オオカミの社会をもとにした理論
トップほど明確な階級の差がある
「飼い主よりも先に犬がごはんを食べてはいけない」というのは、オオカミの群れ社会をもとにした考え方です。オオカミの群れには明確な序列が存在し、トップの者ほど序列に厳しく、中階級以下ではほとんど階級の差がありません。
しかし研究者の中には「野生で生きるオオカミの群れに階級はなく、明確な階級があるのは限定された範囲で飼育されているオオカミだけ」という意見もあり、オオカミのタテ社会は環境によっても異なる可能性もあります。
狩りを頑張る代わりに1番に食べることができる
上位のオオカミほど優先的に獲物を食べることができるのは「偉いから」というだけでなく、上位のオオカミほど狩りで重要な役割を果たすためです。一般的には群れのトップから獲物を食べ、最下級の個体に順番が回ってくる頃にはあまり食べる部分が残っていないことも。
オオカミとイヌは大きく異なる
犬はオオカミの亜種
1993年に「イヌはオオカミの亜種」と考えられるようになりました。それまでイヌとオオカミは独立した種であると思われていましたが、遺伝子がとても近いということが研究で分かったためです。
イヌとオオカミは途中で枝分かれした種であるものの、両者の性質には大きな違いがあります。それは「人間に慣れ親しむかどうか」です。
オオカミとイヌの違い
オオカミも完全に飼育されている場合には人間に慣れることができますが、イヌのようにコマンドで従わせるのは困難であると言われています。そしてイヌはオオカミにはない「飼い主の意思をうかがう」という行動を見せることが分かっています。
野生のオオカミの場合、群れで協力して狩りをして獲物を捕らえて食べます。階級がある群れならばリーダー格のオオカミが狩りの主要な役割を果たすことから、最初に食べられるのもリーダー格です。
しかし人間に飼育されている犬はそもそも「狩り」をしません。飼い主さんが用意してくれるごはんを食べるため、飼い主と犬は同時に1つの同じものを食べることもありません。
このように犬とオオカミは遺伝子が近しい亜種ではあるものの、共通しない部分も多くあるのです。
結論:ごはんの順番は関係ない
犬は「一緒にいて楽しい人・嬉しい人」が好き
現在ではイヌにオオカミのような明確な階級制度はないという考えが主流となっています。太古の昔から人間と共生してきたイヌにとって、飼い主=リーダーというよりも「一緒にいて幸せな人が好き」という意識の方が高いでしょう。そのため犬が家族に「偉い・偉くない」という序列をつけるということもないと考えられています。
飼い主への気持ちに食事の順番は関係ない
オオカミとイヌには異なる点も多いことから「犬は飼い主より先にごはんを食べてはいけない」というしつけ方法は犬に当てはまらないということが考えられます。
たとえ愛犬が飼い主さんより先にごはんを食べたとしても、飼い主さんのことを見下すことはないでしょう。「飼い主が先」という意識は、昔の日本では人間が残した食べ物を犬に与えていたため「犬は人間の残飯を食べる=飼い主よりも後にごはんを食べる」という生活様式によるものという意見もあります。
「信頼関係」を築こう
犬がなぜ飼い主のコマンドに従うのかというと、犬は人間と共同作業をすることや褒めてもらえることに喜びを感じるためです。しかし犬も誰彼かまわず言うことを聞くわけではありません。
そもそも人間に上下関係を持たない現代の犬にとって、恐怖や痛みで強さを見せつけたところで「強いからリーダーだ!」とは思わず、むしろ「怖くて嫌な人」と思って離れていくでしょう。
現代の犬と飼い主との間には「主従関係」よりも「信頼関係」のほうが大切なのです。それは決して「ねだればおやつをくれる」というワガママな気持ちではなく、毎日健康的なごはんを必ず与えてくれることが信頼であり「食べる順番」は関係ないのです。
まとめ
我が家でも愛犬は私よりも先にごはんを食べますが、私を見下しているということはありません。群れで協力して1匹の獲物を食べるオオカミとは違い、現代の犬は狩りもしなければ飼い主と1つのごはんを共有することはほぼありません。
そのようなオオカミとイヌの違いを考えても、オオカミの階級がイヌに当てはまらないと言えるでしょう。現在では犬を「主従関係で縛る」のではなく「信頼関係を築く」という意識でのしつけが主流となっていますので、愛犬が飼い主さんよりも先にごはんを食べたからと言って関係性が悪化するわけではありません。
それよりも愛犬がおねだりする度に従っておやつを与えてしまったり、吠えて要求するからごはんを与えるという行動の方が関係が悪くなっている恐れがありますので注意しましょう。
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20代 男性 匿名