人はなぜ犬と一緒に暮らすのか
以前、「人の祖先は群れの中で協力しあって生き延びてきたため、本能的に自分の物を仲間に分け与えることに喜びや幸せを感じる。人がペットと一緒に暮らすのも、この『他者に分け与える喜び』を得られるからだ」という話を聞いたことがあります。
今や、犬や猫はペットではなく伴侶動物と呼ばれるようになり、より人との結び付きが強くなってきています。とは言え、犬は誰にでも飼える、ましてや犬であればすべての犬種が誰にとっても飼いやすいという訳ではありません。
初めて犬と一緒に暮らそうと考えている初心者が最初のパートナーの選び方を間違えてしまうと、悲しい結末を迎えることになってしまうかもしれません。そこで今回は、初心者にとって飼うのが難しい犬種を中心に、初心者に向いている犬種と不向きな犬種を紹介したいと思います。
危険犬種
危険犬種(特定犬種、特定犬)という言葉をご存知でしょうか。人や他の動物に対して危害を加えるおそれが高い犬として、飼育することを禁止されたり規制されたりしている犬種のことです。
イギリスでは、法律で繁殖、販売、交換を、また審査に通らなければ所有することも禁じられている犬種があります。
- アメリカンピットブル
- 土佐犬
- ドゴ・アルヘンティーノ
- ブラジリアン・ガード・ドッグ(フィラ・ブラジレイロ)
の4犬種に加え、見た目でこれら4犬種と同じタイプだと判断される犬です。
日本では法律によって飼育が禁止されている犬種はありません。しかし茨城県のように、条例で特定犬を指定し、厳重な飼育管理を義務付けている自治体もあります。また独自に攻撃性が高いと考えられる犬種を指定し、指定された犬種は利用できないと定めているドッグランもあります。
攻撃性が高いかどうかを犬種や見た目だけで判断することには多くの疑問点があり、世界的には否定される流れにあります。しかし、現在日本やイギリスで特定犬として指定されている犬たちの多くは大型で力が強く、万が一攻撃的な行動をとった場合には死傷事故となる可能性が高いことも事実です。このように、万が一の時には自分や他人、他の動物に怪我をさせてしまうことになりやすい、最悪の場合には死亡させてしまうこともある犬もいます。そのような犬は、犬という動物とその犬種の特性をよく理解した上で自分でしつけのできる人が飼うのが望ましく、初心者には向かないことが多いでしょう。
初心者には飼うのが難しい犬種
初心者には飼うのが難しいと判断される要件
しつけが難しい
真っ先に挙げるべき要素は「しつけが難しい」ということでしょう。前述の危険犬種も正しくしつければ、いつでも攻撃的だという訳ではありません。また、攻撃行動に出そうになっても飼い主がそれを抑えることができます。逆にか弱そうな小型犬でも、正しくしつけられなければ攻撃的になってしまいます。
適切な飼育環境を維持することが難しい
2つ目の要素は「適切な飼育環境を維持することが難しい」ということです。その犬種の原産国と日本の気候に大きな差があったり、犬種特性ゆえの欲求を満たす生活環境を与えられない場合です。これは、初心者に向かないというより万人向けではない、と言った方がより適切でしょう。
健康に問題があるリスクが高い
最後は、「健康の問題」です。遺伝的に特定の病気にかかりやすい犬種があります。そのような犬は、前もって充分に勉強してからではないと、健康管理が難しくなることがあります。
しつけが難しい犬種
しつけが難しい犬種としては、
- ジャーマンシェパード
- ロットワイラー
- ボーダーコリー
- チャウチャウ
- 秋田犬
- ボルゾイ
- ビーグル
などが挙げられます。どれも良きパートナーとなり得る犬種ですが、簡単にしつけられないことがあり、初心者には難しい面を持っています。
①~③のような犬はとても賢く作業意欲が高いゆえに、④~⑤のような原始的なタイプの犬は人への依存度が低く自立心が高いゆえに、⑥~⑦のような犬種特性が今でも強く残っている犬は一般的なしつけがあてはまらないことがあるゆえにしつけが難しいことがあります。
スヌーピーでお馴染みのビーグルは集団で吠えながら獲物を追いかけるように改良された犬種なので、よく響く声で吠えやすく、現代社会では無駄吠えが多いとされてしまいます。その点以外は初心者にも飼いやすいでしょう。また、フィギュアスケーターのザギトワ選手で有名になった秋田犬も、気が強く頑固で神経質とよく言われますが、それは自立心が旺盛である結果です。
適切な飼育環境の維持が難しい犬種
北方原産で夏に弱い
- シベリアンハスキー
- グレートピレニーズ
- バーニーズマウンテンドッグ
などは厚い被毛に覆われており、日本の夏がとても苦手です。犬が快適に過ごすには、飼い主が冷え過ぎだと感じるくらい低く冷房の温度を設定しなければならないこともあり、それができない家庭には向かないかもしれません。
多くの運動が必要
- ボーダーコリー
- ジャックラッセルテリア
などは、かなりの運動量を必要とし、エネルギーがあり余ってしまうと問題行動につながりやすいため、飼い主のライフスタイルによっては飼うのが難しいと言えるでしょう。
健康に問題があるリスクが高い犬種
ブルドッグなどの短頭種といわれる犬種は呼吸器系の異常を先天的に持っていることが多く、手術による治療が必要になることが多くあります。
命に関わる遺伝病のリスクが高い犬種もあります。
他にも、命に関わらないとしても、遺伝的にかかりやすい疾患を持っている犬種はたくさん存在します。
しっかりと健康管理を行うためにも、パートナーにしたい犬種の遺伝病のリスクを事前に勉強しておくことをおすすめします。
初心者でも比較的飼いやすい犬種
基本的には、小型犬~中型犬が扱いやすいでしょう。さらに散歩の量が飼い主のライフスタイルや健康状態に合う、一般的な方法でしつけられるという要素を加えると、下記の犬種が初心者でも比較的飼いやすいと筆者は思います。愛玩犬としての歴史が長い犬種が多くなっています。
ただし、どの犬種のどの犬にも病気や問題行動は起こり得ますので、しっかり勉強したうえでお迎えすることが大切です。
- チワワ
- マルチーズ
- シーズー
- トイプードル
まとめ
一緒に暮らす犬種を選ぶ時には、まず「なぜ犬と一緒に暮らしたいのか」をよく考えましょう。初めて犬を飼う場合には、特に重要です。その犬と一緒にどういう生活をしたいのか、またどういう生活環境を提供できるのかを考え、それに適した犬種を選ぶことをおすすめします。
愛犬と一緒に長く幸せな暮らしを続けるためには、ご自身の性格や生活環境、ライフスタイルや体力にあった犬種を選ぶことが重要なのです。