犬の歯ぎしりについて
基本的には、健康状態が良好な犬は歯ぎしりをしません。反対に歯ぎしりをしている場合は、口内や体のどこかに何らかの病気を発症していて、その症状が歯ぎしりのような音となって表れている可能性を考えることができます。
犬の歯ぎしりは、タッピングとクレンチング、そしてグラインディングの3種類に分けられると考えられており、それぞれの特徴についてご紹介します。
タッピングは歯ぎしりの中でも最も軽い状態です。犬が口をパクパクと動かした際に歯がぶつかり合って生じる歯ぎしりです。カチカチという音が聞こえますが、歯や顎に対する負担は小さいため大きな心配はありません。
グラインディングは上下の歯が左右にこすりあうときに出る一般的なタイプの歯ぎしりで、特徴としてはギリギリと音が鳴ります。
注意すべきは歯を強く噛みしめるクレンチングです。噛みしめるため音が出ず気づきにくいですが、放置すると歯や顎、歯茎に大きな負担が生じます。
犬の歯ぎしりの原因とは?病気の可能性も
犬の歯ぎしりは主に3種類に分けられるというお話をさせて頂きましたが、次に犬の歯ぎしりの原因となりえるものをいくつかご紹介します。
原因1.歯の噛み合わせが悪い
歯の噛み合わせが悪いとフードを上手く噛み砕くことができません。硬いドライフードを噛み砕こうと歯を左右に強く動かす時にギリギリと歯ぎしりのような音を立てることがあります。
また、噛み合わせが悪いことで歯が歯茎や口蓋に当たり、その不快感や痛みを取り除くために歯を強く噛みしめてしまうことがあります。
遺伝や乳歯遺残によって歯の噛み合わせが悪くなってしまうことがありますが、歯ぎしりによって歯や顎に悪影響を及ぼすようであれば矯正のための治療を受けるという選択肢があります。
原因2.歯と歯の隙間に食べカスが挟まった
歯と歯の隙間に食べカスが挟まったまま取れず、その不快感を取り除くために歯ぎしりをする場合があります。
次に何かを食べた時、お水を飲んだ時、おもちゃを噛んで遊んでいた時など、何らかの拍子にスッキリ取り除かれることもあるため、一時的な歯ぎしりであることがほとんどです。しかし、いつまでも歯の隙間に食べカスが挟まったままで不快感がある場合、しきりに歯ぎしりをすることがあります。
原因3.歯周病を発症している
歯周病を発症するとお口の中は常に不快感でいっぱいです。何とか取り除くことはできないものかと歯ぎしりをすることがあります。
しかし、どんなに歯ぎしりをしたところで不快感が取り除かれることはありません。歯周病の治療を受けさせてあげない限り完治することもありません。
おそらく、顔をそむけたくなるほどの強い口臭もあるはずです。歯周病は歯ぎしりの原因になるだけではなく、歯や顎の骨まで溶かしてしまうことがあります。お口の中の菌が毛細血管を通して全身へと渡り、命にも関わる健康被害を招こともあります。
原因4.ストレスを抱えている
ストレスによって無意識に歯ぎしりをする場合もあります。歯ぎしりをすることによってストレスを発散させようとしているのです。元気がなく落ち込んでいる様子が見られることもありますし、欲求不満でイライラとしている様子が見られることもあります。
- 飼い主さんとのスキンシップやコミュニケーションが不足している
- お留守番している時間が長く暇を持て余している
- 運動不足
- 引っ越しで不慣れな環境に不安や恐怖を感じている
このようなことがストレスによる歯ぎしりの主な原因でしょう。
原因5.生活環境が寒い
生活環境が寒いことも犬が歯ぎしりする原因です。特にチワワなど暖かい地域出身の犬種は寒さに弱い傾向にあります。寒くなりがちな冬の季節は、暖房機器や毛布などを使用し暖かい居場所を用意する、防寒具を装着して散歩に出かけるといった工夫を施してみてください。
犬が歯ぎしりをするときの対処法
歯ぎしりの原因が判明したら、それぞれに適した対策を施します。たとえば、歯のかみ合わせや歯周病などは、獣医師による処置が必要となるので動物病院に連れていってあげる必要があります。
歯に食べカスが詰まりやすい子であれば、毎日飼い主さんが歯磨きをしてあげることで原因を取り除けます。精神的なストレスに起因する場合、一緒に過ごし、遊ぶ時間を増やす、生活環境を見直すことが効果的です。万が一、原因を特定できない場合は、歯ぎしりの様子をよく観察しましょう。どんな時に歯ぎしりをするのか、どれくらい歯ぎしりをしているのか、無意識かイライラしていないか、など状態を細かく記録し、かかりつけの獣医師に相談しましょう。動画を撮影しておくのも症状がわかりやすいためオススメです。
犬の歯ぎしりは老犬に多い?
