1.嫌なことを思い出す
「ケージに入る=嫌なことが起こる」という認識
犬は様々な経験を通じて物事を関連付けて覚えます。犬にとっては「どうしてケージに入る必要があるのか」という飼い主さん目線での理由までは分からないため、ケージに入った時の経験が重要となります。
もしケージに入ったことで「メリット」があったなら、犬は「ケージは良い場所だ」と覚えます。逆にケージに入ったことで「デメリット」があったとしたら、犬は「ケージは嫌な場所だ」と認識してしまいます。
過去にケージに入ったことで何か嫌な出来事があった場合、犬はケージに入ることを嫌がるようになってしまいます。または留守番時にケージに入る場合は「この中に入ると飼い主さんがいなくなってしまう」という認識によって、ケージに入ることを嫌がることもあります。
ケージに入る経験が少ない場合
普段はケージに入ることが無い場合、犬にとって「ケージ=イレギュラーなもの」と認識しやすいです。犬は危険に対する防衛本能が強いため、イレギュラーなことが起こった時には緊張状態になりやすいです。そのためケージに入るとパニックを起こしてしまうということもあります。
2.飼い主さんと離れて不安
「飼い主さんと常に一緒にいたい」という気持ちの強い子の場合、ケージに入れられて飼い主さんと距離が生まれると強い不安を感じてしまうこともあります。特に子犬の場合はその気持ちが強く、おうちに迎えた直後はケージの中でひとりで眠ることを嫌がって鳴き続けることも多くあります。
犬は群れで生きる習性のある動物であるため、基本的に「ひとりぼっち」は苦手です。仲間と身を寄せ合ってお互いを守るように眠るという習性があるため、ひとりで眠ることに不安を感じやすいのです。特にまだ幼い子犬の場合は母犬や兄弟犬の温もりを必要としているため、ケージの中でひとりにされることに恐怖してしまうことも多いです。
3.隔離されて不満
遊んでもらえない不満
大き目のケージを用意しても、やはりケージの外のような自由度はありません。ケージ内の限られたスペースで、歩いたり走ったりして遊べない環境に不満を抱いてしまうこともあります。そして「ケージの外は飼い主さんが遊んでくれる場所」と認識しやすいため、特に遊び盛りの子犬は飼い主さんと遊びたいあまりに「出して!」と騒いでしまうことも多いです。
ケージ内の環境への不満
そしてキレイ好きな子の場合は、自分の寝る場所とトイレが近いことに不満を感じてしまうことも。犬は自分の寝る場所とトイレを区別したい習性がありますので、寝床となるペットベッドやクッションがトイレシーツと近すぎるとストレスを感じることもあります。
そうしてケージの中に不満を感じて、執拗に鳴き続けたりトイレシーツを破ってしまったりして飼い主さんに「ここから出してよ!」とうったえてしまうことが多くあります。
ケージに慣れてもらうには?
「ケージ=良い場所」と思ってもらう
ケージに入ることに最初は抵抗を見せても、犬は環境に「慣れる」ことができます。ケージへの抵抗感を軽減してケージに慣れてもらうには「ケージ=メリットがある良い場所」と認識してもらう必要があります。
そのために
- ケージの中でごはんやおやつを与える
- ケージ内の環境を快適にする
などで「ケージ=良いところ」と思ってもらいましょう。
要求の行動には「無視のしつけ」
ケージに入ると鳴き続けたり暴れてしまう場合、その行動は犬の「要求」によるものです。愛犬が要求の行動をしているときにケージから出してしまうと、愛犬は「鳴いたりトイレシーツを破れば出してもらえる」と間違った認識をしてしまいやすいです。そのため飼い主さんがぐっとがまんして「無視のしつけ」を続けることが重要です。
ケージ内が愛犬にとって快適な状態にする
ケージ内が愛犬にとって快適で安心できる環境であれば、愛犬はケージの中にいる状態に慣れていくことができます。無視のしつけを行う前に、ケージ内の環境を快適に保ってあげることも重要です。
ケージの中にトイレを置く場合は、ケージが狭すぎると寝床とトイレが近くなりやすく窮屈さによって愛犬にストレスとなることもあります。ケージ内で愛犬が立ったり座ったり自然な行動ができ、ベッドやトイレを置いてもなおおもちゃをいじって遊べるくらいの余裕のある大きさのものを選ぶと良いでしょう。
特に長時間のお留守番中に使用する場合は、トイレやベッドとは別に愛犬が横たわれるくらい余裕のあるものの方が良いでしょう。
犬は仲間とくっつき合って眠る習性があるため、自分の身体が何かに触れている「接触刺激」があると安心しやすいです。特に子犬の場合はひとりぼっちに寂しさを感じやすいため、ブランケットやペットベッドなど「フワフワしていて仲間の温もりを感じられる素材」のものを置いてあげると安心しやすくなります。
根気強く丁寧なトレーニングを
いきなりケージに入れられると恐怖を感じやすいので、段階を経た丁寧なトレーニングが大切です。いきなりドアを閉められることに抵抗感があることが多いので、最初のうちは扉を開けっぱなしにすると良いでしょう。
- 毎回のごはんをケージ内で与える
- ケージ内に入ったらおやつを与える
- ケージ内でおもちゃで遊ぶ
- ケージ内に愛犬の匂いの付いたベッド等を置く
などの方法で愛犬にケージの中に慣れてもらい、ケージに対して良いイメージを持ってもらうことが重要です。
愛犬が自分で入りたくなるようにする
また愛犬に「自分から入ってもらうこと」もポイントです。飼い主さんが抱きかかえてケージに入れるのではなく、愛犬が自ら中に入りたくなるようにしましょう。そのためにおやつを活用したり、ごはんをケージの中で与えることが効果的です。
ケージ内が愛犬のお気に入りスペースになれば、愛犬は日頃からケージの中でお昼寝をしたりくつろぐようになってくれることもあります。徐々にケージ内に慣れてきたら、扉を閉める時間もつくります。扉を閉めてからおやつを与えるようにすると、閉じ込められるというネガティブな気持ちが軽減されやすいです。
まとめ
子犬を迎えてからケージの中で眠らせようとした夜に、けたたましく鳴き続けてしまって根負けしてケージから出してしまった、という飼い主さんも多いのではないでしょうか。
普段はケージに入れる必要が無くても、ペットホテルを利用しなければいけなくなった時や入院する時、引っ越しや来客時、そして万が一の災害時にも、愛犬にケージに入ってもらう必要があるシチュエーションは様々あります。ケージトレーニングはケージ内に少しずつ慣れていき、愛犬がケージに良いイメージを持ってもらうことがポイントとなります。
そして愛犬の「出してくれ!」の要求にはぐっとガマンしてリアクションを取らないこと、ケージ内が愛犬にとって快適で安心できるような環境にしてあげることも大切です。