犬が水をがぶ飲みするときに疑われる病気
お散歩をしたわけでもなく、激しい運動をしたわけでもなく、真夏の暑い日でもない。それなのに、犬が水をがぶ飲みするときは、病気の可能性を考えることができます。また、水を大量に飲むことから、おしっこの回数や量も急激に増えることがあります。
1.糖尿病
糖尿病は、内分泌疾患のひとつです。膵臓という器官から分泌されるインスリン(ホルモン)の分泌が不足し、引き起こされる病気です。犬が糖尿病を発症したとき、一般的には、「多飲」「多尿」の症状が多くみられます。糖尿病を発症していても、なかなか気づけず、悪化した状態で発覚することがあります。
何らかの症状が起きていても、その症状が糖尿病の症状であるということを特定しづらいことが理由です。「最近、水をよく飲むようになったな…。」くらいにしか感じられなかった、という飼い主さんがほとんどです。
糖尿病は、肥満である犬だけではなく、痩せ型の犬にも発症する病気です。定期的な健康診断を受けることで早期発見と早期治療に役立ち、健康寿命を延ばすことができます。糖尿病になると、明らかに血糖値が高くなりますので、簡単な血液検査でも発見することができます。
2.クッシング症候群
クッシング症候群もまた、内分泌疾患のひとつです。腎臓の近くにある副腎という器官から分泌されるコルチゾール(ホルモン)が、過剰に分泌されてしまうことで引き起こされる病気です。犬がクッシング症候群を発症したとき、一般的には、「多飲」「多尿」の症状が多くみられます。
症状には、水を飲む量やおしっこの回数が増えることがあげられます。「高齢だから、おしっこの回数が増えたのかも…。」と、飼い主さんにも気づきやすい症状なのですが、病気である可能性を考えずに過ごしてしまうことがほとんどです。副腎皮質機能亢進症の場合、お腹が不自然に張ったり、両側対象に被毛が抜けるなどの症状が伴います。
コルチゾールが過剰に分泌されてしまう原因は、脳下垂体の腫瘍または副腎の腫瘍です。脳下垂体が“コルチゾールを分泌せよ”と、脳に指令を出しています。
しかし、脳下垂体に腫瘍ができてしまい、指令が過剰に出され、分泌も過剰になってしまうのです。クッシング症候群の原因のほとんどが、脳下垂体の腫瘍であるとされていますが、副腎の腫瘍が原因となることもあります。
3.慢性腎不全
犬が慢性腎不全を発症したとき、一般的には、「多飲」「多尿」の症状が多くみられます。穏やかに進行し、明らかな症状が出にくい病気です。慢性腎不全は、発症すると完治することはありません。進行性の疾患ですので、治療によって、進行を遅らせることしかできません。
重度にまで悪化すると、尿毒症や乏尿(または無尿)の症状がみられるようになります。尿毒症とは、本来であれば、腎臓から毒性物質が排泄されるのですが、腎不全によって排出されなくなってしまい、毒性物質が血液と一緒に全身へと渡ってしまう状態のことを言います。乏尿とは、おしっこがほとんど作られなくなってしまう状態です。
また、無尿と言って、おしっこが全く作られなくなってしまうこともあります。慢性腎不全は、原因がはっきりとわかっていない病気です。加齢に伴い、腎臓の機能が低下していることが原因であることもあります。遺伝や自己免疫疾患が原因であることもあります。
4.子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、子宮内に膿がたまってしまう病気です。子宮内への細菌感染が原因です。避妊手術を行っておらず、一度も出産をしたことがない犬、もしくは、出産をしてから長く出産していない犬への発症リスクが一般的に高いです。高齢になるほど発症リスクはさらに高くなります。
「多飲」「多尿」の症状が多くみられます。治療には、子宮と卵巣の摘出が必要なのですが、高齢であり、健康状態や体力などから手術に耐えることができないと判断された場合、内科的治療が用いられることもあります。しかし、治療に長い時間がかかったり、完治しないこともありますし、再発することもあります。
まとめ
犬が急に水をがぶ飲みする理由として、
- 糖尿病
- クッシング症候群
- 慢性腎不全
- 子宮蓄膿症
などの病気を発症している可能性を考えることができます。日頃から水をたくさん飲むことは健康の維持にも必要なことなのです。
しかし、愛犬の一日に飲む水の量を把握しておかなければ、がぶ飲みしても異常だとは気づきにくいですし、水を飲む量が増えたことにも異常を感じられないかもしれません。水を飲む量を把握することも、愛犬の健康を守り続けるために大切なことです。