信仰と飼っているペットに関連はあるのか?というリサーチ
「〇〇なペットを飼っている人は△△な傾向がある」とか「〇〇を飼っている人は□□しにくい」など、飼っている動物が人々の社会活動や健康状態にどのような影響を及ぼすかというリサーチは数多く行われています。
この度アメリカのイースタンイリノイ大学の研究者が、人々が信仰する宗教と飼っているペットの関連について調査した結果を宗教科学ジャーナル誌に発表しました。
社会調査のデータから宗教とペットの関連を分析
研究者は一般的な社会調査で集められたデータを基に人々が信仰する宗教と飼っているペットの関連を分析しました。2018年の調査ではアメリカ人の60%以上が何らかのペットを飼っています。そのうち約75%が犬を、約40%が猫を飼っていると答えています。圧倒的に犬の人気が高いところは日本とは違う傾向ですね。
ペットを飼育している世帯全体では、平均すると一家庭あたり1.72匹の動物がいます。ここには犬や猫以外にも爬虫類や魚、鳥、馬、うさぎやハムスターなど全てのペットが含まれます。
キリスト福音派、主流派プロテスタント、仏教やムスリムなど「その他の信仰」、宗教に関心がないと答えた人たちは、上記の数字よりも少し多い一家庭あたり平均2匹のペットを飼っています。
カトリックの家庭では平均1.5匹、ユダヤ教徒の家庭では平均0.95匹とペットの数は少なくなります。
ここでも犬は全ての信仰において人気があり、犬を飼っている家庭が半数を下回る信仰はありませんでした。福音派とカトリックは主流派プロテスタントよりも犬を飼う人が多かったそうです。主流プロテスタントはキリスト教の他の宗派に比べて猫を飼う可能性が高いことも分かりました。最も猫を飼っている率が高いのは、宗教には特別な関心はないと答えた人々でした。
教会に出席する率とペットとの関連とは?
もう一つ興味深いデータがありました。キリスト教では教会、他の宗教でも礼拝に当たるものに日常的に行く人ほどペットを飼っている率が低いという傾向があったそうです。
研究者は2つの理由が考えられると述べています。1つは単純に教会や礼拝所の活動に深く関わっている人は、家庭でペットの世話をする時間がないからという可能性です。2つ目は人々が社会的相互作用の代わりとしてペットを飼っているという可能性です。
簡単に言うと、教会で社会的な人間関係を築いている人は、ペットで寂しさを紛らわす必要がないと言うことです。また宗教に関心がない人ほど猫の所有率が高いと言う点とも重なるのですが、教会への出席率が高い人々では猫の所有率が低いことも分かりました。
他の社会科学の研究では、猫の飼い主は社会的に孤立していると言う感情を表現する傾向が強いこともわかっているそうです。
研究者は「この数十年の間に社会は大きく変化しました。かつて人々は社会的なつながりを築き保つために地域のコミュニティ活動や教会に参加していましたが、現代では社会は細分化してSNSがそれらに替わり、ペットはその隙間を埋める存在になっています。」と述べています。
まとめ
アメリカで、信仰する宗教によって飼っているペットの傾向が違うこと、キリスト教徒は犬を好み宗教に関心の薄い人は猫を好む傾向が強いと言うリサーチ結果が発表されたことをご紹介しました。
日本では宗教と言うと敬遠されてしまいがちですが、かつてはお寺の檀家や神社のお祭りといったものが社会的なつながりの基盤となって人々が社会から孤立するのを防いでいたのはキリスト教の教会と同じですね。
そのような存在が少なくなった現代では、犬を飼うことで社会的なつながりを求めたり、猫を飼うことで孤独を癒したりという傾向が強くなっているというのは頷ける気がします。
《参考URL》
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jssr.12637