犬は足音で飼い主を判断しているのか?
犬は姿が見えないときでも、飼い主の足音を聞き分けることができるのではないかと言われています。そのため外出先から帰宅したときなど、ドアを開けた瞬間から玄関で愛犬が待っている、などということはよく聞かれる話です。
また、足音だけでなく飼い主の帰宅を知らせるものであれば、ほかの音でも聞き分けていると考えられており、車のエンジン音やドアの開閉音、ポストを開閉する音、鍵を取り出したときの金属音などを敏感に察知して、帰宅を予測していると考えられているのです。
【実験】飼い主の足音に対する犬の反応
犬が飼い主の足音を聞き分けているのではないかということに関して、通説を確かめるための実験が京都大学・比較認知科学の藤田和生教授とはじめとするグループによって行われました。
チワワやポメラニアン、雑種など、様々な犬種で行われたこの実験は犬が飼い主の微妙なくせを覚えて、その音を聞き分けているのではないかというもの。
窓やドアを閉め切ったマンションの一室に犬を入れ、犬が知らない人に部屋の外を2往復してもらい、足音を聞かせた後に ①その人が入ってくる②飼い主が入ってくる、反対に飼い主の足音を聞かせた後、③飼い主が入ってくる④知らない人が入ってくるという4パターンで犬の反応を調べました。
入ってきた人に対する犬の反応として、どれくらいの時間相手を見つめているかを比較。知らない人の足音を聞かせた後に飼い主が入ってきた場合では、知らない人が入ってきた場合よりも見つめる時間が長いという結果になりました。
犬は期待や予想に反する現象が起きたとき、驚きの気持ちで相手を見つめるため、知らない足音の後に飼い主が入ってきたことで驚いたのではないかと考察されました。
飼い主の足音を聞かせた後は、飼い主が入ってきても知らない人が入ってきても見つめる時間に差はありませんでした。この場合、単純に知らない人よりも好きな飼い主を見つめることを好むため、驚いて知らない人を見つめる時間と差が生まれなかったのだと考えられています。
飼い主の足音を感知する犬の優れた聴力
京都大学で行われた飼い主の足音に対する犬の反応を確かめた実験の結果から、藤田教授は「歩き方のリズムや左右のちょっとしたアンバランスなどの癖を知っているのではないか」とみており、それを優れた聴力によって聞き分けているのであろうとしています。
犬の聴力が人間に比べて優れているのは、何も「大きく聞こえる」ということだけではありません。人間は平均的に約20~20,000ヘルツの音域を聞き取ることができるとされていますが、犬の場合は約40~65,000ヘルツで人間に比べると非常に幅広い可聴域を持っています。
そのため、様々な音を細かく聞き分けることができるとされており、あらゆる足音の中から飼い主のものを聞き分けることができるのだと考えられているのです。
まとめ
犬が飼い主の足音を聞き分けて帰宅を知ることができるという通説は、京都大学の実験などで明らかにされています。また、犬の優れた聴力を考えれば飼い主の足音の些細なくせなどを聞き取って記憶することができるというのも納得です。
聴力や嗅覚など、犬は人間よりもずっと優れた能力をたくさん持っています。そうした能力を知って犬に対する理解を深めると、犬を飼う楽しみがより増えるのではないかと思います。