犬のリラックス法①体をなでる
犬を飼っている人は、毎日のように愛犬の頭や体をなでていると思います。ただただ「かわいい」と思ってなでているだけかもしれませんが、それが犬にとっても癒しの時間になっていることは少なくありません。
リラックスさせるためには本格的なツボマッサージやリンパマッサージなども効果的ですが、ただ優しくゆったりとなでるだけでも犬は十分にリラックスすることができます。
犬をなでてリラックスさせたい場合には「なでる速さと場所」がポイントになってきます。犬をリラックスさせるためには、ゆっくりと毛の流れに沿ってなでることが大切です。
毛を逆立てるようにすばやくわしゃわしゃとなでると犬は興奮しやすくなります。遊んでいるときなどにそのような撫で方をすると犬のテンションが上がり、より盛り上がると考えられています。
また、犬がなでられて心地よいと感じる部分をなでることも大切です。首や耳の後ろ、頬、胸からお腹、後ろ足の付け根などはなでられて喜ぶ犬が多い場所です。
反対に足先や尻尾などは神経が多く敏感な場所なので、リラックスさせたいときには避けるようにしましょう。
辻本由香子
体を撫でられるという行為は、犬が持つ最大の知覚組織である皮膚を介して知覚され、穏やかで優しく撫でられれば、ペットからも人間からも「オキシトシン」といったホルモンが分泌されます。
オキシトシンは、脳の視床下部に作られるホルモンの一種で、気分を安定させたり、信頼感や幸福感をもたらしてくれる働きをしてくれるため、ぜひとも沢山優しくなでてあげてください。
犬のリラックス法②Tタッチ
犬のストレスを軽減してリラックスさせる方法として有効だと言われているのが『Tタッチ』です。
犬の体に触れるためマッサージと同じだと思われることもありますが、Tタッチはマッサージのように筋肉をもみほぐすのではなく、独自のタッチ方法によって筋肉より上にある皮膚直下の層にアプローチするものです。
皮膚のすぐ下にアプローチすることで脳に刺激を与えて細胞の機能を活性化し、ストレス軽減効果のあるホルモンを分泌させるというのがTタッチのメカニズム。
またTタッチには不安やストレスが要因となっている、犬の問題行動を改善する効果もあると言われており、ドッグトレーナーや行動学者なども注目しています。
非常に憶病・神経質ですぐに吠えてしまう犬や緊張や興奮から散歩で引っ張るくせのある犬、落ち着きのない犬などには特に有効で、ストレスを和らげることで問題行動そのものが減少したり、集中力が高まってしつけ・トレーニングなどの学習が進みやすくなったりします。
このようなことからTタッチは強いトラウマを抱えている犬やレスキューされた保護犬、母犬から早く引き離された犬など、精神的に不安定になりがちな犬のケアにも役立てられています。
辻本由香子
Tタッチは人々に自分の体の存在を気付かせる「フェルデンクライスメソッド」と言われる体を動かすエクササイズから進化したものです。
秩序を持たない弧を描く指の動きを犬に施すことによって、犬をリラックスさせトレーニングする際の下準備などにも有効と言われています。
犬には柔らかさと強さを意味する「クラウデッド・レパード(豹の形をした雲)」という名前の弧を描くTタッチ方法が最も頻繁に用いられています。
犬のリラックス法③アロマテラピー
私たち人間が香りによってリラックスするのと同様に、犬もアロマテラピーで精神的な安定を得ることができます。
植物から抽出された精油(エッセンシャルオイル)を利用し、香りをかいだりマッサージなどに利用して皮膚に浸透させたりして、それぞれの効果・効能を得ます。
鼻からかいだ香りが神経に伝わり脳の領域へと達することで、精油の持つ様々な効果が発揮されますが、使用する精油によっては犬をより不安にさせてしまったりすることもあるので注意しましょう。
また、犬にアロマテラピーを行う場合には、犬には使用してはいけない精油や希釈濃度など気をつけなければならないこともあるので、それぞれの注意事項などをきちんと確認した上で行うようにしましょう。
辻本由香子
アロマテラピーで使用する「精油」には、心のケアだけではなく、体に対するケアにも美容や健康維持にも役立つと言われています。
また、現在の研究では犬の嗅覚は人間の怒りや悲しみといった喜怒哀楽の匂いさえも嗅ぎ分けられるのではないかと言われているため、飼い主様と愛犬双方がアロマテラピーによってリラックスすることは、心身のバランスや自然治癒力を高めてくれるとても良い方法とも言えるでしょう。
犬のリラックス法④音楽
音楽が好きで聞いている時間はリラックスできるという人も多いと思いますが、実は音楽の力は犬にも影響を与えるということが最近の研究でわかりました。
イギリスのスコットランド動物福祉慈善団体とグラスゴー大学による共同研究で「音楽が犬の行動に与える影響」について調べられ、そこで犬は「レゲエ」「ソフトロック」を聞くとストレスレベルが低下するということが判明したのです。
研究では犬に「ソフトロック」「モータウン」「ポップス」「レゲエ」「クラシック」の曲を聞かせて心拍数を測定しました。さらに、各音楽を聞いている犬がどのような行動を示すかを観察・分析。
その結果、犬は音楽を聞いているとき立っているよりも横になっている時間がとても長くなり、心拍数を測るとストレスレベルが低下していることがわかったのです。
また、それが顕著に現れていたのが「レゲエ」と「ソフトロック」を聞いているときでした。ただし音楽によるリラックス効果は持続時間が短いとされています。
辻本由香子
動物に対する音楽療法の中には528Hzの周波数を出す音楽は犬の副交感神経を刺激し、リラックス効果が得られるとされています。
けれどこの音楽に関する実験に携わった一人であるエヴァンス教授は、「レゲエとソフトロックが一番好ましい」とする一方、「実験結果をまとめると犬それぞれの反応はまちまちだった」とも話していることから、犬によっても好みが違うようなので、その子に合った音楽を見つけてあげてください。
まとめ
人間が日々様々なことでストレスを抱えてしまうのを同様に、犬も生活の中でストレスを抱えてしまうことがあります。
そのストレスを解消するために吠えたり暴れたり物を噛んだり、という本能的な行動を見せる犬も少なくありませんが、それらは飼い主さんを困らせる行動でもあります。
犬のストレスを問題行動につなげてしまわないためにも、体をなでたりTタッチやアロマ、音楽を取り入れたりするなどしてみてはいかがでしょうか。
犬は大好きな飼い主さんんとコミュニケーションを取ることでリラックスし、ストレスを軽減することができるので、ぜひゆっくりと向き合う時間をつくってあげてくださいね。