1.上目遣い
犬は人間との共生してきた歴史の中で、その表情筋が豊かに進化したと言われています。特に「目の表情」もとても豊かで、さまざまな気持ちが表れる部分です。犬の瞳は人間とは違い、通常時はほとんど黒目部分しか見えません。
しかし「上目遣い」のように白目部分が多く見えている時には、
- 緊張
- 不安
- 不快
- 恐怖
などのネガティブな気持ちの表われであることが考えられます。場の雰囲気が良くないことを察すると不安や緊張を感じ、上目遣いで飼い主さんやご家族を見つめてくることがあります。
2.あくび
犬は言葉を話しませんので、ボディランゲージによって他者と意思疎通を図ることがあります。その中に「カーミングシグナル」と呼ばれる、自分や相手の気持ちを落ち着かせて不穏な状況を回避するためのボディランゲージがいくつかあります。
カーミングシグナルの1つに「あくび」があります。人間の場合、人の前であくびをすることは「退屈」「興味がない」など失礼な印象を与えるため良しとされない行動です。
しかし犬の場合はあくびをすることで
- ケンカする意思はない
- これ以上かかわらないでほしい
- 冷静になってほしい
と相手に伝え、その場を穏便に乗り切ろうとします。犬は「気まずさを解消したい」という時にもあくびを見せることがあります。犬は人間と同じように「眠たい時」や「寝起き」にもあくびをしますが、このようにボディランゲージとしてのあくびもあるのです。
3.自分の鼻を舐める
犬にとって「嗅覚」はとても重要な感覚器官です。犬は匂いの情報からその場のことや相手のことを情報収集しています。犬の鼻が湿り気を帯びているのは、より多くの匂いを感じ取るためと考えられます。
犬が自分の鼻をペロッと舐めるのも「カーミングシグナル」の1つで
- 不安
- 緊張
の表われである場合があります。
犬が他人や他の犬との気まずさを感じた時、鼻を舐めることで自分の気持ちを落ち着かせようとしています。これは自分で鼻を舐めることで鼻を湿らせ、より多くの情報をキャッチして安心したいと思っているという背景があります。
カーミングシグナルは後天的?
オオカミの群れから分かったサイン
「カーミングシグナル」はオオカミの行動から明らかになった犬のボディランゲージです。オオカミは「リーダーと格下」という厳格な秩序のもとで群れを構成しています。
様々な立場の仲間が上手く共同生活をしていくためにはコミュニケーションがとても重要です。いざこざが起こることは群れの存続にかかわるため、カーミングシグナルによってコミュニケーションを取ることで穏便に解決できるようにしてきたと考えられます。
犬はオオカミから派生して現在のイエイヌの姿になったと考えられており、イエイヌにも犬種によってはDNA的に見るとオオカミに近い種類もいます。そのため犬の本能にもカーミングシグナルが継承されているとも考えられます。
カーミングシグナルは産まれてから覚えるもの?
しかしカーミングシグナルは先天的なものではなく、産まれてから他の犬とのかかわりの中で身に付けていく後天的なものもあるという意見もあります。
そのため産まれてすぐに兄弟犬と離れてしまったり家庭生活の中で他の犬とのかかわりが薄い子の場合は、他の犬の発するカーミングシグナルを理解できなかったり自分が適切なカーミングシグナルを出すことができないということもあります。
愛犬の「伝えたい」を受け取ろう
愛犬が本当はどんな意図でその行動を見せているのかを確かめることはできませんが、何度もその行動を見せる時には少なくとも「何かを伝えたい」という意思がある行動であると考えられます。
そのためには世界共通の「犬語」ともいえる犬のカーミングシグナルを一通り把握し、その行動と意味から愛犬の気持ちを推測してあげることが大切です。
まとめ
今回は「犬が気まずい雰囲気を感じた時に見せる行動」を3つご紹介しました。
犬は群れを成す習性をオオカミの頃より受け継いでいますので、その場の不穏な雰囲気を敏感に察知すると言われています。和を尊ぶ犬はカーミングシグナルなどの行動によって自分の気まずさを相手に伝え、その気まずさを解消しようとすることがあります。
またカーミングシグナルは相手の気持ちを落ち着かせるだけではなく、自分自身の気持ちを落ち着かせるための行動でもあります。
そして犬は人間との共生の歴史の中でその表情筋を豊かに進化させ、人間の表情を読み取ったり自分の表情によって人間と意思疎通を図ることができるようになったと言われています。上目遣いも人間が分かりやすい表情なので、犬たちはその表情や行動によって私たちに様々なサインを送ってくれていると言えます。