補助犬について知っておいて欲しいこと
「日本盲導犬協会」のテレビCMに違和感を覚えるという声があるようです。「盲導犬って大変そうだよね」「ストレス多そう」「かわいそう」という道ゆく人の声に対して、信号待ちしていた盲導犬がいきなりカメラの方を向いて関西弁で話し出すCMです。
おそらく、「かわいそう」とか「ストレスが多そう」というのは、「させられている」という感覚から出てくるのでしょう。だから、犬の「いつでも一緒におんのが幸せや思てんのに」という発言も言わされているように聞こえてしまうのかもしれません。
しかし、本当に盲導犬を始めとした補助犬達は、かわいそうなのでしょうか。今回は、補助犬の誤解について整理し、実際に補助犬に出会った時にどう接したら良いのかについてまとめました。
補助犬への誤解
犬は、数万年前から人類と共に生活するようになり、次第にその能力に応じて狩猟犬や牧畜犬等として品種改良され、現代の犬種になったことが分かっています。つまり、犬の祖先達は働いて人の役に立ちながら人と一緒に暮らすことを選んできたのです。現代の補助犬達も、まずは適性の見極めから始まります。
生まれて最初の1年間は、ボランティアの家庭で自由に育てられます。その後、訓練センターに戻って適性を見極められます。適性がないと判断された犬達は、キャリアチェンジといって一般家庭に引き取られたり、センターの広報犬として活躍したりします。
適性のある犬だけが補助犬になるのです。実際に、20年間を3頭の盲導犬と共に暮らしてきた中学校教師の方は、あるインタビューで「盲導犬はユーザーとずっと一緒にいられること自体を幸せに感じているようだ」と応えていました。
補助犬は排泄も我慢させられていると思っている方も多いようです。しかし、実際は補助犬のユーザーさんがその犬の排泄のタイミングを理解した上で、食事や飲水の時間や量を考慮し、自然に排泄できるように管理しています。
また、定期検診や予防接種はもちろん、体重管理や日々のブラッシング、歯磨きなどもユーザーさんの仕事として義務付けられており、場合によっては一般家庭のペット犬よりもしっかりと健康管理されていると言っても過言ではないかもしれません。
さらに、補助犬はストレスが多くて寿命が短いという誤解もあるようです。これについては、日本獣医生命科学大学の水越美奈氏と全国盲導犬施設連合会の下重貞一氏が共同で事例研究として下記の調査結果を報告しています。
盲導犬の平均寿命は12歳11ヵ月、死亡年齢 が15歳を超える割合は28%でした。内、ラブラドールレトリバーの平均は13歳3カ月、ゴールデンレトリバーでは11歳5ヵ月で、いずれも家庭犬の平均寿命についての調査に比較して高いことが 明らかになりました。
補助犬への接し方のポイント6つ
補助犬には、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種類が存在します。仕事中には、盲導犬は白または黄色のハーネスを、その他は「介助犬」や「聴導犬」の表示札を付ける決まりになっています。
補助犬であっても、ハーネスや表示札を身に付けていない時はオフタイムです。しかし、私たちが補助犬に出会う場合は、おそらく仕事中の事が多いでしょう。その場合は、決して仕事の邪魔をするべきではありません。
補助犬への接し方として気をつけるべきことをまとめましたので、参考にしてください。
- 大原則:見つめない、勝手に触らない、声をかけない
- 愛犬と一緒の場合は愛犬を補助犬から遠ざける
- 勝手に食べ物や水を与えない
- ハーネスやリードには手を触れない
- 犬嫌いの人でも、怖がらない
- 補助犬が通路を塞いでいる等の迷惑な行動をしている場合は、直接補助犬にではなく補助犬のユーザーに伝える
補助犬の受入れ
2002年に、障がい者の自立と社会参加の促進を目的に「身体障害者補助犬法」が施行されました。そこには、スーパー、病院、レストランなどの不特定多数が利用する場所は、補助犬を連れた障がい者達も安心して利用できるということが定められています。
しかし実際には、まだ受入れを拒否される事が少なくないようです。前述の通り、補助犬は一般家庭のペットと比較しても高いレベルで衛生管理をされていますし、しっかりと社会性を身に付けていますので、快く受け入れて頂きたいと思います。
まとめ
補助犬は、全国にある多くの施設や多くのボランティアによって運営されています。中には、補助犬に対する扱いが不適切で報道される事もあります。こういった事は改善されなければなりません。しかし、この問題と補助犬への理解とは別に考えても良いのではないでしょうか。
補助犬達が決して嫌々仕事をしている訳ではない事、ユーザーから正しい知識により保護管理されている事を理解した上で、補助犬達の仕事を邪魔せず、暖かい目で見守れる世の中になるように、自分達のできる範囲で協力していきませんか。