犬が人に触られて喜ぶ理由
安心するから
犬は出産時、生まれてきた子犬の羊膜を母犬が破りへその緒をかじり切った後、濡れた子犬の体を一心不乱になめ上げます。この「舐める」という刺激で子犬の体表の血液循環を促進したり、肺呼吸を促したりするのです。
ひとしきり舐めて刺激を与えると、子犬は産声を上げます。その後は母犬の乳を求めて自分から吸い付きに行きますがその時も母犬が舐めて転がしてあげたり、移動を手伝ってあげたりしています。授乳が終わるとすぐにお尻を舐めて排泄を促し、おしっこやうんちを母犬がきれいになめとってあげます。
このように子犬は産まれてからひたすら母犬になめられて育ちます。多少大きくなっても同様で、母犬だけではなく兄弟犬ともお互いに舐めあってスキンシップを図る動物です。この心を許した相手との「舐めあい」が犬にとっては愛情表現であったり、コミュニケーションの一環だったりするわけです。
人に飼育されている場合はこの愛情の向く先が飼い主となります。人間の手や顔を舐めようとしたりする犬は、お母さんに甘えているのと同じ行動ですし、人の手で撫でられる、触れられるというのはお母さんに舐めてもらっているのと同じ感覚になるのでしょう。
撫でられてそのうち寝てしまうというのは安心できる相手に体をゆだねてほっとしている状態なんですね。
飼い主を独り占めできるから
撫でてもらうのが好きな犬ですが、見ず知らずの人や犬が不安を覚えたりする人に触れられるのは好みません。むしろ不安が勝るので、触らせずに逃げてしまうことがほとんどでしょう。
しかし一度心を許した相手の場合はとことん触らせに来る犬がいます。その際、多頭飼育をしているとよく見られるのですが、犬同士がライバル心でもあるかのように我先にと触られに来るのです。
一頭をなでているともう一頭が割り込んで頭を突っ込んで来たり、賢い子の場合はおもちゃで他の犬の気を引いておいて遊んでいる隙にひとりだけ触られに来ようとしたり、我先に撫でられに来るのです。
こういう場合は撫でられて安心をしたいというより、飼い主、あるいは大好きなお客さんの関心を独り占めしたいという独占欲を満足させるためといえるでしょう。
犬が撫でられたい個所
経験的に知っている方も多いと思いますが、犬たちにとって「触られたい場所」というのをいくつかご紹介しましょう。
肩回り
ちょうどカラーが付いていたりする場所ですね。首の周辺から肩、あとは胸元のあたりになります。
触れてみるとわかるのですが、この部分は犬の重い頭部を支える筋肉でがっちりしています。寝そべってリラックスしているときなどは、後頭部から肩甲骨のあたりをマッサージするように撫でてあげると良いかもしれませんね。
あごの下
ここも犬が喜ぶポイントでしょう。顎の下から首にかけて撫でてあげると「たまらん」という表情になると思います。
腰からしっぽの付け根
ここは骨盤周辺の神経が集まっている場所です。そのためちょっとの刺激でくすぐったくなったりするようで、こちょこちょと触ってあげると身をくねったり、後ろ足がぱたぱたとお腹周辺を掻く真似をしたりします。
ここは触れられて嫌いな場所ではないようですが、好みもあるので嫌がる場合はすぐにやめてあげましょう。
犬に触れるときの注意点
どんな犬にも個性というものがあり、それぞれ性格も異なります。大部分の犬が触れられて嬉しい場所も、ある犬には触れてほしくない場所である可能性もあるので、触っているときは犬の様子をよく観察してください。
また、よそのお宅の犬の場合も注意が必要です。うちの子はこれが好きなんだけど、というのが通用しない場合もあるので、事前に飼い主さんに聞いてみるもの良いでしょう。
また、犬は頭の上から近づいてくるものに警戒する習性があります。慣れていない犬に触れる際は、顔の正面あ頭の上から手を下ろしていきなり触ると驚かしてしまい、吠えたり噛んだりというトラブルになることもありますので、犬に手を出すときはなるべく下から(犬によく見えるところから)してあげると良いですね。
まとめ
犬にとって安心できる人、あるいは大好きな人に撫でられるのは大切なスキンシップであり、至福のひと時となります。触れている私たち人間も、ほっと癒される気持ちになるでしょう。
お互いに心地よいスキンシップとなるよう、日頃からたくさん触って癒しってくださいね。