犬の本能
まず、知っておいてほしいのは、わんこがごはんをがっついて食べてしまうのは、抗い難い本能のためだということです。人間の場合、がっついて食べているとしつけがなっていないと思われたり、育ちを疑われたりすることもありますが、わんこの場合は、しつけやトレーニングではどうにもならない面があるのです。
ごはんを奪われないようにするため
いわずもがな、野生の世界では、食べものはいつでも手に入るわけではありませんし味わって食べるという習性を持っていません。そのため、やっと手に入ったごはんを他の誰かに奪われないよう、なるべく速く、そして、食べられるだけの多くの量を食べようとするのです。
味覚が発達していないから
わんこは嗅覚や聴覚が発達している一方、味覚は人間ほどには発達していません。みなさんも、愛犬のために奮発して買った特別なごはんやおやつを、パクッと丸飲みされてしまい、「もっと味わって食べてよ!」と思ったことはありませんか?ですが、残念ながらこの「味わって食べる」行為は、わんこには無理な注文なのです。動物の味覚は、食べられるものか食べてはいけないものかを判断するために苦みや酸味、また積極的に食べた方がいいものを区別するためにうま味や甘味、塩味に対する味覚が発達してきました。それらの味覚によって「食べられる」「食べるべき」と判断できれば、それ以上味覚を使う必要はないのです。
お腹が空いている
また、過度の空腹のためにがっついて食べてしまう場合もあります。愛犬がごはんの時間以外にもおやつを欲しがったり、ごはんの時間を執拗に迫ったりするなど、「もしかして?」と思ったら、下記の点を見直す必要があるかもしれません。
ごはんの量が足りていない
成長過程や体調に合わせたごはんの量を与えていないなど、一度の食事で空腹が満たされていない場合があります。フードの量を目分量で与えている場合には、一度、しっかりと計量してみる必要があるかもしれません。
ごはんの間隔が開きすぎている
食事と食事の間隔が開きすぎていると、その間に食べた分を消化しきってしまい、空腹になってしまいます。また、食事間隔が開きすぎると、胃がからっぽになったことで嘔吐してしまう子もいます。適切な食事間隔は犬の体質や性格、そして飼い主さんのライフスタイルによっても変わりますが、成犬になったら食事の回数は少ない方が良いということはないので、がっついて食べているようでしたら、食事の回数を増やしましょう。何回にも分けて食事を与えることは、愛犬の体に負担をかけるリスクも減りますし愛犬の楽しみを増やすことにもなります。
がっついて食べるリスクとは?
がっついて食べてしまうのはある程度仕方ないこととはいえ、やはり、あまりにがっつきがひどいと健康へのリスクもあります。
消化不良になりやすい
人間も同様ですが、がっついて食べているときというのは、食べものをあまりよく噛んでいないですよね。そのため消化不良を起こしやすく、胃腸への負担を大きくしてしまうリスクがあります。もともと犬はあまり噛まないで食べる動物ですので、ドッグフードであれば噛まないで食べていても問題にはならないでしょう。しかし、ジャーキーやガムなどのおやつを噛まずに大きいまま飲み込んでしまうと胃に長時間とどまり、消化不良を起こすことがあります。
胃拡張・胃捻転
また、もう1つのリスクが胃拡張・胃捻転です。胃拡張とは、様々な原因で胃の中にガスが異常に充満することで、胃捻転とはその膨らんだ胃がねじれて様々な臓器で血行障害が生じてしまった状態のことです。がっついて食べると食べものと一緒に大量の空気を飲み込みやすくなってしまいます。胃拡張・胃捻転の原因はそれだけではありませんが、胃拡張・胃捻転を防ぐためには、最低限がっつき食いはやめさせたいところです。特に大型犬、胸の深い犬種に多い病気のため、愛犬が大型犬やそのような犬種の場合には特に注意が必要ですが、小型犬でもどんな犬種でもなる可能性はあります。
がっつき食いを防ぐには?
ごはんをふやかして与える
わんこの総合栄養食は、いわゆる「カリカリ」のドライフードと、缶詰などのウェットフードに大別されます。ドライフードは歯石がつきにくくなるなどのメリットもありますが、食べやすい分、どうしてもがっつきやすくなってしまいます。ドライフードを与えている場合、少しスープやお湯を含ませるなどし、ふやかして与えてあげましょう。ドライフードをふやかすことで、胃の中でフードが水分を含んで膨らんでしまうことが防げます。
おもちゃに詰めて与える
知育おもちゃにフードを詰めて与えるのも有効です。おもちゃがない場合には、空きペットボトルやトイレットペーパーの芯を細工したものでも同様の効果が得られます。コロコロ転がさないと中身が出てこない上、少量ずつしか取り出すことができないので、時間をかけてゆっくり食べさせられます。おもちゃを使って食べ物を食べさせる場合には、そのおもちゃをかじったり壊したりしないように見ていてあげてください。ペットボトルやトイレットペーパーの芯などを利用した手作りおもちゃが壊れやすいのはもちろんですが、市販の知育玩具にも様々なかたさのものがあります。大型犬やしつこく噛む犬、あごの力が強い犬用の商品もありますので、ご自分の愛犬に合ったものを選ぶようにしましょう。
早食い防止皿を使う
最もオススメなのが、市販の早食い防止皿を使用することです。お皿の中がデコボコしていたり、お皿自体が不安定になっていたりと、わざと食べにくい構造にすることで、早食いを防止してくれるグッズです。ペットショップを見ると、様々なタイプのものが市販されていますから、愛犬に合ったものを選びたいですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?ごはんをがつがつ美味しそうに食べてくれる姿は微笑ましくもありますが、あまりにがっつきがひどく、習慣化してしまっている場合には、何らかの対策をとる必要がありますよ。
がっつかないで食べてもらうには、上記の方法以外に「ごほうび」や「遊びの一つとして」フードを与える方法もあります。これは、主食がドライフードの場合に特に使いやすい方法ですね。
しつけのごほうびは犬が喜んで食べてくれれば良いので、「おやつ」や「副食」として売られている嗜好性の高い食べ物をわざわざ用意しなくても普段のフードを利用することができます。普段のフードをごほうびに使うことで、フードを少量ずつ食べることにつながるだけではなく、フードよりも嗜好性の高いごほうびと組み合わせて使うことでしつけに対する犬のモチベーションをうまくコントロールすることができます。しつけに対してごほうびを与えるチャンスはそんなにないという場合には、静かにくつろいでいる犬に数粒のドライフードを飼い主さんの手から与えても良いでしょう。これは「食べ物は飼い主さんがコントロールしている」と犬が意識することにもつながります。
退屈過ぎるのも犬のストレスになる、という考え方が広まってきており、様々な犬の遊びが提唱されています。知育玩具の利用もその一つですが、他にもノーズワークという遊びがあります。犬の嗅覚を使って何かを探す作業をさせる、犬の体だけではなく脳をも使わせる遊びです。タオルや敷物の下にフードを隠し、においをたよりに探させます。最初は人間が遊び方を教えてあげる必要があります。ドライフードを隠すことのできるノーズワーク用のマットも売られていますし、手作りすることもできます。