「犬に話しかけるのは賢い人」という研究!?
インターネットでScience Says Only the Smartest People Talk To Their Dogs(科学が言うことには、最も賢い人々だけが愛犬に話しかけるそうだ)という言葉を検索すると、この内容のいろいろな記事がヒットします。
ほとんどがネットニュースまたは犬関連のサイトですが、中には地方新聞の公式サイトも混じっています。初出は2017年4月で、2019年の10月になってもまだ様々なサイトで記事になっています。
記事の内容は「犬(またはペット)に話しかける人々は、そうでない人々に比べて知性的であることが研究によって分かった」というものです。
私もこの内容の記事を目にしたことがありますが、誰の研究によるものかが明記されていなかったので紹介することもなく読み流していました。
しかし、つい最近になって米国ウェスタンカロライナ大学心理学名誉教授のハル・ヘルゾグ博士が、この記事の科学的な証拠を検証しました。
研究が存在していない!
私が見かけた「犬に話しかける人は知性的」の記事では、どこの誰の研究なのかが書かれていなかったのですが、ヘルゾグ博士はいくつかの記事で「ハーバード大学の心理学者ゲイリー・シャーマンとジョナサン・ハイトの研究によると」という記述を見かけたのだそうです。
そこでジョナサン・ハイト氏に直接メールでコンタクトを取ったそうです。ハイト氏からの返事は何と「私はその研究をしていないし、書かれていることのうち真実はゼロです。なぜこんなことになったのかわかりません。」というものでした。どうやら「犬に話しかける人は知性的」という研究は存在していなかったようです。
ペットに話しかけるのは人間らしさの表れ
他にこれらの記事が犬との会話と知性の関係の根拠として引用しているものに、心理学者のニコラス・エプリー氏とアダム・ウェイツ氏による研究があるそうです。その一部として、人々がペットについてどう思っているかを調査したものがあり、私たち人間は自分の精神状態をペットに投影することがあるとしています。
例えば孤立を感じているとき、そばにいる愛犬に対して「この子は思いやりがある」「この犬は共感的だ」と考えるといったことです。しかし、この研究では、ペットに話しかける人の知性については触れていません。研究者は、人々が自分の精神状態によってペットを擬人化することはとても人間らしい特性であるとしています。
ここでもペットに話しかけることと知性の間に関連があることなど述べられていないのに、どこからそんな説が出てきたのでしょうね?
でも人々がペットを擬人化して話しかけることは人間らしい特性だというのは、ちょっと嬉しくなる説ですね。米国パーデュー大学のヒューマン・アニマル・ボンド研究所の研究者は「ペットオーナーはほぼ100%ペットに話しかける」と述べているそうで、犬に向かって話しかけるのはごくごく自然に当たり前のことのようです。
まとめ
「犬に話しかける人は、そうしない人よりも知性的である」というネット上で紹介されている”研究”は存在しておらず、これはフェイクニュースだったという検証結果をご紹介しました。
犬やその他のペットに話しかけることが高い知性を証明するというのは間違いですが、それはとても人間らしい営みだということは、多くの心理学者や動物行動学者も支持しているようです。大切な家族に話しかけることは当たり前のことですものね。