1.誤飲
鶏肉
日本ではクリスマスの日のごちそうと言えば、ローストチキンを思い浮かべる人が多いと思います。鶏肉自体は、犬にとって害のある食べ物ではありません。ですから、ローストチキンなら塩味やソースがついていない部分を愛犬に与えるのは問題はありません。
けれども、鶏肉をまるごと一羽焼き上げたローストチキンや、鶏のもも肉を一本分焼いたローストチキンは、犬にとってとても危険な食べ物です。
なぜなら、鶏の骨は食べた部位や食べ方によっては裂けた部分が鋭く尖って、食道や胃を傷つける可能性があるためです。「犬は歯が強く、あごの力も強いから大丈夫」という意見も見かけますが、人が与えて人がしっかり見ている間にゆっくりと噛み砕くならともかく、犬が人の目を盗んで食べているときは、慌てて丸呑みすることが多いので、誤飲によって内臓を傷つける危険性が高くなります。
チョコレート
クリスマスケーキとして、チョコレートケーキを準備したり、お酒のおつまみや子供さんのオヤツなどにチョコレート菓子を用意したりするご家庭もあると思います。
けれども、犬にとってチョコレートは、ネギ類に匹敵するほど危険な食べ物です。というのは、チョコレートには、「テオブロミン」という成分が含まれているからです。この「テオブロミン」と言う成分は、人間にとってはあまり害にはなりません。
ところが、犬にとっては非常に毒性の強い成分になります。チョコレートを少し摂取しただけなら、下痢、嘔吐で済みますが、大量に摂取した場合、死に至る危険もあります。ですから、クリスマスの食卓にチョコレートケーキを準備するご予定なら、決して愛犬が誤飲することがないよう、十分に注意を払う必要があります。
ブドウ
時期外れとはいえ、食後のデザートのフルーツとしてマスカットなどの高級フルーツを用意したり、オードブルにレーズンバターを用意したりすることもあるかも知れません。最近、犬を飼い始めた飼い主さんは、ブドウもネギ類同様に、犬にとっては危険な食べ物とご存じだと思います。
ブドウには、ブドウに含まれている成分なのか、ブドウに付着している成分によるものなのか現在でもはっきりと確定されていませんが、犬が腎不全を起こす、何らかの原因となる成分が含まれています。誤飲したと分かったら、すぐに胃洗浄をし、経過観察が必要になります。また、摂取した量によっては短期間に命を落としてしまうケースも十分にあり得ます。
アルコール類
犬は、人間のようにアルコールを体内で分解することが出来ません。ですから、少量でも体内に蓄積され、脳に悪影響を及ぼします。アルコール度数の高いものなら、ほんの少量舐めただけでも、人間でいうところの急性アルコール中毒のような症状が出ることがあります。
こぼれた分をこっそり犬が舐めるのを注意するだけでなく、酔っぱらった人間がふざけて犬にアルコールの入った飲物を飲ませることがないように、飼い主さんはしっかりと気を配らなければいけません。
2.火傷
卓上コンロ
卓上コンロを出し、オイルフォンデュやチーズフォンデュ、チョコレートフォンデュなどをすると、食卓が華やぎます。けれども、テーブルではなく、こたつなどの座卓で卓上コンロを使ったり、ふだんから椅子に上ることを厳しく禁止していなかったりするご家庭では、犬にとって火傷を負うリスクが高く、非常に危険です。
オーブンの天板
ご家庭でローストチキンやローストビーフ、あるいはクリスマスケーキを焼くと、オーブンから出してすぐの鉄板はとても熱く、素手では火傷をしてしまうので素手では扱えません。
もし、そんな状態の天板が、何かの不注意や不手際で、熱々の料理ごと愛犬の上に落ちてきたら、大やけどを負います。キッチンで作業しているときは、台所に決して愛犬が入ってこないように、しっかりとルールを覚えさせておきましょう。
電源コード
使い傷みなどで針金がむき出しになっている電源コードは、熱を帯び、それと知らずに触ると火傷をしてしまうことがあります。特にクリスマスツリーの電飾などに使うコードが傷んでいないか、使う前に必ずチェックしましょう。
3.愛犬の体調管理
シニア期の犬への注意
