犬が影を追いかけることはおかしい?
散歩中に落ちてくる花びらや揺れる葉っぱの影を追いかける、歩いている飼い主さんの影にじゃれつくように追いかける、ふと視界に入る自分の影に驚いて追いかける
犬たちのそんなを見たことはありませんか?愛犬が夢中になって影を追いかけている姿を見て、微笑ましいと思いつつも「なんでこんなことをしているんだろう?」と疑問に感じたり、おかしな行動なのかと不安に感じる飼い主さんも少なくないと言います。
しかし、犬がさまざまなものの影を追いかけるという行動はそれほどめずらしいことではありません。好奇心旺盛な犬が遊びのひとつとして影を追いかけている場合が多いようですが、中には精神的なストレスなどが原因で行われることもあるとされています。
犬の心理①狩猟本能が刺激される
犬が動いているものを追いかけたくなるのは、本来持っている狩猟本能の影響です。投げられたボールやおもちゃを夢中になっておいかけるのと同様で、不規則な動きをする影を見て狩猟本能が刺激されるということは十分に考えられます。
犬にとって影は実体のないものであるなどという概念はないので、おもちゃや葉っぱ、他の動物などと同じように興味を引く対象となるのです。その対象が何であったとしても、目の前で動いているものを瞬間的に追いかけたくなるのが本能。影でも、おもちゃでも目でとらえた“獲物”をついつい夢中になって追いかけたくなってしまうのです。
また、犬は動体視力が非常に高いとされています。視力そのものはあまりよくありませんが、人間よりも視野が広く、動いているものを見つける能力に優れているのです。そのため、影のようにサッと素早く動くものに対して反応し、体が動いてしまうのはとても自然な行動だと思います。
犬の心理②影が何かわからず不安(常同行動)
視界に入ってきた自分の影を犬が延々と追いかけ続けたり、声をかけても追いかける行動が止まらなかったりするときには、遊びとは違う状況に陥っている可能性があります。
犬はストレスがたまったり、不安感でどう行動すればいいかわからなかったりすると、意味のない行動をひたすらくり返すことがあります。
それは『常同行動』や『強迫神経症(強迫性障害)』と呼ばれ、自分のしっぽをぐるぐると追いかけて走ったり、足先を血が出るまでなめ続けたり、同じ場所を行ったり来たりする行動が見られることが多いとされています。一心不乱に影を追い続けることも、常同行動・強迫神経症(強迫性障害)のひとつの症状と考えられているのです。
くり返しの行動を行うことでストレスや不安感を解消すると考えられており、一時的なものであれば問題ありませんが、放っておくと日常生活や犬自身の身体に悪影響が及ぶほどエスカレートしてしまうこともあります。改善のためには、ストレスや不安の原因を把握して可能な限り取り除くことが大切。
その上で、他の行動に誘導したり薬物療法を行うなど適切な対処が必要です。ただし、常同行動・強迫神経症(強迫性障害)は精神疾患のため、一般的な獣医師による治療では改善が困難な場合もあります。
その場合は、獣医行動診療科認定医がいる・または行動治療に力を入れている動物病院を紹介してもらったり、精神疾患の専門家であるドッグビヘイビアリストやドッグトレーナーに相談してみることをおすすめします。
まとめ
犬が散歩中に葉っぱや虫などの影を追いかけたり、一緒に走る飼い主さんの影に興味を持つことはとても自然なこと。犬が持つ好奇心や狩猟本能によって、影を追いかけているうちにそれが楽しい遊びになることもあるでしょう。
ただし、自分の影などを必死になって延々と追いかけ続けるような様子が見られた場合、ストレスや不安による行動の可能性もあります。そうした行動がエスカレートしてしまわないよう、犬の生活環境を見直してストレスになっていることがないか改めて考えてみてください。
思い当たることがあればその原因を取り除き、影追い行動を忘れさせるように遊びやスキンシップでたっぷりとコミュニケーションを取りましょう。