①「食べられるときにすぐ食べる」という習性
犬がごはんを早食いしている姿を見ると、「そんなにお腹がすいているの!?」「食い意地が張ってるなぁ」などと感じる人もいるかもしれません。しかし、犬が出された食べ物をあっという間に食べてしまうことは、犬の性格や食欲の問題ではなく本能的な習性によるものと考えられています。
犬の祖先である動物たちが野生で生きていた頃には、“次にいつ獲物を得られるかわからない”状況。基本的には肉メインに食べる動物なので、狩りをして獲物(食料)を獲らければなりません。
どんな肉食動物でも狩りの成功率というのはそれほど高くありません。数日食事にありつけないこともめずらしいことではないのです。さらに、群れの中で強い個体ほど多く食べることができるという社会で生活をしていました。そのため、今ある目の前にある食べ物をできるだけ早く食べ切るという習性が身についているのです。
②素早く食べることができる体の構造
犬はその習性から、目の前にある食べ物をすぐに食べる傾向にあります。そして、それを可能とする体の構造にもなっているのです。
まず犬は人間や草食動物のように、ゆっくり噛んで食べ物をすりつぶすような歯を持っていません。犬歯などを尖った歯を使って食べ物を引き裂いて、喉に通る程度の大きさになったら噛み砕くことなく飲み込んでしまうのです。
また、犬の胃酸はとても強力で大きな塊の食べものであっても、しっかりと消化吸収することができる体の仕組みになっています。人間の感覚で言うと、早食いは体に悪いと思われがちですが、犬にとってはそれほど身体的負担は大きくないと考えられるでしょう。
犬の早食いが危険な理由
犬は早食いする習性を持ち、それに適した体の構造をしています。しかし、それらの習性や構造がつくられた野生時代と現代では、犬が食べる物が異なっており、その違いからトラブルやリスクを招くことがあるのです。
胃拡張・胃捻転
犬が早食いをすることで起こる最も危険なのが、胃拡張・胃捻転です。ドッグフードなどを早食いすることで、空気も大量に飲み込んでしまった場合、胃に多くの空気が取り込まれて急激な胃拡張が起こる可能性があります。
そこで食後すぐに運動したり体を動かすことで、胃が捻じれてしまい胃捻転を引き起こすのです。捻転を起こした胃は、周囲の血管も一緒にねじれることなどから発生したガスが溜まり続けて大きく膨らみ、周囲の臓器を壊死させるなどして短時間でショック状態となり死に至ることがあります。
特に体が大きく胸の深い犬(グレートデンやドーベルマンなど)に起こりやすいトラブルですが、その他の犬も念のため食後すぐの運動を控えるなどしましょう。
喉詰まり・窒息
犬は大きな食べ物も喉に通すことができると考えられていますが、あまりにも勢いよく食べてしまうことで喉を詰まらせて呼吸困難に陥ってしまうことがあります。
野生の頃に食べていたような生肉であれば、水分量が多く喉に詰まりにくかったのですが、ドッグフードを一度に大量に飲み込もうとすると唾液でギュッと固まって喉に詰まってしまうことがあります。犬の体や口の大きさに応じて、ドッグフードの粒の大きさや形にも注意するといいでしょう。
嘔吐・消化不良
あわてて食べ物を食べると、胃に負担がかかって直後に嘔吐してしまうことがあります。特に、ドッグフードは胃に入ると膨らみますので、ドライの状態よりも体積が増えます。
吸収しやすいように胃の中で消化するまでに、長い時間がかかるので胃の中に食べ物が長く停滞して負担をかけたり、食べすぎると消化不良を起こして下痢をしてしまうことなどもあります。
まとめ
犬が与えられたごはんをあっという間に食べてしまうのは、「次いつ食べられるかわからない」という動物が持つ本能的な危機感によるものが大きいと考えられています。さらに、歯や消化器官の構造上もゆっくり噛んで食べるのではなく、素早く飲み込んで体内に入れるということに適しています。
そのため、犬はある程度早食いでも問題ありませんが、元々食べやすい大きさになっているドッグフードを早食いしてしまうと危険な場合があります。一気に口に入れることで喉に詰まってしまったり、穀物を多く含むことから消化不良で嘔吐や下痢をしてしまったりします。また、最悪の場合胃拡張や胃捻転に陥って命を脅かすことも。
食事の大きさや与え方を工夫したり、食事前後の行動をコントロールするなどして安全に食事ができるようにしてあげてください。