老犬がお漏らししてしまう原因5選
1.排尿コントロールのメカニズム
まず、「お漏らし」に対して、なにか対策を考える時、まず、排尿のメカニズムについて知っておく必要があります。
まず、尿は腎臓で作られます。そして、その尿は膀胱に溜まります。そして、膀胱に尿が溜まると、その情報が膀胱周辺に集まっている神経を伝って脳に伝達されます。そうすると、脳で「オシッコをしよう」と決定され、その決定事項が尿道の働きを司っている神経に伝わり、尿道が開きます。
そうすると、腸壁や骨盤付近の筋肉も同時に伸縮し、尿道を通過してきた尿が体外へと排出されます。そのプロセスが問題なく機能していれば、「お漏らし」をしてしまうことはありません。
つまり、「お漏らし」をしてしまうということは、排尿コントロールシステムになんらかの異常が起きているということになります。
2.筋力の低下
筋肉は、加齢とともに痩せて衰えてきます。足腰の筋肉だけではなく、排泄機能を司る内臓付近の筋肉も衰えます。まず、足腰の筋肉が衰えれば、自分の体重を支えて立つことが難しくなります。
また、排泄機能を司る内臓付近の筋力「尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)」や尿の排泄をコントロールする膀胱付近の筋力が低下すると、膀胱付近の筋肉が緩んでしまい尿がたくさん溜まってしまうと、お漏らし(失禁)をすることがあります。
3.ホルモン系の疾患
「ホルモン反応性尿失禁」と言い、避妊手術をした女の子にまれに見られる疾患です。また、ホルモンを分泌する機能が衰えると、膀胱や尿道付近の筋肉も機能が低下します。手術直後におこるよりも、2~3年後におこることの方が多い病気です。
4.膀胱炎、尿路結石など泌尿器系疾患
老化によって体力が低下し、感染症によって膀胱炎を起こしたり、何らかの理由で尿路結石を起こしてしまい、お漏らしがおこることがあります。
去勢手術を受けていない老犬の場合は、前立腺肥大や膀胱腫瘍などもお漏らしの原因として考えなければなりません。
5.神経系の疾患
椎間板ヘルニアや脳腫瘍などが原因で、排泄機能に関わる神経になんらかの疾患が生じて尿の排出をコントロール出来なくなります。
老犬のお漏らしにどうやって対処するべき?
動物病院を受診する
まずは、動物病院を受診します。シニア期の場合、お漏らしをするほど老化が進行しているのであれば、なにか異常がなくても、少なくても一カ月に一度は定期的に診察を受け、健康状態を把握するようにしましょう。
お漏らしに関しても、獣医さんに相談することでお漏らしの原因を確定し、病気なら病気への対処、筋肉低下が原因ならリハビリについてのアドバイスなどを受けられることが出来ます。
簡単に汚れ防止が出来る工夫をする
ペットシーツを大きなものにする、トイレの場所を増やす、おむつをつけるなどお漏らしをしてしまっても、簡単に汚れを落とせたり、汚れが付きにくくなる工夫をしましょう。
排泄の日誌を付ける
人間の子どもさんにトイレトレーニングをするのと同じように、トイレの回数や量を日誌などに記録しておきます。そうすることで、前もってトイレに連れて行ったり、トイレ介助のタイミングを掴むことが出来ます。また、色やニオイ、量も記録しておくと、体調の変化にも早く気付けます。
排泄が出来たことを褒める
愛犬にとって、飼い主さんに笑いかけられることほど嬉しいことはありません。例え、お漏らしをしてしまっても、オシッコがちゃんと出たことを喜んであげましょう。決して、叱ったり、落ち込んだ顔を見せて、愛犬の心を傷つけてはいけません。
愛犬にも飼い主さんにも負担が少ない方法を考慮する
お漏らししてしまう原因によっては、手術や投薬、介護が必要になる場合もあります。毎日になると飼い主さんが負担を感じることもあるでしょう。
まして、小型犬と大型犬とでは、介護の負担に大きな違いがあります。愛犬のために頑張りすぎて飼い主さんの方が参ってしまわないように、出来るだけ愛犬にも飼い主さんにも負担が少ない方法を考慮しましょう。
そして、どうしても疲労困憊し、疲弊してしまった時には獣医さんや、老犬介護の専門家に相談し、アドバイスを仰ぎましょう。
まとめ
長い間、たくさんの思い出と心の癒しを私たち飼い主に与えてくれた愛犬が、老いて体が動かなくなり、少しづつ弱っていく姿を見るのはとても辛いことです。
お漏らしをしてしまうことは、愛犬自身にとっても辛く、悲しいことでしょう。老化現象、病気など様々な原因が考えられます。お漏らしが増えたなと感じた場合は、「歳だから」と年齢のせいにするのではなく、動物病院を受診してお漏らしが起こる原因がないかどうか調べてもらいましょう。治療することでお漏らしが軽減すれば、老犬が快適に暮らせるようになります。
特にお漏らしの原因が見つからなかった場合は、生活上の工夫が必要になるかもしれません。それについても、動物病院や介護を専門としている方たちにアドバイスをしてもらいましょう。