年老いた犬は、若い個体と比べて歯ぎしりを起こしやすい傾向にあります。その原因は歯周病にあります。犬は老化に伴って唾液分泌量が低下し、口腔衛生が悪化するリスクが高まります。結果として歯周病を発症しやすくなり、口の不快さから歯ぎしりする回数が増えてしまいます。
歯ぎしりによって歯や顎、歯茎に負担をかける以外にも、歯周病は犬にとって大きな危険を生み出す病気です。歯周病が重度に進行すると、歯の喪失や下顎の骨折、歯肉からの出血、口臭の悪化などの症状を引き起こし、犬の食欲低下や他の疾病を併発させてしまいます。
米国獣医歯科学会の調査でも3歳以上の犬において、80%以上に歯周病に分類される疾病を患っていることが報告されています。このことからも犬は歯周病を患いやすく、高齢の子に対する口腔ケアは必須と言えます。年老いた愛犬が、頻繁に歯ぎしりすると感じたら口腔内に病気を患っている可能性が高いため早めに動物病院を受診しましょう。
目立った歯ぎしりがない場合も、歯周病のリスクがあるため、飼い主さんによる毎日の歯磨きと定期的な獣医師による健康診断を習慣化させることが大切です。飼育している愛犬が子犬の場合は口腔内の異常だけでなく、乳歯の生え変わりによる歯ぎしりである可能性も考慮しましょう。
犬の歯ぎしりの放置から考えられるトラブル
万が一、犬の歯ぎしりを放置してしまった場合、どんなトラブルが発生する可能性があるのか?は、飼い主さんにとって気になるところだと思います。ここでは歯ぎしりを放置することによって犬に起きると思われる2つのトラブルを解説します。
歯に異常が生じる
犬の歯ぎしりを放置することで起きるトラブルとして、まず考えられるのは歯に異常が生じることです。歯ぎしりの程度によっても異なりますが、強く噛みしめている場合、歯や歯茎、下顎に大きな負荷がかかります。
その結果、歯周病の悪化や歯茎の炎症、顎関節症などを引き起こし、重症の場合は下顎の骨折や歯が折れる事態に繋がる恐れがあります。
ストレスによる体調不良
犬がストレスによって歯ぎしりしていた場合は、放置することで体調が悪化するかもしれません。ストレスが積もることで、食欲や活力の低下を招き口腔以外の病気も発症する危険性があります。運動不足や生活環境の不満など、歯ぎしりの原因となる犬のストレスは様々ですので、何が原因かを特定することが大事です。
犬の歯ぎしりのタイミングは寝るときが多い?
人間の歯ぎしり同様、犬も睡眠中に歯ぎしりすることが多いです。特に眠りが浅いタイミングで歯ぎしりしやすいことが判明しており、強く噛みしめる以外にも口をパクパクと動かして歯ぎしりする場合もあります。犬の歯ぎしりが睡眠中に増えてしまう要因として、睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。
眠っている以外でも歯ぎしりしやすいタイミングはあります、たとえば、ご飯を食べた後、歯に食べカスが詰まったとき、飼い主さんがかまってくれず退屈しているとき、居場所が寒い・怖い思いをしてストレスを強く感じているなどのタイミングで、犬の歯ぎしりが多くなりやすいです。
犬がいつ・どのくらい・どんな様子で歯ぎしりしているかは、ストレスの原因や病気の種類を特定するのに役立ちます。歯ぎしりの悪化が犬の睡眠を阻害し、ストレスを溜める要因になり得るため愛犬の歯ぎしりが疑わしい場合は、動物病院を受診されることを推奨します。この際、状況を細かく記録して獣医師に共有すると診察の参考になることもあります。
まとめ
犬も歯ぎしりをする?答えはYESです。
もし、愛犬の口からギリギリ音がする時、歯ぎしりなのではないかと疑われる時は、お口の中や心と体の健康状態は良好であるかどうか確認してみましょう。犬の定期的な歯科検診はかかりつけの動物病院で可能です。ぜひご相談ください。