クリスマスの時期は、忘年会、大掃除、年賀状の準備、お正月を迎える準備などに忙殺され、家事やお仕事もしっかりと優先順位をつけて取り組まないと、はかどりません。そんな中、どうしても愛犬の健康状態に注意を払うのが疎かになり、愛犬の異常に気付くのが遅れがちです。
特に注意が必要なのは、シニア期を迎えている愛犬の日ごろの体調管理です。ふだん、通院していたり、定期的に投薬の必要があったりすれば、どんな家事や雑事よりも最優先にして、決して愛犬のケアが疎かにならないように心がけましょう。
運動不足
毎日、忙しくしていたら、どうしても愛犬の散歩の時間を取ることができなくなってしまうこともあるでしょう。けれども、愛犬にとって飼い主さんとの散歩の時間は、食事の時間と同じくらいに大切な時間です。ほんの一日、二日散歩に行かなくても…と思っても、それが三日、四日となれば運動不足に拍車がかかります。愛犬とだけ向き合って過ごす時間は、飼い主さんにとってもホっと一息つける時間になるはずです。
旅行先でクリスマスを迎えるときの注意点
愛犬とのクリスマスをより楽しむために、雪の降る地方に出かける場合、ふだん住んでいる地域との気温差などに注意が必要です。特に体脂肪が少なく、体毛が短い犬種には防寒具が必須ですし、雪の上を歩いたり、雪遊びの予定があったりすれば、凍傷やしもやけへの対策も準備しておきます。
雪の上で足を傷つけないように、あらかじめ靴に慣れさせる、顔回りの凍傷を予防するためにスヌードをつける習慣をつけるなどの準備が役に立ちます。
4.調度品の落下、転倒事故
大きなクリスマスツリーの転倒
大きなクリスマスツリーは、家の中をとても華やいだ雰囲気に演出してくれます。
けれども、家の中の雰囲気が変わったことや、楽しげな飼い主さん家族の様子を察してハイテンションになってしまった犬が、クリスマスツリーにじゃれかかり、ツリーが倒れてしまうと、犬の体格によっては怪我をする危険性があります。
オーナメントの落下による事故
クリスマスツリーを飾るだけでなく、家の中にクリスマス用のリースや様々なオーナメントを飾ることもあると思います。
例えば、天井に飾っていた電飾が落下したり、壁に飾っていたオーナメントが落下したりして愛犬の上に落ちてしまい、怪我をすることも考えられます。
5.咬傷事故と誤飲誤食の予防
犬と来客について
初めて、家に招くお客様がいる場合、その人が犬の扱いについて慣れているか、逆に愛犬が知らない人に対してどんな態度を取るのかをしっかり把握しておきましょう。特に小型犬よりも大型犬は注意が必要です。
人慣れしていない犬の場合と対処法
もし、愛犬があまり人慣れしておらず、知らない人に対して強い警戒心を持つようなら、クリスマスまでに人慣れするように、招待する予定の人を前もって家に招いて、犬にも人にも慣れてもらいます。それが無理なら、パーティ会場となる場所に犬が入れないようにする配慮も必要です。
咬傷事故の予防
人に慣れているはずの飼い犬が人を咬む場合、それは犬を興奮させた人間に問題があります。クリスマスパーティで、犬に慣れていない人を招待する場合、犬に対するタブーについてもあらかじめしっかりと伝えておくことが、咬傷事故(こうしょうじこ)を予防するためにはとても重要なことです。
例えば、犬が何かを食べているときには絶対に体に触れない、必要以上に犬を興奮させない、一人遊びしているときには放っておく、寝ているときに無理に起こさないなど、犬の扱いに慣れていない人に対して、できるだけ細かく愛犬の性格やご家庭のルールについてしっかりと伝えておきましょう。
まとめ
犬にとっては、クリスマスやお正月など全く関心のないことでしょう。けれども、飼い主さんと一緒に楽しめる、飼い主さんが楽しそうにしている…と言う雰囲気は、必ず愛犬に伝わります。せっかく楽しいクリスマスを楽しむつもりだったのに、飼い主さんの気の緩みや不注意で愛犬がケガをしたり、持病が悪化したりして、苦い思い出しか残らなかった…ということがないように、愛犬のことも気遣いながら、クリスマスを過ごしましょう。