犬の聴力
人の耳は通常の場合、20Hzから20000Hz程度の音を捉えることができるといわれています。20Hzといわれてもピンときませんが、一般的なピアノの一番低い音よりちょっと低い音を想像してください。
20000Hzについては余程若くて耳がいい人でないと聞き取れません。30代~40代になると15000Hzの高音が聞き取りにくくなるようで、その後も加齢によって可聴域(捉えられる周波数帯)が減少していきます。
犬の場合はどうかといいますと、低い音は人間と変わらず20Hz程度から聞き取れますが、高い音はおよそ50000Hz程度まで聞き取ることができるといわれています。人間が聞き取れないほど高い音も感知できるというわけです。
これらは立ち耳、垂れ耳の差や犬種にによる顕著な差が無いといわれています。加齢によって高周波数帯の音が感知できなくなるのは人間と同じですね。
この高音を聞き取れる能力を利用するため、牧羊犬などの指示に使われる犬笛は高い周波数の音を出すように作られています。また、犬は低い男性の声よりちょっと高めの女性の声の方が聞き取りやすいのではないかといわれていますね。
聞き取れる音域も広い犬ですが、聴力自体も人間よりはるかに優れていて遠く離れたところの音も聞きとることが可能です。遮蔽物が無ければ1㎞以上先のm音も感知することができるといわれています。
犬にとっての高音、低音
犬同士のコミュニケーションを観察すると、子犬が出す声は高い声で成犬同士が威嚇するときは低い声を出すことが分かります。
犬にとって甘えたり遊んだりするときは「高い声」を合図にし、威嚇したり怒ったりといったときは「低い声」で表現することを、子どものころから学んでいるわけです。
この習性は人に対しても同じように表され、遊んでほしいときや甘えたいときはクンクン、キャンキャンといった高い声を出して飼い主の気を引きますし、ちょっと怒っているときや他の犬を威嚇するときなどはウゥっと喉の奥を低く鳴らして知らせます。
人の声に対する対応も同様です。高い声で接してくる相手には「遊ぼう」と甘えたりはしゃいだりしますし、低い声で接してくる相手には怯えて委縮したような態度をとったり、逆に対抗してうなったりすることが多くなります。
犬が好む声
犬は比較的高い声を好んでいるという研究があるようです。赤ちゃんや子どもに話しかけるようなちょっと高めの声で穏やかに話しかけた場合、普通のトーンで話しかけるより反応が早かったという結果が見られたとのことです。
これは先述したとおり、犬にとって高いトーンの声が「甘え」や「遊びの誘い」だったりすることに由来するのではないかと思われます。
ただしこの高い声というのは「遊びの誘い」という意味があることから、犬の興奮を誘う音でもあります。常に高い声で接していると犬は常に興奮を誘われて落ち着きがなくなり、ちょっとした物音でも走り回ったり吠えたりするようになります。
小さいお子さんがいるお家の場合はご家庭でも高い声音がよく使われることや、お子さん自体の声が高くきゃっきゃと遊んでいる様子を見るため、なおさら一緒に遊ぼうという衝動が抑えられずに犬がずっと興奮している状態になることもあります。
反対に太い、低い声で接していると犬は常に威嚇されていると感じてしまい、委縮する傾向があります。大きな物音を立てたりするとなおさらこの傾向が強くなり、常にびくびくと怯えて人間の様子をうかがうようになってしまいます。これは常に緊張状態であり、犬の精神状態にもいい影響がありません。
緊張状態が続くことは犬にとって大きなストレスですので、叱るとき以外は控えたほうが良いようです。
まとめ
高すぎる声、低すぎる声のどちらも犬の興奮や緊張を誘う声音です。犬の聞き取りやすさを重視して、少し高めの声ではっきりした発音を心がけつつ穏やかなトーンで話しかけるのが良いでしょう。