犬にも利き手に関する調査
あまり知られていませんが、犬の利き手について世界ではいくつも調査や研究が行われています。
オーストラリア・シドニー大学では、270頭の犬を対象に約3年を掛けて利き手に関する調査を行いました。そこでは「右利き」と「左利き」がそれぞれ15%ずつおり、その他の犬は「どちらとも言えない」という結果が出ました。
あわせて犬種による利き手の傾向や差は見られなかったということもわかっています。さらに、イギリス・マンチェスター大学で行われた犬の利き手に関する研究では、「右利き」と「左利き」が約50%ずつで、「両利き」はごく少数という結果が出たそうです。
このように利き手の調査はいくつか見られますが、その結果にはバラつきが大きいようです。また、2016年にイタリアのチームが行った調査では、犬の「利き手」と「空間認識」の関係性が確認されています。
利き手による空間処理の優位性を調べたところ、「右利き」の犬は右の視野を、「左利き」の犬は左の視野を優先的に処理することが明らかになりました。両利きの犬の場合、視野の処理に優先順位が見られないとされています。
この調査結果によって、犬の視空間能力と運動的側性が連動している可能性が考えられ、人間以外の動物で初めてこの現象を確認した事実となったのです。
犬の利き手を知ることに意味はある?
利き手に関する専門的な調査はいくつもありますが、飼い主さんが愛犬の利き手について意識することはあまりないかもしれません。犬は人間のように手で道具を使うということがないため、利き手を知る必要性が特にないからだと思います。
そのため、犬の利き手を調べることに意味はないのでは?と考える人もいるでしょう。しかし、犬の利き手を特定することによって脳の働きの活発な部位をある程度推測することができると考えられているのです。
そのため、利き手を調べることでその犬の得意分野を推測して、盲導犬や探知犬、セラピー犬など使役犬としての適性を判断する材料になると期待されています。
犬の利き手が訓練の成功率に影響を与えるかもしれない
オーストラリア・シドニー大学の動物行動学の教授らは、使役犬は人間の左側について仕事を行うように訓練されることが多いため、犬の利き手が訓練の成功率に影響を与える可能性があると考えて利き手に関する調査・研究を行っています。
実際、盲導犬の試験に合格する確率は右利きの犬が高いという報告もあります。利き手によってあらかじめ適性を見極めて選抜することで、犬の負担を軽減したり合格率を上げたりすることが出来るのではないかとも考えられています。
また、前述したイタリアの調査チームが指摘したように「利き手」と「視覚的情報処理の優位性」が連動しているとすれば、犬に対してハンドシグナルを出す時に役立つ可能性もあります。
犬の利き手=視覚的情報処理の優位性を知っておけば、どちらの視野に情報を送ればより早いレスポンスがあるか簡単にわかりますよね。このように利き手を知ることで、犬との関わりのヒントが得られると考えられているのです。
愛犬の利き手をチェックする方法
愛犬の利き手がどちらか知りたい、という人は次のようなチェック方法を試してみてください。
- 犬の正面に手を出した時、どちらの前足を先に乗せるか
- 犬のマズルにテープを貼ったり輪ゴムをつけたりした時、どちらの前足で先に取ろうとするか
- 紙コップや容器などにおやつを入れて目の前に置いた時、どちらの前足で先に取ろうとするか
- タオルなどの下におやつやおもちゃを隠した時、どちらの前足で取ろうとするか
ただし、これらを一度チェックしただけでは利き手を確定することは出来ません。数日間に渡って100回程度チェックして、その傾向を見極めるといいとされています。物を取らせる時などは左右のどちらかに片寄って置いてしまわないように注意しましょう。
また、どちらの前足から踏み出すか、段差はどちらの前足から上るかなど日頃から「どちらの足を先に使うか」ということを観察することも大切な判断材料になると思います。それらと上記のチェック項目の結果などから利き手を推測することが出来ると考えられています。
まとめ
私たちと同じように、犬にも利き手があると言われています。そして、利き手と空間認知力や視覚による情報処理の優位性には、関連性があるとも考えられています。
そのため、利き手を知ることで犬の得意分野を推測することが出来、使役犬の適性判断やしつけをする際の関わり方にも役立てることが出来るでしょう。
愛犬の利き手チェックは、手軽に出来るものばかりなので興味のある方はぜひ試してみてください。ただし、数回確認した程度では正確に判断することが出来ないので、時間をかけて根気よくチェックするようにしましょう。