸りは、犬が意図的に発しているのではなくどちらかというと喉から自然に漏れ出てしまっていることが多いようです。犬自身がコントロールできない部分ですし、他の理由とは違って攻撃行動などに発展することはあまりないので、そのままにしておいてもいいでしょう。
ただし、興奮状態が続くと無意識にそばにあるものを噛んでしまったり、周囲のものにぶつかって怪我をしたりすることがあるので、一度遊びを中断してクールダウンすることも必要です。
④痛みや苦痛を感じている
犬に触れたときや、寝ている犬に近づいたときに唸った場合、体に痛みや苦痛を感じていることがあります。触られたことで痛みを感じたときや、苦痛を感じていて体に触られたくないと思っているときに唸って触ることや近づくことをやめさせようとしているのです。
いつもよりも寝ている時間が長いと感じたときや、特定の場所を触ると唸る場合などは、体に異変が起きている可能性があるので、注意深く観察し、必要に応じて動物病院に相談するようにしましょう。
まとめ
犬が唸るのには、様々な理由があります。威嚇や要求のために行っている場合もあれば、テンションが上がって自然に出てしまう場合もあります。まずは、唸り行為に隠れている心理を把握することが大切です。
そして、犬が唸っているときに注意したいのが、唸りによる「成功体験」をさせないようにするということです。唸ったことで苦手なケアをされずに済んだり、大好きなおもちゃを取られたりせずに済んだという経験をすることで、唸る行為が強化されて増えてしまうことが少なくありません。
「唸れば自分の思い通りになる」という学習をしてしまうと、唸ることが増えるだけでなく、吠える・噛むなどの攻撃行動へと移行してしまうことも少なくないので、対応には十分注意しなければなりません。攻撃行動に移ってしまう前に、唸っている段階で適切な対応を行えば次第に唸りも減って改善されていくと思います。