犬が食べてしまいがちな腐った食べ物
自宅の中でとくに注意したいのは、キッチンの生ゴミです。捨ててからすぐに腐ってしまうわけではありませんが、夏の暑い日は、キッチンの生ゴミだけではなく、その他の食べ物も腐ってしまいやすいですよね。
もしかすると、愛犬用に買っておいたおやつも、夏の暑さによって傷んでしまったり、カビが生えてしまうなどし、腐ってしまう可能性があります。保存方法にも注意したいです。
犬が「腐った食べ物を食べても大丈夫」と言われる理由
犬の唾液と胃酸の強さ
犬の唾液は、人間の唾液と比べると、殺菌力が強めです。また、胃酸も強いため、少し傷んでしまった食べ物や腐ってしまった食べ物を口にしても、体調に変化がみられないことがあります。
群れで免疫力を強化し合うオオカミ
犬の祖先であるとされているオオカミは、仲間同士で毛づくろいをするなどし、お互いの免疫力を交換し、高めることができます。
犬が野生であった頃も同じようにし、免疫力を高め合い、獲物を狩ることができなかった日には、残り物の腐った肉を食べていたかもしれません。このようなことからも、腐った食べ物を食べても大丈夫、と言われているようです。
ペット栄養会誌、2(2):70-77.1999参考
連 載 講 座:イ ヌ ・ネ コの 基 礎 栄 養 (2)
食性、嗜好、食餌の摂取量など阿部又信
家庭犬には当てはまらない
唾液と胃酸の強さ、そして、群れで免疫力を高め合うこと。これらが、“犬が腐った食べ物を食べても大丈夫”と言われる理由だとすると、私たちと一緒に暮らす家庭犬たちはどうなのでしょうか。
生まれ持った免疫力や治癒力は持つものの、オオカミや野生の犬が持つものとは大きくかけ離れているのではないでしょうか。私たちの愛犬たちは、犬が“犬が腐った食べ物を食べても大丈夫”には当てはまらない可能性が高いのではないでしょうか。
犬が腐った食べ物を食べてしまったときの対処法
どんな症状が起こるのか
- 食欲不振
- 元気消失
(明らかに気づくことができる症状)
- 下痢
- 嘔吐
- 血尿
- 大量のヨダレ
- 黄疸
- 痙攣(けいれん)
(注意して確認しなければ気づけない症状)
- 貧血
- 発熱
間違った対処法
吐かせようとして、吐かせる方法をネットで調べる飼い主さんがいます。しかし、無理やり吐かせると、嘔吐物が気管に詰まってしまう危険性があります。窒息などの恐れもあるため、飲み込んでしまったものを無理やり吐かせることはやめましょう。
適切な対処法
- 何をどれくらい食べてしまったのか
- どのようにして食べてしまったのか(例:キッチンの生ゴミ、道端で拾い食い)
この2つのことを把握することができれば、動物病院でもより適切な治療を受けることができます。愛犬の誤飲や誤食の可能性を考えるということは、“キッチンに置いていた○○がなくなっている”などの気づきがあったということです。
食べてしまった量までは把握することが難しくても、どんなものを食べてしまった可能性があるのか、少しでも構いませんので、冷静になって思い返してみましょう。
食べてしまった食べ物の中には、腐っている食べ物だけではなく、犬が食べては危険な食べ物が含まれていたり、少量でも中毒症状を引き起こす可能性のある食べ物が含まれている可能性があります。
まとめ
「犬は腐った食べ物を食べても大丈夫なのか」という疑問ですが、腐った何を食べたのか、どれくらいの量を食べたのか、状況によっても大きく変わります。全く症状が出ない犬もいますし、軽度・中度・重度な体調不良を引き起こす犬もいます。
大切なことは、飼い主さんの自己判断によって、応急処置をしようとしないこと。どのような処置や治療が必要なのかは、獣医師によって適切に診断されます。腐った食べ物を食べてしまったと気づいたら、すぐに動物病院へ連れて行ってあげましょう。
もともと犬は常に獲物を捕らえることができないために、食べ残した分を隠す習慣がありました。隠した肉は腐敗してしまいますが、犬はそのような肉でも食べてしまうので「腐肉食者」と表現されることもあります。
一方猫は捕らえた小動物をその場で食べるが食べ残しは決して食べないことから「新鮮肉食者」と呼ばれます。現在の家庭犬にはこのような習性はほぼないようです。