満月の日は犬が狂暴になるってホント?
「満月の日は犬が狂暴になる」という話を聞いたことがある人もいると思いますが、結論から言うと科学的根拠や疑いようのない事実として、認められるだけの事実は今のところないとされています。
犬だけでなく人間を含めたあらゆる動物と月の満ち欠けには、何らかの関係性があると古くから考えられており、“月と狂気効果”として多くの調査や研究が行われています。そのひとつのテーマに満月の日に犬による咬傷事故が増加するということが挙げられますが、この結果についても肯定派と否定派ではっきり分かれています。
アメリカやイギリスで行われた調査では満月の日に咬傷事故の数が著しく増加したというものがあり、「満月と犬の狂暴性に関連性がある」と結論付けられました。その一方、オーストラリアやフランスで行われた調査では満月と咬傷事故数の法則性は見つけられないとして「一切関連はない」と結論付けています。
世界中で”月と狂気効果“について注目されていますが、上記のようなことから現時点では科学的根拠が乏しく、犬の狂暴性と月の満ち欠けに関連性はないというのが一般的な考えとなっています。ただし、現時点では根拠が見つけられていない都市伝説のような事象でも、時が経ち研究や実証が進むことでまた別の結論が見つかることも十分考えられます。
満月と犬の狂暴性に関する噂はどこから?
満月の日は犬が狂暴になるとして咬傷事故数の調査などが行われていますが、そもそもなぜそのような説が世界中で広まったのでしょうか?
まず、犬と満月で多くの人がイメージするのが『狼男』の存在ではないかと思います。『狼男』は1940年代に生まれた映画で、『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』に続きユニバーサル社が新たなスターとしてつくり出したホラー映画です。満月の日に狼男に変身して自分の意思に関係なく殺人を犯してしまう男の話で、これ以降もシリーズ化やリメイクされるなどして広く知られる作品となりました。
また、「月と狂気が密接に関わっている」という迷信も大きく影響していると考えられます。この考えはかなり古くからあるもので、古代ギリシャの哲学者アリストテレスやローマの歴史家大プリニウスなども「水分を多く持つ人間の体は潮の満ち引きを作り出す月によって多大な影響を受ける」といった発言を残しています。
さらに、古代ローマの女神「Luna」を語源としている「luna(ルナ)=月」には「lunatic(狂気に満ちた)」「lunacy(狂気)」などの派生語があり、月と狂気に密接した関連性があると考えられていることがうかがえます。
犬と満月の不思議な関係性
満月の日に犬が狂暴になるという説については、古くからある迷信や映画などのイメージによってつくり出されたもの。科学的根拠はないものの、全く影響がないとも言い切れないといったところで明確な答えは見つかっていません。
しかし、犬と満月については狂暴性以外にも関連があると考えられていることがあります。米国獣医師会のジャーナル『Journal of the American Veterinary Medical Association』に掲載されたレポートによると、犬や猫の怪我・病気が満月になると急激に増えるということが報告されているのです。
コロラド州立大学獣医学センターの犬猫の救急外来受診数を分析したところ、満月を挟んだ前後数日間の受診件数が、その他の日に比べて犬の場合23%も高いということがわかったそうです。実際に救急外来で働く獣医師や看護師たちも体感的に満月の日の受診件数が多いことを把握していますが、なぜ満月の日に受診件数が増えるのかはわからないとのことです。
まとめ
私たち人間や犬を含めた動物と満月には何らかの関係性があり、狂暴性が高まったり犬自身の怪我や病気が増加する傾向にあったりすると言われています。これらについては世界中で様々な実証や調査が行われていますが、今のところ明らかな関連性や科学的根拠などは見つかっていません。しかしながら、犬と満月には何らかな関わりがあると結論付けている研究もあるため、今後も注目していきたいところですね。