人間が犬の表情を読み取る能力は文化的背景に影響される!【研究結果】

人間が犬の表情を読み取る能力は文化的背景に影響される!【研究結果】

犬の表情を読み取ることの重要性は広く呼びかけられています。このたび、人間が犬の表情を読み取る能力について何が影響するのかという興味深いリサーチが発表されました。

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人間が犬の感情的な表現を読み取る能力についての研究

2つの表情のジャックラッセル

ご存知のとおり犬は人間に飼いならされた動物で、犬と人間の共同生活の歴史は1万5千年ともそれ以上とも言われています。この長い歴史の中で、犬は人間の言葉やジェスチャーを理解する能力を身につけて来ました。また最近の研究では、犬は人間の声のトーンや表情からその感情を読み取ることさえできることも分かっています。

しかし反対に人間が犬の表情からその感情を読み取る能力についての研究はとても少ないのだそうです。このたび、ドイツの人類学および人類史科学研究所の研究者チームによって、犬の表情を認識する人間の能力についてのリサーチが行われ、その結果が発表されました。

犬の感情表現をどのくらい理解している?その理解はどこから来ている?

怒っているポメラニアン

研究者チームは、人間が犬の表情に表れている感情をどのくらい理解できるのかを、包括的にリサーチしました。

リサーチには89人の大人の参加者と77人の子供の参加者が協力しました。参加者は、年齢、それぞれの参加者の文化的背景が犬に対して肯定的であるかどうか、犬を飼ったことがあるかどうかに従って分類されました。

犬に対して肯定的な文化かどうかというのは、宗教上の理由などで犬は不浄な生き物とされる文化、犬は単に動物であると受け止められる文化、犬を職業上の相棒や家族のように扱う文化というような背景の違いのことです。

各参加者は、犬、チンパンジー、人間の写真を見せられます。写真はそれぞれの動物で、喜び、悲しみ、怒り、中立、恐怖を示すものが用意されており、参加者は写真の動物の表情からどの感情が表れているのかを評価します。

こうして集めたデータから、人間が犬の感情を認識する能力がどのようにして身につけるのか、興味深い傾向が示されました。

人間が犬の感情を認識する能力は後天的に身に付けるもの

抱いたラブラドールを顔を見つめる男性

犬の感情を認識する、より高い能力は経験を通じて獲得される

参加者の年齢や犬を飼ったことがある経験に関係なく、全ての参加者が犬の喜びと怒りの表情は確実に特定することができました。しかし子供の参加者は、この2つの感情以外についてはうまく認識することができませんでした。

大人の参加者では、この喜びと怒り以外の感情についても認識できる割合が子供よりも高かったため、犬がどのように感じているかを表情から認識する能力は人間が生まれつき持っているものではなく、年月や経験を通じて得るものである可能性が示されました。

犬を飼うという直接的な経験よりも、感情の認識に影響を与えるのは文化

大人の参加者が犬の感情を認識する能力については、興味深い分類上の違いが発見されました。犬が人間の生活に密接に関連し犬の存在が重要であると考えられている、犬に対して肯定的な文化的背景で育った人は、犬に対して否定的な文化の中で育った人よりも犬の感情を認識する能力が高いことがわかりました。

これは直接的に犬を飼った経験の有無よりも、感情の認識能力に与える影響が大きいものでした。

人間が犬の感情を認識する能力に影響を与えるのは、必ずしも犬を飼ったことがあるという直接的な経験ではなく、人間が作り出した文化的な環境であるということが示された結果です。

研究は今後どのような文化的側面が犬の感情を認識する能力に影響するのかをさらに細かく正確に判断し、異文化間の理解を深めることを目指しています。

犬に対して肯定的か否定的かは文化の優劣をつけるものではありません。文化的背景の違いを理解することは、犬へのアプローチの仕方をそれぞれの文化に合わせて考え、人間が犬の感情やサインを読み取れないために起きてしまう事故などを減らすために重要なことです。

まとめ

マルチーズを抱く女性

人間が犬の表情から感情を読み取る能力は、経験によって獲得されるもので、犬に対して肯定的な文化的背景を持つ人の方が感情認識の能力が高いことが分かったというリサーチの結果をご紹介しました。

ヨーロッパの研究なので、犬に対する文化的背景というのも宗教や国家など幅の広いものになっていると思われますが、これは日本の中の身近な例にも当てはめて考えられる興味深いものです。

犬を飼ったことがあると言っても、外飼いで運動や訓練など人間との触れ合いも少ない状態での飼育しかしたことがない人が多い背景。また犬を飼っていない人がそのようなネグレクト的外飼いの状態を日常的に目にするような状態。これらは文化的背景の1つとして考えることができます。

確かにこのような中で犬の表情からその感情を読み取る能力を身につけることは難しいでしょう。日本では、犬を飼っている人は「犬は家族の一員」と考える人が増えていますが、社会全体の文化的背景としては、飼っていない人にまで犬の感情を読み取る能力が身につくというのは難しい状態かもしれません。

このようなリサーチの結果を知ることは、社会全体が犬に対する理解を深める助けとなり、咬傷事故などを防ぐために重要なものになるかと思います。

【参考資料URL】
https://www.shh.mpg.de/1555195/humans-ability-to-read-dogs-facial-expressions-is-learned-not-innate

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