2014年のイグノーベル賞を受賞した研究
イグノーベル賞とは?
ノーベル賞のパロディという存在で、クスッと笑ってしまうような題材を超真面目に研究したものに贈られるのがイグノーベル賞です。
2014年の生物学賞で
2014年、このイグノーベル賞の生物学賞を受賞したのが「犬は地磁気の極性の変化に対して非常に敏感であり、排便・排尿をする際に体軸を地磁気の南北に合わせる傾向が強い」という研究でした。
犬がうんちやおしっこをするときのソワソワやクルクルの動作に着目するという、クスッと笑っちゃうような研究ですが、考えてみたらものすごく興味深いテーマですね。
地磁気の基礎知識
イグノーベル賞の研究についてご紹介する前に、地磁気について簡単に解説します。
地磁気とは?
方位磁石を使えば、現在の場所を基準にして東西南北を調べることができます。これは地球が大きな磁石のようになっていて、北と南が磁石の両端のように磁力を持っている場所だからです。
中心部の高温の鉄の流動によるパワー
地球の中心部では、鉄が高温に溶けたものが流動しています。その流動によって電気が流れ、地球の岩石が磁力を帯びます。この地球の磁力のことを地磁気と呼びます。地磁気に方位磁石が引っ張られて反応することで、方角を調べることができるのです。
北と南は一定ではない
地磁気は自然現象の影響を受けるため、一定ではなく常に変化しています。数十年から何百年という時間をかけて南北の位置がずれていくこともあれば、磁力の強さも変化します。気象庁には地磁気観測所があり、地磁気の変化を観測や解析をしています。
犬の排泄前のクルクルについての研究
1,893回のうんちと5,582回のおしっこを調査
2014年のイグノーベル賞生物学賞を受賞したのは、チェコ・ドイツ・ザンビアの研究チームの研究です。研究チームは2年間にわたり、37犬種の犬70頭の1,893回の排便と5,582回の排尿を観察し「頭とおしりを繋いだ身体の軸の向き」について調査しました。
身体を南北の軸に合わせて排泄する
この観察結果と地磁気との関係性を、日ごとの地磁気の変化も含めながら照らし合わせました。すると「磁場の変化が静かなときほど、犬は排泄をする際に身体の軸を南北の軸に合わせている」という結果が出ました。この結果から、哺乳類は地磁気の強さの変化よりも、極の位置の小さな変化に敏感に反応することが分かりました。
ノーリードでオープンスペースが条件
より自然な状態での犬の排泄を観察するためには、リードを付けずに野原や森などのオープンスペースで観察する必要があります。犬が何の束縛も基準も持たないように、壁や高圧電線、高い建築物がなく、自動車の往来がない場所で観察することが条件でした。
飼い主さんの中には愛犬でこの研究を確認した方もたくさんいらっしゃいましたが、この条件下ではないわんちゃんの排泄だと必ずしも南北を向かないことも多くあるようです。
なぜ南北なのかは謎
なぜ東西ではなく、南北なのかが非常に興味深いところではありますが、なぜ犬が南北の軸に合わせて排泄するのかはまだ判明していません。可能性の1つとして、動物にとって排泄することはとても無防備な状態になるため、南北に身体を合わせると何らかの理由で安心して排泄できるのではないか、という考えがあります。
磁力が生まれるのはS極とN極なので、北と南を基準にして東西の方向は決まります。もし犬が地磁気を感じ取って排泄しているなら、南北の方が感知しやすくしっくりくるのかもしれませんね。
まとめ
2014年のイグノーベル賞生物学賞を受賞した研究によると、犬は排泄の際に身体の軸を南北に合わせる傾向があるということが分かりました。この研究ではノーリードでオープンスペースでの排泄という条件があるため、一般家庭では南北を向かずに排泄することもあるようです。
なぜ南北なのかはいまだ解明されていませんが、犬が地磁気を感じ取っているということは神秘的で興味深いことですね。もしこの研究の条件が叶うならば、愛犬のうんちタイムにぜひ確認してみたいですね!