犬も声変わりするの?
結論から申しますと、犬も声変わりをします。
子犬の頃は「キャンキャン」「クゥーンクゥーン」という高くて可愛らしい声で鳴きますが、成犬になると「ウオンウオンッ!」や威嚇のときなどは「ガウウウウウ・・・」というように重く低い声に変わります。これは犬種や性別に関係なく、どの犬においても起こりうる声の変化です。
犬も声変わりする
まず、人間の声変わりの仕組みについてご紹介します。
人間でいうと、10~15歳にかけて男性だけが声変わりをします。これを「第二次性徴」といい、男性ホルモンの影響で喉の甲状軟骨が発達し、分厚くなります。これが喉仏です。
そのときに甲状軟骨とつながっている声帯が引っ張られることで声帯が延び、声を発するときの振動数が減るため声が低くなります。女性は経験することができない、男性特有の成長の過程ですね。
では、犬の声変わりはどのような仕組みなのでしょうか?
犬にも甲状軟骨は存在しますが、実は犬は人間のように甲状軟骨が発達することはありません。犬の声変わりは、成長して体が大きくなるに比例して喉や首の筋肉が発達することによって起こるからです。
人間で例えると、成長とともに自然と筋肉がついたり身長が伸びたりすることと同じなのです。そのため、子犬から成犬へ変わる年齢(6~8歳)の頃に声が変わるのです。
小型犬と大型犬の声の違い
ここで疑問なのが、小型犬と大型犬の声の違いです。
成犬になると喉や首の筋肉の発達によって声が低く重くなるとご紹介しましたが、小型犬は成犬になっても「キャンキャン!」と高い声を出します。
なぜ、同じ成犬同士であっても小型犬と大型犬は声に違いがあるのでしょうか?
それは、体の大きさが違うためです。
声は犬や人間が発する「音」の一種なので、振動数や反響が大きく関わってきます。小型犬と大型犬の体格の違いやマズルの長さ、声帯の長さや厚さなどによって振動数や反響の度合いも変わってきます。
つまり、成長して体が大きくなる大型犬は反響する範囲が広いため声が低くなり、成長しても体が小さいままの小型犬は反響する範囲が狭いので声が高くなるのです。
他の病気にも注意!
犬の声がかすれていたり枯れているような音の場合は、病気の発症のサインかもしれません。この場合、喉の病気である「ケンネルコフ」、もしくは「気管虚脱」が考えられます。
- ケンネルコフ
別名「伝染性気管支炎」ともよばれ、細菌やウイルスの感染が原因といわれています。生後6週~6ヵ月の子犬が発症するケースが多く、乾いた咳や発熱、荒い呼吸、食欲不振などの症状があらわれます。
咳止めや抗生剤などの投与で約2週間で回復しますが、症状が悪化して肺炎など他の病気を併発してしまうと、重症となる恐れがあります。
- 気管虚脱
気管を覆う気管軟骨が歪んだり潰れてしまう病気を、気管虚脱といいます。気管は口や鼻から肺へと続いているため、気管虚脱を発症すると呼吸が苦しくなったり、「ガーガー」といったアヒルのような声を出すようになります。
- 犬も人間と同じように声変わりをする。
- 声がかすれていたりなどの違和感を感じたら動物病院で診てもらいましょう。
犬の声帯切除手術について
実は、犬の声帯を切除する手術があるのをご存じですか?
国によっては禁止されている手術ですが、私たち飼い主と愛犬をつなぐ大事なコミュニケーションツールである鳴き声を、なぜ無くすようなことが行われているのでしょうか?
犬の声帯切除手術とは
犬の声帯の一部または全てを切除する手術を、声帯切除手術といいます。声帯の一部をレーザーなどで切除する手術法を「口腔アプローチ法」といいます。手術時間が短く費用も安いですが、効果が長続きしないケースもあるようです。
声帯の一部~全てを切除する手術法を「咽頭切開」といいます。効果は長続きしますが、手術時間が長いため体への負担が大きく、費用も高いようです。
犬の声帯切除を受ける理由
声帯切除手術は声の大きさを抑えたり、また声を永久的に無くすことが目的として行われています。
手術を受ける理由として、
- 「犬の声がうるさい」と近隣住民からクレームを受けたから
- 無駄吠えが多いから
- しつけが面倒だから
- 何度トレーニングしても改善がみられないから
などが挙げられます。
声帯切除を避けるための対策法
「犬はなぜ吠えるのか」「犬はなにを伝えようとしているのか」を見直してみましょう。
犬の吠えのトレーニングは、時間もお金もかかります。
しかし、本当に愛犬を愛しているのならば、飼い主さんは本気になるはずです。
- 手術を受ける理由の多くが、飼い主または近隣住民が「声がうるさい」と感じていること。
- 「永久的に声が出ない」という事実をもう一度改めて考える。
犬の鳴き声には意味がある!
犬の鳴き声には数種類存在し、伝えたい気持ちによって鳴き声も変わります。鳴き声の意味が分かれば、愛犬とのコミュニケーションがもっと深まりますよね。
ここでは、犬の鳴き声に込められた気持ちをご紹介します。
「ワンワン!」「キャンキャン!」などの短く強い鳴き声
- 警戒している(知らない犬や人と出会ったときなど)
- 楽しい、嬉しい(遊んでいるときなど)
- 飼い主さんの気を引きたい
「クゥーンクゥーン」などの高い鳴き声
- 飼い主さんに甘えたい
- 飼い主さんに構ってほしい
- ひとりで寂しい(お留守番のときなど)
- 飼い主さんにしてほしいことがある
「ガウウウウウ・・・」などの低い唸り声
- 強い警戒心を持っている
- 楽しくて興奮している(上半身だけ低くしたり跳ねたりしたとき)
まとめ:犬の鳴き声は大切なコミュニケーションツール!
祖先であるオオカミは野生の中で集団で生活し、外敵から自分や家族を守って生き抜いてきました。そのときに活躍したのが鳴き声です。吠えることで外敵を追い払うだけでなく、鳴き声を出すことで仲間とコミュニケーションをとっていました。
人間と一緒に狩りなどの仕事をし始めてからも、飼い主とのコミュニケーションツールは鳴き声でした。人間と共生している現在はそれに加え、犬の優れた学習能力によって状況や性格を駆使し、さまざまな鳴き声を出すようになりました。
犬の声帯切除手術には賛否両論がありますが、私個人としては手術を受けてほしくないと思っています。
もちろん、「喉に腫瘍ができたため」などの命に関わる病気を発症して声帯切除手術を受けざるを得ない状況であれば話は別です。しかし「うるさいから」「しつけが面倒だから」という理由は、なんとも悲しい気持ちになります。
犬にとって鳴き声は喋る声です。飼い主さんに伝えたいことがあるから鳴き声を発しているのであって、それを聞き入れて気持ちを汲むのが飼い主さんの役目となります。