犬は「揉め事」が嫌い
犬は和を尊ぶ動物
犬は野生時代から、群れの中で生きる習性を持っています。人間と同じように、時には群れの中で揉め事が発生することもあります。しかし、狩りをするのも子育てをするのも群れで協力して行う犬にとって、仲間割れは命にかかわる事件です。
無駄な争いは極力避けようとする
歯をむいて威嚇をしたり噛みついたりといったイメージのある犬でも、基本的には無駄な争いを避けようとします。噛みつくという直接的な攻撃を取る前に、拒否のボディランゲージ→唸る→歯をむくといったように何段階もの前触れがあるのも、揉め事ができるだけ大事に発展しないように自己主張するためです。
犬の前でケンカをすると…
犬は人間の感情に敏感
犬は太古の昔から人間と共生してきた動物です。そのため、犬は飼い主の表情や声色から感情を読み取る能力が他の動物よりも高いと言われています。犬の和を尊ぶ習性もあいまって、飼い主さんやご家族のいる場の空気には敏感です。
ケンカの仲裁はカーミングシグナルの1つ
目の前で他の犬や人間がケンカを始めると、犬はケンカの仲裁をするかのようにケンカをしている者の間に割って入る行動を取ることがあります。まるで人間のようなこの行動は、本当にケンカの仲裁の目的で行っています。これは、仲良くしよう!と相手を落ち着かせる犬の「カーミングシグナル」の1つなのです。犬は本能的にケンカを仲裁するという行動を取るのです。
犬にとって大きなストレスとなる
犬の前で飼い主さんやご家族がケンカをしてしまうと、犬は本能的にとても不安になります。口論がエスカレートして大声で怒鳴ったり、物に当たったりすると、さらに犬は恐怖に陥ります。ただでさえ犬は大きな音や怒鳴り声などが苦手なので、こうなってしまうともう最悪な状況ですね。
それは犬が飼い主さんを始め、ご家族のことを「自分の大切な仲間」だと思っているためです。このような恐怖や緊張状態が続くと、犬にとって大きなストレスとなってしまいます。
犬は飼い主さんに不親切な人を嫌う
2015年に発表された犬の実験
2015年6月、京都大学の藤田和生教授らが、犬に関するある実験結果を発表しました。その実験では「犬は飼い主に不親切な人を嫌う感情がある」という結果が出ました。実験内容は犬、その飼い主、2名の他人によるもので、飼い主が箱の蓋を開けるという作業をする際に2名の他人が飼い主にどう接するのかといった様子を犬に見せました。
他人の飼い主への接し方を犬に見せる実験
飼い主以外の2名の接し方は、飼い主に「協力する人と何もしない人」「飼い主に背を向けて協力しない人と何もしない人」などと対応を分けて実験をしました。そして、実験の終了時に飼い主以外の2名が犬に餌を同時に差し出しました。犬がどちらから餌をもらいたがったか、というところが観察のポイントとなります。
実験結果
その結果、「顔を背けて協力しない人」がいたパターンでは「何もしなかった人」の方から餌をもらう回数が多く、他のパターンではどちらから餌をもらうかに差は出なかったのです。この結果から、犬は飼い主に非協力な人を嫌がること、そして犬自身に直接関係ない他者の振る舞いを見て、評価する感情を持っているということが分かりました。
この実験結果から、私たちが思っている以上に犬は私たち人間のことをよく見ていることがわかります。言葉が分からなくても、態度で犬に伝わってしまうということを忘れずにいたいですね。
まとめ
今回は、人間同士のケンカと犬について解説いたしました。犬が人間同士のケンカを嫌がる理由は
- 群れで生きていく習性があるから
- 無駄な争いを避ける習性があるから
- 他者の様子を理解し評価するから
など、犬の特性に大きく関係しているものです。犬がケンカをしている他者の仲裁をするのはカーミングシグナルの1つで、犬同士だけでなく人間のケンカにも割って入ることがあります。犬の前で飼い主さんやご家族がケンカをしてしまうと、犬は不安や緊張、恐怖などを感じてストレスを受けてしまいます。わんちゃんのためにも、ご家族間のトラブルは穏やかに解決するようにしましょうね。