『QOL』とは?その定義と考え方
ここ数年で人間だけでなく、犬のQOLというものに注目が集まっています。QOLとはクオリティ・オブ・ライフの略語で「生活の質」や「人生の内容」などを意味して使われます。つまりQOLを高めるということは、生活の質を向上し一生を充実させることにつながります。
元々は1960年代のアメリカで「生活の質の向上」が謳われ、その頃からQOLというワードが使われるようになり、世界中に広まりました。人間のQOLの場合は、経済や安全、心身の快適さ、生活文化の充実などから計られることが多く見られます。
具体的には「経済面の困窮や病気・怪我に見舞われず、命の危険にさらされることなどがないこと。また、生活にやりがいや楽しみ、文化的な刺激がある環境で暮らし続けることができること」が基準で、それに近いほどQOLが高いと考えられています。
また、最近では医療の進歩により延命治療が進む中で、QOLを守ることと命をつなぐことのバランスなどが議論の焦点となることも少なくありません。
犬にとっての『QOL』とは何か?
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という言葉は元々人間の生活に対して使われ始めた言葉ですが、近年では犬を含めた動物の生活に対しても使われ、動物のQOLについて考えられることも増えてきました。
犬にとってのQOLの尺度となるのが動物福祉(アニマル・ウェルフェア)の理念として掲げられている『5つの自由』です。『5つの自由』とはイギリスにおいて家畜の劣悪な飼育環境や管理体制を改善し、家畜の福祉を確保するために定められたもので、現在では家畜だけでなく実験動物やペットなど、人間の飼育下にある動物の福祉の基本理念とされています。
<5つの自由>
- 1.飢えや渇きからの自由
- 2.不快からの自由
- 3.苦痛障害病気からの自由
- 4.恐怖抑圧からの自由
- 5.正常な行動を表現する自由
これら5つの項目が動物福祉の基本として国際的に認められ、この日本においても2012年から動物愛護法の基本原則として組み込まれています。犬のQOLについても、この『5つの自由』がどれだけ満たされているかということが基準となって考えられています。
健康を維持するための食事が十分に与えられ、適切な運動や刺激を感じられる生活を送ること。また、生活環境に合う社会性を身につけることなどが、犬にとってのQOLの基準であると考えられます。
また、それが「人間にとっての自由・幸せ」ではなく、「犬という動物にとっての自由・幸せ」であることが非常に重要なポイントとなります。犬が「犬らしく」生きられるように、犬としての本能や習性を満たし、それに合わせた食事・運動・環境を与えることが大切になってきます。
犬のQOLを高めるためにできること
犬の本能や習性を満たす
犬のQOLを高めるためにまず大切なのが、犬という動物が持つ本能や習性、特性を理解することです。人間にとっては快適な環境、良かれと思ってしたことも犬にとっては不快なことであるということも少なくありません。
愛犬にとって適切な運動量や運動の内容はどのようなものなのか、また犬の体を健康的に維持するために必要な栄養素とは何なのか、ということをしっかりと理解することで、どのような散歩を行い、何を食事として与えるべきかがわかってくると思います。
また、犬種によって狩猟本能や独立性を強く持つなど、それぞれ異なる気質があるため、その気質や性格に合わせた接し方を考えて本能を満たしてあげるようにしましょう
居住空間の清潔さや快適性を守る
犬は本来きれい好きで、自分の体や寝床が汚れることを嫌がる動物です。衛生的な問題というだけでなく、においから外敵に居場所を知られないようにするためといった動物本来の習性として残っているものでもあります。
そのため、寝床が汚れていることなどに対してストレスを感じる犬も多いため、常に清潔を維持することは犬のQOLを向上させるために欠かすことのできない要素です。また、気温や湿度も犬に合わせて調整してあげるようにしましょう。
コミュニケーションを十分に行う
犬は元々集団で生活・行動する社会性の高い動物とされています。お互いにコミュニケーションを取りながら、群れを形成し狩りを行って命を守っていくのです。そのため、基本的に犬は一緒に暮らしている人間ともコミュニケーションをとることを望んでいます。パーソナルスペースや犬のペースを乱さない程度に、スキンシップや遊びなどを含むコミュニケーションをとることで犬のQOLはぐっと高まることでしょう。
まとめ
犬が犬らしい生活を充実させることがQOLを高めるために必要なこととなりますが、具体的にどのようなことをしてあげればいいか悩んでしまう人も多いと思います。愛犬のQOLを向上させたいと考えているのであれば、まずは愛犬が本当に「喜ぶことは何か」ということを考えてみてください。
そのすべてを満たすことはできないかもしれませんが、散歩コースに変化をつける、食事内容を見直す、留守番時間を減らすなど、飼い主さんの生活との折り合いをつけながら少しでも犬のQOLを高めてあげられるようにぜひ考えてみてあげてほしいと思います。